迫真 砂上の安心網〜声を聞く(5) まるで野戦病院 2016 /12/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 砂上の安心網~声を聞く(5) まるで野戦病院」です。





 「今までありがとうございました」。埼玉県の男性ケースワーカー(34)が担当する男性の生活保護受給者から電話を受けたのは就職から2年目のことだった。驚いて男性の親族に相談したが、ひとまず様子を見ることになった。この判断が取り返しのつかない事態を招く。

生活保護の受給者を支援するケースワーカー(都内)

 翌朝、男性が電車に飛び込んで自殺したと聞かされた。帰りの電車が人身事故で止まっていた時、嫌な予感がしていた。

 生活保護で支えられる人々と向き合うケースワーカー。記者(34)は何人もの福祉の担い手と会った。困窮者にとって最後のとりでの実態を今まで知らずにいた。アベノミクスが始まって4年。景気は緩やかに回復しているはずなのに、どのケースワーカーも多忙を極めていた。

 担当していた人の突然の死。埼玉県のケースワーカーは毎朝7時には着席する。「結局何も分かってあげられなかった」。生活保護の受給者と接する時間を確保しようと、始業前に事務処理を済ませる。午前と午後に2件ずつ自宅を訪問する。

 「まるで野戦病院ですよ」。東京都の男性ケースワーカー(53)からはこんな言葉を聞いた。受給者を社会に送り出しても、「また傷ついて戻ってきてしまう」。困っている人を助けようと懸命に働いているのに、思うに任せない現実がある。

 生活保護費は4兆円に迫り、納税者からは「税金を使って生活しているんだから、仕事を選ばずに働けばいい」という声も根強い。不正受給が疑われる事例が報道されるたび、生活保護への風当たりも強まる。

 どこか遠い世界の話だと多くの人が思っていないだろうか。正直に白状すると、自分もその一人だった。だけど関西の40代のケースワーカーはこんな話をしてくれた。「受給者には東大や京大など一流大学の卒業者も少なくないんですよ」。急な病気などで仕事を失えば、生活保護が最後のよりどころだ。このケースワーカーは「誰でも転落する可能性はある」と続けた。

 何らかの理由で自力で生活ができなくなったら、自分はどう生きていくのだろうか。努力だけではい上がれるのだろうか。

 最近あまり聞かなくなったが、安倍晋三首相は自身の経験から「再チャレンジ」を重視しているはず。皆が自分の問題としてもっと生活保護のことを考えてもいいのではないだろうか。(岸田幸子)

=この項おわり



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