防衛費、膨張呼ぶ米の風圧 2018/06/01 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「防衛費、膨張呼ぶ米の風圧」です。





自民党の安全保障調査会が防衛費の大幅拡充を提言した。これまで政府が目安としてきた「国内総生産(GDP)比1%」の水準を見直し、北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に求める「GDP比2%」を参考とするよう求めた。背景を探ると同盟国に負担を求める米国の存在が透ける。

今年は年末に防衛大綱と中期防衛力整備計画(中期防)を見直す年だ。8月には2019年度予算の概算要求がある。自民党がこの時期に提言を示したのは、一連の計画に反映させるためだ。

長らく1%目安

提言では周辺環境を「戦後最大の危機的情勢」と強調した。中国の国防費の急増や、宇宙・サイバーでの脅威などを列挙。18年度当初予算の防衛費は5兆1911億円と6年連続増だが、さらに拡大を求めた。

象徴的な数字として取り上げたのがGDP比だ。「あまりにも各国に比べて防衛費の割合が少ない」。元防衛相の中谷元・調査会長は提言を発表した際に訴えた。16年度時点で各国の防衛費のGDP比を見ると、米国は3%、ロシアは4.8%、英仏は2%前後。中国の公表値は1.3%だが、実際はもっと多いとされる。提言でわざわざNATOの目標を紹介したのは「米国の同盟国ならこの程度は負担するものだ」との相場観を広める狙いがありそうだ。

日米安全保障条約で日本は米国と同盟関係にある。米軍が「矛」(=敵地攻撃)、自衛隊が「盾」(=専守防衛)の分担だ。日本は国内に米軍基地を置いて駐留を認め、経費を「思いやり予算」として拠出する負担をしている。それでも、この20年近く陰に陽に同盟国・米国から防衛費の拡大を求められてきた。

大きな転機は01年の米同時テロ。9.11以降、ブッシュ(子)政権は中東への関与を強め、軍事費の膨張が米国財政を圧迫した。米軍のトランスフォーメーション(変革・再編)を進め、同盟国への要求も増えた。

「軍事費は米国がGDPの3%以上、日本は1%にすぎない」。00年代前半、ブッシュ政権で国防長官を務めたラムズフェルド氏は、日本の閣僚や議員に会うたびに繰り返したという。オバマ前大統領も財政健全化に向けて国防費を削減し「米国は世界の警察官ではない」と宣言した。

それでも長く1%を守ってきた日本で、いまなぜ2%なのか。トランプ大統領の誕生が大きい。

トランプ氏は大統領就任前から対日貿易赤字解消を訴えていた。就任後は日本との自由貿易協定(FTA)交渉を求め、自動車や農産物などの輸出拡大に期待を寄せた。だが、日本としてはこうした分野での輸入枠設定などは避けたい。

自動車などに比べると、防衛装備品は日本の国内産業が強いわけではない。中国の海洋進出や北朝鮮問題などが続き、安全保障に予算を投入することも昔よりはしやすい。トランプ氏は日本に戦闘機などの購入を迫り、経済と安全保障を関係づける姿勢を示す。

自民党の防衛関係議員にとって、こうした状況は防衛費拡大の好機だ。ある議員は「1%にとらわれ思考停止だった。装備品を含めあらゆる予算を増やす」と話す。ただ、提言では増加分の使い道として訓練・教育費、維持・整備費などを挙げただけで、5兆円超の増加を何に充てるか、具体性は乏しい。

「実現性乏しく」

政府内では「GDP比2%は実現性が低い」との声が多い。2%は現在の2倍でいまのGDPなら約11兆円だ。NATO加盟29カ国でも、2%超は米国、英国、ポーランドなど一部だ。

いまの防衛費も効率化の余地があるといわれている。たとえば米国から輸入する高額の装備品。米政府から直接契約して調達する有償軍事援助(FMS)での取得が増えているが、調達価格は米政府主導だ。政府・自民党内には「米国の言い値だ」との不満が根強い。

調査会も「2%は高めのボール」というのが本音だ。提言の原案では2%を「目標」と書いていたが「非現実的だ」との意見があがり「参考」と後退させた。

三木武夫内閣が防衛費について「当面、国民総生産(GNP)の100分の1に相当する額を超えない」と閣議決定したのは76年。その後、撤回されたが、一定年齢以上の有権者は「1%枠」の記憶がある。高めの要求は、改めて1%枠の撤廃を確認する意味もある。

首相は防衛大綱に関し「従来の延長線上ではなく、真に必要な防衛力の姿を見定める」と話す。厳しい財政も横目に判断する。

(加藤晶也)



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です