迫真 英国漂流(2) ソフト離脱は「幻想」 2017/7/5 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 英国漂流(2) ソフト離脱は「幻想」」です。





メルケルは英国に「幻想」を捨てるよう求めてきた(6月22日、ブリュッセル)=ロイター

 欧州連合(EU)首脳らが英国首相のテリーザ・メイ(60)に与えた“出番”はわずか10分だった。6月22日夜、EU本部が入るブリュッセルの「ヨーロッパ・ビル」で開かれた加盟28カ国の首脳会議の夕食会。デザートのアイスクリームを堪能した首脳らが食後のコーヒーに手を伸ばすと、ようやくメイはEU離脱を巡る発言を許された。

 「公平で真摯な提案だ」。約320万人いる在英EU市民の権利をEU離脱後もいかに保護するか。メイは胸を張って英政府の基本方針を表明したが、説明が終わるとすぐ、EU大統領のドナルド・トゥスク(60)は粛々とメイに退席を促した。「気前の良い」提案を示すと英側から事前に聞かされていた首脳らの間にしらけたムードが広がり、舞台は英を除く27カ国の首脳会議に早々に切り替わった。

 EU首脳らはメイが総選挙で勝ち、短期間での離脱交渉とりまとめに耐えられる強い政治基盤を手にして首脳会議に戻ってくるのを期待していた。だが現れたのは議会から政権への信任とりつけに手間取り、曖昧な説明に終始するメイの姿だ。

 メイが目指す離脱の姿はどこまで見えたのか。首脳会議後、記者団からそう尋ねられた欧州委員会委員長のジャンクロード・ユンケル(62)が答えたのは「ノー」のひと言だけ。ぶぜんとした表情に、迷走を続ける英国への失望がにじむ。

 総選挙で「強硬(ハード)離脱」を掲げていたメイが敗れた英側では経済に配慮した交渉姿勢への路線修正の思惑も広がる。「穏健(ソフト)離脱」派からは、離脱後も英国がEU単一市場や関税同盟に残留するよう求める声さえも上がる。

 移民は制限しつつ、単一市場の恩恵は加盟国並みに受ける――。英国でくすぶる「ソフト離脱」の議論を、独首相のアンゲラ・メルケル(62)は繰り返し「幻想だ」と批判する。EUにとって域内のヒトの移動の自由は単一市場の恩恵と不可分。「ハードな離脱やソフトな離脱が何を意味するのかわからない」。EU側の離脱交渉の首席交渉官のミシェル・バルニエ(66)は欧州メディアのインタビューで英国を突き放した。

 英国とEUは今後、毎月1週間程度の交渉会合を定期的に開き、離脱協議を加速させる方針だ。しかし求心力が大きく低下したメイ政権が交渉をまとめる力を持ち合わせているのか、EU側には不安が広がる。

(敬称略)



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