迫真 起業新世代 世界に挑む(5) 「成功率5割」の育成術 2016/06/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「迫真 起業新世代 世界に挑む(5) 「成功率5割」の育成術」です。





 「負け戦の日本を諦めアフリカに集中しましょう」。2015年9月。東京大学エッジキャピタル(東京・文京、UTEC)社長の郷治友孝(43)は電力ベンチャーの経営陣に迫った。

起業家に経営助言するUTECの郷治社長(右)

 相手は投資先のデジタルグリッド(東京・台東)。次世代送電システムを開発するが、電力小売り自由化で競争が激化し、勝負は見えていた。一方、タンザニアで太陽光パネルと蓄電池を貸すサービスは電気の通らない地域で人気となりつあった。

 郷治は自ら日本政策投資銀行やNECなど他の株主を説得。主力事業を入れ替えた。デジタルグリッド代表の秋田智司(35)は「郷治さんの説得があったからこそ今がある」と話す。

 UTECは異色のベンチャーキャピタルだ。大学発の技術系スタートアップ企業への投資に特化。71社への投資実績のうち、株式公開などで5割弱からリターンを得た。「千三つ(成功は千社のうち3社)」とされるこの世界で突出した確率だ。

 秘訣は起業家と二人三脚で事業を育てる姿勢にある。郷治は「研究者は経営経験のない人が多い。早期から経営に参画すれば成功率が高まる」と説く。

 郷治は1996年に通商産業省(現経済産業省)に入省。ファンド法の起草に携わり、米留学時にはシリコンバレー流も学んだ。いつしか「『創業期から投資して起業家を育てる』という自ら書いた法律の理念を実現したい」との思いが募り、04年に仲間と起業する。

 道は険しかった。郷治の考えは社員に伝わらず思うような成果も出ない。社員は去り、設立2年後には郷治だけが残った。

 転機は09年。投資する創薬ベンチャーのテラが上場したのだ。がん患者の細胞を使ってがんを治療する「細胞医療」は新しい分野。金融機関は投資に及び腰だったが、「あらゆるがん治療に使えるはず」と考えた郷治は、医師出身で社長の矢崎雄一郎(44)に懸けた。事業計画策定から営業まで支援。今は約40の医療機関が導入する。

 日本の大学は世界に通じる高い技術を持ちながら、事業化の成功例が少ない。だが最近、UTECの成功をみて大学や民間資本の間で技術系ベンチャーに投資する動きが広がってきた。

 「トヨタのような世界企業を育てたい」。郷治の夢は、日本の起業家支援のあり方を少しずつ変えつつある。

(敬称略)

 編集委員 村山恵一、小川義也、阿曽村雄太が担当しました。



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