迫真 金もうけより充実感 黎明ミレニアル経済 2017/1/6 本 日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 金もうけより充実感 黎明ミレニアル経済」です。





 昨年12月26日夕。東京・渋谷のマンションの一室で男女3人が今月下旬に立ち上げるサイトの準備作業に追われていた。中心はベンチャー企業グラコネ(同)最高経営責任者(CEO)の藤本真衣(31)。仮想通貨で紛争地域の若者らを支援する「KIZUNAプロジェクト」の発起人だ。

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藤本真衣さん(中)はビットコインを使った寄付サイトを今月下旬に立ち上げる

 「善意のお金を1円でも多く届けたい」。様々な寄付サイトはあるが手数料がかさむ。10万円ならざっと4千円。貧困国の子どもの栄養食にして280食分だ。そこで目をつけたのがビットコイン。ほぼ無料で瞬時に相手に送金でき数百円単位の少額寄付もできる。「お金の流れをたどれるから透明性も高い」と藤本は言う。

 投機対象として価格が不安定なビットコインだが、社会貢献の手立てにもなり得る。デジタルの先端技術を応用し「どれだけ社会にインパクトを与えられるか」が藤本らの活動力の源泉という。

 メガバンクなど商業銀行は大規模な決済システムを介してお金をやり取りするためコストも高い。取引費用がほぼゼロに近い仮想通貨などの急速な普及で、旧世代のサービスは色あせる。みずほフィナンシャルグループなどが独自の仮想通貨に動くのは焦りの裏返しだ。送金にとどまらず、事業に必要なマネーや資本の集め方もバラエティーに富んできている。

 6曲入りミニアルバムの製作とワンマンライブ開催。目標は88万円。バンドマンだった社長の井草直人(26)が立ち上げた音楽専門のクラウドファンディング運営、muevo(東京・新宿)のサイトにはアーティストの「やりたいこと」と「集めたい金額」が並ぶ。音楽活動に必要な資金をネット上で募る試みだ。

 「群衆(crowd)からの資金調達」を造語したクラウドファンディングでは、中小企業や個人は新規事業や新製品開発といった計画を披露。支持する投資家が小口の資金を出し合う。サイト運営者は調達資金の中から仲介手数料を得る。貸出利率も5%前後と決して低くないものの、ミレニアル世代の信用力が低い借り手でも厳格な担保主義の銀行に頼らずに済む。「資金調達の民主化」ともいわれる。

 クラウドファンディング運営のmaneo(東京・千代田)の2016年の融資額は216億円で前年比41%増えた。米国では無名の若者らが1億円規模を集めるケースも珍しくない。ネットと共感に支えられたリスクマネーが、商業や文化などミレニアルの社会資本整備の黒子になる時代はすでに到来している。

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 幼い頃からネットに慣れ親しんできたデジタルネーティブ世代の台頭は、投資の観念そのものも変えようとしている。

 都内IT企業の新入社員、沢悠詩(24)はロボットが投資助言する「ロボット・アドバイザー」に魅せられた一人だ。投資デビューは就職して間もない16年5月。初任給から10万円をつぎ込み、世界の株式や債券などに投資する上場投資信託(ETF)を買った。

 投資を始めようにも、未経験者には銘柄選定などは難関だ。「ロボアド」なら5つの簡単な問いに答えるだけ。過去の運用データに基づきポートフォリオを瞬時に提案する。手数料は残高の1%だけだ。「人が介在すればコスト高になる」と考えた沢にロボアドは合理的に映った。

 16年10月。「『今だ』と思うタイミングを逃したくない」。吉沢美弥子(25)は医療ニュースサイト「ヘルステックニュース」を企業に売却した。自らも米医療保険制度改革「オバマケア」などの記事を執筆していた。

 慶大看護医療学部在学中に友人とサイトを開設。理工学部で脳の血流を研究している友人も巻き込んで扱う分野を広げたが、メンバーの米国留学などで運営継続が難しくなった。

 売却先は医師向け転職サイトを運営する企業だ。別の企業からは吉沢が数年間会社に残ることを条件に売却額が数千万円上がる提案も受けた。少し心が揺らいだが、やめた。「やっぱり窮屈だと思った。売却資金を元手にやりたいことをすぐにできる方がいい」

 合理性と身軽さ。若者たちの価値観を凝縮したともいえるこの2つのモノサシを通して、ミレニアル経済の本質も見えてくる。(敬称略)



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