迫真 黎明ミレニアル経済(下) 場所も時間もフリー 20 17/1/7 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 黎明ミレニアル経済(下) 場所も時間もフリー 」です。





 「事業創造を実現できる人材の発掘・育成」「人材の多様性を最大限に尊重します」。ビジネス交流サイト(SNS)「ウォンテッドリー」に登録する企業が出す募集要項には、報酬と福利厚生が載っていない。代わりに社員の顔写真付きのインタビューや仕事内容が詳しくつづられている。

「ウォンテッドリー」の会議室の配置は参加者が向かい合って討論できる(東京都港区)

 2012年のサービス開始以来、サイトの利用者は100万人に。8割を20~30代が占めミレニアルの採用市場で存在感を増す。運営会社のウォンテッドリー(東京・港)も40人超の正社員の平均年齢は28歳。営業の藤本遼平(30)は「なぜ、どう働くのかを明確にすることが共感を呼ぶ」と話す。

 厚生労働省の調査によると15年の転職者298万人のうち、15~34歳の占める割合は45%にのぼる。25~34歳は14年と比べ5万人増えた。終身雇用や年功序列とは異次元の柔らかな労働市場だ。

 豊崎諒(24)は昨年6月、IT(情報技術)大手のヤフーからライドシェア(相乗り)世界最大手の米ウーバーテクノロジーズ日本法人に転職した。9月末に日本で始めた料理宅配「ウーバーイーツ」のマーケティングを担う。本業の乗り合いビジネスが厳しいなか、日本進出の足がかりにしたいと考えている。「優秀な人が集まる中で最前線で変化を起こしたい」

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 インターネットを手に場所や時間にとらわれず仕事をするミレニアル世代の活躍で、働き方はどこまで変わるだろうか。

 一般住宅に旅行客などを泊める「民泊」。スクイーズ(東京・港)は不動産オーナーなどに代わり民泊の運営代行を手がける。クラウドシステムで予約を一元管理。掃除は近隣の主婦、客の問い合わせは在宅のオペレーターといった具合に仕事を割り振る。

 宿泊業の人手不足が指摘されるがそもそも宿が従業員を抱える必要はあるのか。発想の転換で生まれた新サービスだ。「会ったこともない人でも仕事は頼めますよ。どこの誰かはネットですぐ分かる」。最高執行責任者(COO)の中川渉(27)にためらいはない。

 「青山で4人分、イタリアンを手配しました」「貸倉庫の引っ越し手続きの方法を調べておきました」。尾崎静香(27)は“オンライン秘書”だ。弁護士事務所、メーカーと1日に20~30件の手配をこなすが、その拠点はもっぱら大阪府の自宅。尾崎自身は人材サービスのキャスター(東京・渋谷)の契約社員だ。

 社長の中川祥太(30)は「環境にとらわれず、優秀な人が適切な仕事に就ける」と自負する。社名の由来は仕事を振るという意味の“cast”。同社には尾崎のような従業員が全国に80人いるが、求人をかけると800件の応募があるという人気ぶりだ。中川は「若い人が増えている」と驚く。サービスを利用する企業も150社になり、毎月増えている。

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 米カリフォルニア州。ウェブサイトのデザイン改良などを手がけるカイゼンプラットフォームも従業員の半数超は出社しない。須藤憲司最高経営責任者(CEO)は「仕事はどこでもできる」と言う。議事録は全て残し、ホワイトボードに記した文字も画像保存して共有。会社に来ない人が不利にならないよう心がける。エンジニアの菅原京平(27)は「母親が病気の際に付き添うこともできた」と満足げだ。

 大阪大教授の大竹文雄は「ネット技術の革新が、柔軟な働き方を許容する環境を作り出している」と指摘。真っ先に呼応したのがミレニアルだ。

 もっとも「大半の若年層は一生同じ会社で働きたいという安定志向を持っている」(博報堂ブランドデザイン若者研究所の原田曜平)との指摘もある。15~34歳の転職者数を時系列で見ると、リーマン・ショック前だった07年は178万人いたが15年は135万人だ。14年より増えたとはいえ、労働市場の流動性はリーマン危機前の水準にはまだ遠い。

 政府は17年度に配偶者控除を見直し、配偶者(妻)の年収上限を103万円から150万円に事実上引き上げパート主婦らの幅広い労働参加を促す。場所と時間にとらわれないミレニアルの仕事ぶりは、政府が取り組む働き方改革の一翼を担うかもしれない。(敬称略)

 藤川衛、亀井勝司、兼松雄一郎、大島有美子、藤井裕起、生田弦己、光井友理、吉田悟巳が担当しました。

生きがいは理想だけど…▼Web刊→紙面連動



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