限界都市 コンパクト化の虚実(下)和歌山市、規制強化の衝撃中 心部高騰開発難しく 2018/4/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の風見鶏面にある「限界都市 コンパクト化の虚実(下)和歌山市、規制強化の衝撃中心部高騰開発難しく」です。





 和歌山市郊外の岡崎地区。昨年11月に訪ねると、田畑が広がる中で新しい一戸建てが連なる風景に出くわした。「のどかな環境がいいなと思い、1年前に和歌山駅近くから引っ越してきた」。約10棟が立つ区画で子ども連れの主婦に聞くと「周りはみんな若い世代」という。すぐ隣でも分譲用宅地が造成中だった。

和歌山市の岡崎地区では農地転用が進んだ

 同地区の大半は本来、住宅建設が厳しく制限される市街化調整区域だが、農地から宅地への転換が急速に進んだ。決め手は2005年に市条例で導入した「50戸連たん制度」。隣接市への住民流出を食い止めるため、50戸以上が連なる地区に隣接すれば分譲住宅を建設できるようにした。

坪単価1割上昇

 だが、裏目にでて「数珠つなぎのように住宅が際限なく広がってしまった」(都市計画課)。郊外に集落が散らばるとゴミ収集や道路・水道整備、福祉サービスの効率が悪化し、財政負担が増す。副作用に気付いた市は17年4月に50戸連たんの原則廃止を柱とする規制再強化に踏みきった。

 これに慌てたのが地元業者だ。規制強化前の17年1~3月は調整区域の開発申請が27件と前年同期より約4割も増加。その後は開発できる土地は大幅に減った。くだんの岡崎地区で造成が続いていたのは、駆け込み申請案件の消化だ。

 「種地が取り合いになり、仕入れにくくなった」。不動産取引を営む際(和歌山市)の中林英樹専務はこう嘆き「この1年間で坪単価が1割も上がった地区もある」と明かす。

 中心市街地では値上がりを狙う地主が土地を手放さなくなる一方、所有者不明の空き地や空き家が増えている。都市の活性化にはほど遠く、別の不動産会社の会長は「これからどうやって食っていけばいいのか」と頭を抱える。

農地の荒廃懸念

 農家も複雑だ。和歌山市農業委員会の谷河績会長は「いい農地がある調整区域は開発を規制したらいい。だが後継者がいない農家が土地を売るのもやむを得ない。そこが難しい」と語る。売り先がない農地が荒れれば、環境は悪化する。

 和歌山市はコンパクトシティー形成に向けた立地適正化計画を作り、都市機能を誘導する区域を設定済み。今年10月から居住誘導区域も運用する。この実効性を高めるために、郊外開発の規制を強める決断は理にかなったものといえる。

 だが単純に規制を強化するのではなく、その副作用を緩和する手立てが必要だ。地元の不動産業者からは「中心部の空き家を更地にすれば我々が干上がることもなく、中心市街地にもっと住民や店舗を呼び込める」との声があがる。

 多くの自治体は和歌山市のような規制強化に及び腰だ。郊外の集落から反発が起きるのを恐れている側面が強いが、意欲だけでは乗り越えられない。空き家対策や就農支援などを含めて横断的に課題を解決する必要がある。「和歌山市の衝撃」を後ろ向きに捉えるのではなく、コンパクトシティー実現に向けた糧とすべきだ。

(鷺森弘)



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