限界都市 再開発が招く住宅供給過剰 タワマン併設5割に 上昇人口減、ゆがむ街の姿 2018/3/21 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「限界都市 再開発が招く住宅供給過剰 タワマン併設5割に上昇人口減、ゆがむ街の姿」です。





 日本の都市整備で大きな役割を担ってきた官民の市街地再開発のバランスが崩れてきた。日本経済新聞が全国の事業を調べたところ、超高層住宅(タワーマンション=総合2面きょうのことば)を備える割合が1990年代前半の15%から2016~20年は5割近くに増えることが分かった。古い建物の密集地をオフィスや店舗、広場も備える複合施設に刷新する本来の目的は薄れ、住宅の大量供給源になりつつある。住宅過剰懸念も出ており、人口減時代にあった都市整備の手法を探る時期にきている。(関連記事総合1面に)

 市街地再開発の根拠法制定は69年。主要な駅前でも古い木造住宅や商店の密集地が多く、都市機能の向上を急いだ。行政だけでは時間がかかる事業を民間に委ねる手法で、自治体は公共貢献を求める一方、その要件を満たす整備費の3分の2を国と折半で補助する。

 人口や経済規模が伸びる時期は効果的で、集客力の高い商業施設や先進的なオフィス、公共施設をバランスよく取り込んだ。東京都港区の六本木ヒルズは成功例だ。

補助金が後押し

 日経新聞は自治体への取材や全国市街地再開発協会の資料を基に、91~2020年(予定含む完工ベース)の約700件の事業を分析した。浮かんできたのは経済環境や人口動態の変化に伴い、再開発が大規模マンションに偏ってきた実態だ。

 5年ごとの件数で見ると、タワーマンションを伴う事業は90年代前半に15%だったが16~20年は49%に上昇。こうした再開発地区の延べ床面積に占める住宅比率も64%と過去最高になる見込み。再開発によるタワーマンション供給は計9万2千戸と、現存する超高層物件の4分の1に達する。

 住宅偏重が進む要因は再開発制度そのものにある。地権者に渡す部分とは別に、新たにつくる「保留床」を売って事業費に充てる。今は商業の出店意欲が落ち、オフィスも飽和に近づいているが都心居住の需要は旺盛。住宅規模を拡大すれば開発利益を増やせるのだ。

 東京都国分寺市の国分寺駅北口で3月内に完成する再開発は象徴的だ。09年の計画決定後、リーマン危機の影響が拡大。想定価格で売れなくなった商業ビルをタワーマンションに衣替えした。

 補助金も住宅の大量供給を後押しする。16~20年のタワーマンション併設事業への補助金は11~15年比1割増の3200億円の見込みであることも分かった。初めて3千億円を超え、90年代前半の4倍に達する。30年間の累計は1兆3千億円と、総事業費の2割弱を占めるようになる。

 補助金はマンションの区分所有部分に出ない。既存建物の取り壊し費用や公園など共用部工事費が対象だ。ただ、補助金で分譲価格を下げやすくなり、供給戸数を増やして開発費用を回収しやすくなる。住宅部分が膨らむ要因がここにもある。

 東京23区は際立つ。30年間の補助金は計6000億円。16~20年はタワーマンション付き再開発1件あたりの住宅が600戸強と90年代の3倍以上で、住宅比率も7割を超す。中央区の勝どきには1棟で1420戸の53階建てマンションが16年末に竣工。この地区は8割超が住宅で、81億円の補助金がついた。

通勤の混雑悪化

 大規模マンション偏重の再開発は局所的な人口増による副作用も生む。

 中央区は人口が97年の約7万人から15万7千人まで回復したが、小学校の児童数がこの10年で約4割増えて教室が不足。14~16年度は校舎の増改築に年50億円以上を費やした。区は人口集中の是正が必要と判断、一部で住宅の容積率緩和をやめる方針に転じる。

 この10年間に10棟以上のタワーマンションが建った川崎市中原区は人口が15%増え、中心の武蔵小杉駅では朝の通勤混雑時に改札手前で長蛇の列ができている。

 人口減時代に入り、住宅の大量供給はいずれ行き詰まる。13年時点で総住宅数は世帯数を大きく上回る。老朽マンション問題も深刻になる。一戸建てと違い、多くの住民が合意して建て替えるのは困難。タワーマンション建設が加速するそばで空き家だらけの老朽マンションが増え続ける。

 東京も急速に高齢化が進み、25年に人口のピークがくる見通しだ。都市開発に詳しい東洋大学の野澤千絵教授は「住宅と居住地の総量を増やし続ける時代は終わった。広域的に人口や住宅の配置を制御する仕組みが要る」と主張する。

 増える空き家、朽ちるマンションや施設、無秩序な郊外開発……。全国で実態や解決策が見えにくい都市問題が山積している。従来の常識を捨て、古びた制度を改めなければ、持続可能で魅力的な都市は実現できない。

(調査報道班=鷺森弘、藤原隆人、斉藤雄太、学頭貴子)

 日本経済新聞は政府や自治体、企業が明らかにしない重要事実を、独自取材で掘り起こす調査報道を強化します。様々な公開情報や統計を新たな切り口で分析し、知られざる実態を浮かび上がらせるデータジャーナリズムの手法も駆使します。その一環として、人口減少でゆがみが生じてきた都市問題を追います。



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