限界都市 開発ありき、かすむ公共 狭い「庭」・使えない 車道… 住民の獲得を優先 2018/3/21 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「限界都市 開発ありき、かすむ公共 狭い「庭」・使えない車道… 住民の獲得を優先」です。





 古い街を安全・快適で多くの人や店、企業が集まる都市に生まれ変わらせる――。市街地再開発にはこうした公共の視点が欠かせない。だが、タワーマンションがそびえる現場を歩くと、その「公共性」はかすみ、住民獲得を目的とする開発ありきの姿勢が浮かび上がってくる。(1面参照)

 東京・六本木の再開発地区で2012年に完成した27階建てマンション。3200平方メートルとそれほど広くない敷地で目につく公共施設は、人が集うには狭すぎる「庭」と街路くらいだ。

 だが容積率は近隣の540%を上回る700%が認められ、国と港区から計20億円強の補助金も得た。根拠の一つが地下に整備した車道だった。

地方分権が転機

 その車道はマンションと近隣ビルの地下駐車場をつなぐだけ。一般利用はできない。隣のマンション住民は「公共性を欠く」と補助金返還などを求め、最高裁まで争ったが敗訴した。港区の裁量の範囲内という理由だ。

 市街地再開発は古い街を刷新するため、住宅だけでなく、商業施設や広い公園など豊かな公共空間を備えるのが理想とされる。だが、国や自治体は地域経済の押し上げを狙い、公共性が乏しくても予算内であれば補助金を支給する。

 不動産大手は「補助金は開発会社に与えられないので、コメントする立場にない」(三井不動産)、「『公共性』は各自治体が十分検討している」(住友不動産)とする。

 都内自治体の都市計画審議会委員を務めた経験がある建築士は「役所が示す計画について活発に議論したことはあまりない」と明かす。行政と事業者で固めた再開発方針の詳細を、第三者が検討する場はほとんどない。

 「都道府県から市区町村に権限が移り、全体最適の都市づくりが進まなくなった」。首都大学東京の饗庭伸教授は住宅中心の傾向に拍車がかかった背景に地方分権改革があると見る。

 転換点は2000年。都市計画の決定主体は市区町村になった。バブル期に住民が流出した都心部の自治体は再開発をテコに住民回帰を試みた。

 代表例が「タワーマンション先進地域」の東京都中央区だ。20年までにタワーマンション付き再開発に投じる補助金は約1千億円。隣の江東区の約4倍で全国首位だ。その効果は大きく、人口は高度成長期の水準まで戻り、区民税も16年度までの5年で57億円増えた。 都心部のマンションには「職住近接」をかなえる存在意義はある。だが住宅中心の再開発を促す一方、小中学校や交通網の整備が後手に回った。中央区が容積率緩和の廃止を検討し、人口流入抑制にカジを切り始めたのは皮肉な結果だ。

消えた百貨店

 地方の自治体も住民誘致の思惑が強く、再開発の補助金依存度が高い。

 宇都宮市の中心市街地にある宇都宮二荒山神社。すぐ隣に24階建てのビルがそびえる。10年12月に完成した建物の大半は165戸の住宅だ。

 かつてあったのは地場の百貨店。業績不振で経営破綻した。市民が集う施設がマンションに取って代わっただけだが、事業費77億円のうち過半を補助金で賄った。宇都宮市再開発室は「鉄筋コンクリート造りの百貨店だったので、解体費用が膨らんだ」と釈明する。

 近くでは県内最高層の31階建てマンションが建設中。事業費111億円のうち半分弱が補助金で賄われる。

 マンション中心の再開発は住民獲得には最適だが、長期的かつ広域的に都市の魅力を高めているのか。今後は大都市圏でも高齢化が深刻になり、財源も限られてくる。交通ネットワークや公共施設、医療・福祉施設などと調和のとれた都市空間を追求する必要がある。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です