迫真 英国漂流(3) ロンドンでは起業しない 2017/7/6 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 英国漂流(3) ロンドンでは起業しない」です。





 5月半ば、アイルランドのダブリン港に面する複合施設「キャピタル・ドック」のオフィスビルに大口の取引が舞い込んだ。契約したのは米金融大手のJPモルガン・チェース。英国の欧州連合(EU)離脱後に一部業務を移すため、開発中の1万2千平方メートルのスペースを買った。今回の取得で同社は今の従業員数の2倍の1000人を収容できるようになる見通しだ。

ダブリンは不動産の開発ラッシュに沸く=ロイター

 近くには米グーグルが欧州本社を構えるなどダブリンには金融以外の大企業も集う。アイルランド政府産業開発庁長官のマーティン・シャナハン(44)は「アイルランドへの強い信任票だ」と、オフィス取得を歓迎した。地理的に米国に近いEUの西端に位置し、12.5%と低い法人税率やユーロ圏で数少ない英語圏との好立地から、ダブリンは開発ラッシュに沸く。優良物件の賃料はユーロ圏ではパリに次ぐ高さで、今年の賃料はさらに8%上がる見通しだ。

 対岸の英国では有力企業の海外流出に警戒感を強める。「きょう起業するならロンドンを選ばなかっただろう」。英大手フィンテック企業、トランスファーワイズの最高経営責任者(CEO)のターベット・ヒンリクス(36)は4月、ロンドンで開いた業界イベントで挨拶し、こう切り出した。列席していた英財務相のフィリップ・ハモンド(61)や英中央銀行イングランド銀行総裁のマーク・カーニー(52)は不意打ちを食らった。

 ヒンリクスはエストニア出身の起業家で、同社を時価総額10億ドル超のスタートアップ企業を指す「ユニコーン」の一社に育て上げた。欧州では英国のEU離脱を好機と捉え、有力企業の争奪合戦が過熱する。「フランスをスタートアップの国家にする」。仏大統領のエマニュエル・マクロン(39)は大統領選選の最中からこう訴え、大統領就任後は高度人材を優遇する「テックビザ」をすぐに導入した。

 金融市場は世論の変化を嗅ぎとる。「英国は転換点に近づいている」。著名投資家のジョージ・ソロス(86)はEU離脱の過程で再び総選挙が実施され、離脱撤回もあり得るとみる。かつて大規模な空売りでポンド危機を起こしたソロスは昨年6月の国民投票前「離脱なら英ポンドの下げは1992年の15%より大きくなる」と予想していた。実際、ポンドは最大2割強下落し予言は的中した。ソロスの今回の予言は再び当たるのか、市場は警戒を強める。

(敬称略)



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