迫真 狙われる金塊(4)摘発されても没収されない 2017/9/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 狙われる金塊(4)摘発されても没収されない」です。





 12日早朝、財務省の関税局長、飯塚厚(58)は博多港で大型の外航クルーズ船を待ち構えていた。アジアからの数千人規模の訪日客に対する税関手続きを観察するためだ。

財務省は金塊密輸に対する罰則を厳しくする検討を進める

 アジアのゲートウエー、福岡では今、金取引を巡る犯罪が相次いでいる。国内の金密輸の摘発件数は2016年6月までの1年間に過去最高の294件に上った。そのほとんどがアジアからの密輸だ。

 「日本の税金が狙われ、犯罪の舞台になるのは腹立たしい」。財務省が危機感を強めたのは4月。福岡空港で、韓国籍の男4人が金塊取引に絡む現金7億3千万円を無許可で国外に持ち出そうとしたとして罪に問われた。金取引を巡る億円単位の事件は人々の耳目をさらった。だがこれは氷山の一角にすぎない。犯罪者にとって、日本は密輸天国だからだ。

 7月上旬、東京・御徒町の貴金属店に2人の税関職員に伴われた男が入ってきた。「買い取ってほしい」と出したのはおよそ10キロ分の金塊だった。男が空港に持ち込み、税関の検査員に見つかった密輸品だった。

 犯行の悪質性が立証できなかったり、密輸量が少なかったりした場合、税関は刑事事件として告発せずに密輸者を通告処分で済ませるケースが多い。処分を受けても罰金相当額と支払うはずだった消費税分を納めれば済む。男は持ち込んだ金塊を約5000万円で売却。消費税などで数百万円を支払うと残額を手に帰国した。もしこれが韓国なら金塊は即座に没収される。日本は犯罪者にとって低リスク高リターンの国というわけだ。

 「金密輸の取り締まり、処罰の強化に全力を挙げる」。7月末、飯塚は財務省の会議室に全国の税関長を集め、檄(げき)を飛ばした。罰則を厳しくする検討が急ピッチで進む。財務省は18年度にも消費税法の罰則を厳しくする方針だ。

 現在の消費税法の罰則規定は「1千万円以下の罰金」。これを1千万円超の罰金を科せるように改める。幅は今後詰めるが「数百万円上げただけでは意味がない」(関係者)。年末にまとめる税制改正が焦点となる。

 摘発と同時に没収できるようにするには、金管理法や関税法など、関連する法律を見直さなくてはならない。経済産業省など、関係省庁の間での調整が必要だ。法の抜け穴が大きい限り、日本を舞台とする錬金術は繰り返される。

(敬称略)

 高岡憲人、筒井恒、石橋茉莉、柏木凌真、今橋瑠璃華、川井洋平が担当しました。



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