迫真 4期目のプーチン 英国よ、ありがとう 2018/4/1 本 日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 4期目のプーチン 英国よ、ありがとう」です。





 「米国が常識的な対応をすると願っていたのだが……」。3月26日、英国で起きたロシア人元スパイ毒殺未遂事件に対して欧米諸国が協調して対ロ制裁を発表すると、ロシア駐米大使アナトリー・アントノフからこんな言葉がもれた。

プーチンの次の一手に欧米は身構える=ロイター

 対外強硬を誇示するロシア大統領ウラジーミル・プーチン(65)が7割を超える得票率で4選を果たした3月18日の大統領選から事態は急展開した。米国は60人ものロシア外交官の追放を発表。毒殺未遂にロシアが関与したと断定した英国に同調する欧州各国もロシア外交官の追放を決めた。特に米国の厳しい対応はロシアの予想を超えていた。

 「選挙で勝ったプーチン大統領に祝意を伝えた」。米大統領ドナルド・トランプ(71)は3月20日、プーチンと電話協議したとホワイトハウスで記者団に発表し「そう遠くない将来に会談するだろう」と述べていた。

 トランプはプーチンへの電話に反対する側近の忠告を無視していた。ホワイトハウス報道官によれば、電話協議では英国で起きた毒殺未遂事件にも2016年の米大統領選へのロシアの介入についても触れなかった。

 トランプとプーチンはロシア大統領選後の会談に向けて準備をしてきたフシがある。1月、旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後身機関である連邦保安庁と対外情報庁、連邦軍参謀本部情報総局の3情報機関トップがそろって訪米し、米中央情報局(CIA)長官マイク・ポンペオ(54)と会談している。

 トランプは3月13日、国務長官レックス・ティラーソン(66)を更迭し、後任にポンペオを充てると発表した。ティラーソンは17年11月、トランプが望んだプーチンとの会談に待ったをかけたとされ、解任されたのは在英元スパイの毒殺未遂事件でロシアを非難した直後のタイミングだった。

 3月1日の年次教書演説で新型戦略兵器の開発を誇示し、米国との対決姿勢を前面に押し出したプーチンも再選後の19日には一転、関係改善を探る発言を繰り返した。「政治、外交手段により紛争を解決したい」「新たな軍拡競争は回避する」。トランプの20日の発言はこれに呼応している。「会談すれば軍拡競争の問題を協議できる」

 60人のロシア外交官の追放はトランプが主導したわけではない。反体制派候補を排除し、不正も指摘される選挙で再選したプーチンに祝意を伝えたことに身内の共和党からも批判が噴出した。

 米大統領選でのロシアとトランプ周辺の共謀疑惑「ロシアゲート」への追及も強まった。「大統領、今はロシアへの圧力を強める時です」。北大西洋条約機構(NATO)の結束を重視する国防長官ジェームズ・マティス(67)が主導してまとめた制裁案にトランプはうなずくしかなかった。

 ロシアに接近する一部の国を抱える欧州もぎりぎりのところで足並みをそろえた。「ロシアは我々の団結を過小評価している」。NATO事務総長のイエンス・ストルテンベルク(59)は3月27日の会見で強調した。ウクライナ侵攻、シリアへの軍事介入、欧米諸国へのサイバー攻撃……。「ロシアに代償を分からせなければならない」

 プーチン政権が欧米の結束を見くびっていることは確かだ。「英国よ、ありがとう」。プーチンの選挙対策本部の広報官は3月19日、英国の「圧力」のおかげで投票率が10%上昇したと言ってのけた。ロシア外務省は21日、各国の駐ロ大使らを集めたブリーフィングで一方的に英国批判を展開、対立をあおった。

 「対話を続け、関係を維持することがこれまで以上に重要だ」。ドイツ首相アンゲラ・メルケル(63)は3月19日、こんな電報をプーチンに送った。対立のエスカレートを避けたい本音がにじむ。

 ロシア外交官追放には欧州連合(EU)とNATOの加盟国すべてが同調したわけではない。北方領土交渉を抱える日本はプーチン再選直後にロシア外相のセルゲイ・ラブロフ(68)を招いて外相会談を開いている。プーチンは日米欧の主要7カ国(G7)の結束にくさびを打つために日本を利用している面もある。

 ロシア政府高官はいう。「遅かれ早かれ、欧米は交渉のテーブルに着くことになる」「ロシアを無視することはできない」。モスクワの欧州外交官は一様に身構える。「プーチンの次の一手は何か」――。緊張をあおって相手から譲歩を引き出すプーチンの瀬戸際戦術に歯止めは掛かりそうにない。(敬称略)



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