迫真 農業を解き放て(2)補助金は要らない 2016/01/13 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「迫真 農業を解き放て(2)補助金は要らない」です。





 昨年11月10日、東京・永田町にある自民党本部の会議室は農林系の議員や記者団で一杯になり汗ばむ熱気に包まれていた。「ふだん考えていることを何でも話してください」。党農林部会長の小泉進次郎(34)が会合に呼ばれた農家たちに促した。

「補助金をもらわないことが自分にはプラス」と話す中居樹里さん(東京都瑞穂町)

 会合は環太平洋経済連携協定(TPP)対策の参考に、若い担い手の声を聞く目的だった。リンゴ農家で長野県から参加した殿倉由起子(31)はマイクが回ると語り始めた。「お金をもらうより、技術や経営ノウハウを学ぶ場が必要です」。地元の農業法人に就職した殿倉の頭には農業を始める人に最大150万円を5年間出す青年就農給付金があった。「受け取っても、農業を続けられなくなる人がいると聞いてます」。生産者から出た政策への率直な疑問に小泉は「今までの会議で最も心を打たれた」と締めくくった。

 青年就農給付金は2012年度に始まった。受給者は3年で1万6千人弱に上る。大半の人が当然のように受け取るのに、東京都西部で就農2年目の中居樹里(37)は背を向ける。

 「補助金の話があるので来てくれませんか」。寸暇を惜しんで農作業に向き合っていた中居に、町役場から電話があったのは昨年春だ。役場を訪ねた中居は予想外の返事をした。「できればもらいたくありません」。「あなたには受け取る資格がありますよ」。善意で勧める職員にはためらいをみせた。「もらってしまうとちょっと……」

 暮らしは楽ではない。研修先でネギ、自分の畑では小松菜やホウレンソウを育てる日々。朝5時すぎに家を出て夜10時に寝床に入れればいいほうだ。

 1年目の冬は作業が遅れ、霜で野菜がほぼ全滅した。今も昼食は10分で済ます忙しさだ。それでも「生産者として伸びようとしている」と手応えを感じ、アルバイトも兼ねつつ研修を続ける。仕事に打ち込む姿にひかれるように畑も集まってきた。だからこそ補助金をもらって覚悟が鈍るのが心配なのだ。中居には就農前に勤めていた会社の上司の言葉も心に引っかかる。「農家は生活できるだけのお金をもらえて楽勝でしょ」

 小泉は昨年12月14日、農業を志す若者が通う日本農業経営大学校(東京・港)を視察後、給付金の見直しに触れた。「ゼロベースで考えた方がいい。国民の税金だから、胸を張れるような制度を模索する」。農家が胸を張れるお金の使い方の答えはまだ出ていない。

(敬称略)



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