頂は8兆円訪日消費倍増の道(下)「観光公害」乗り越えろ新税、使い道 見えにくく 2017/11/17 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「頂は8兆円訪日消費倍増の道(下)「観光公害」乗り越えろ新税、使い道見えにくく」です。





 秋の行楽シーズンまっただ中の街角にため息が漏れた。訪日客急増を受けて、JR京都駅発の市営バスは、乗るまでに時に50人以上の列ができる。「5本見送ることもありますよ」。京都市内に住む40代の男性会社員は話す。混雑の度合いも、東京の通勤ラッシュ時に引けを取らない。

訪日客増のあおりで市営バスには長蛇の列ができる(JR京都駅前)

 京都府を訪れた外国人観光客は2016年時点で661万人となり、15年比で4割増えた。地元経済にとってうれしい悲鳴のはずなのに、日常生活を送る人からはこんなつぶやきも出始めた。「観光公害」――。

 観光地・祇園を含む東山地区で最近、ホテルや旅館、ゲストハウスなど正規の宿泊施設ではなく、ワンルームマンションに消えていく訪日客の姿が大幅に増えた。認証事業者を通さないヤミ民泊。ある旅館の関係者は「数は分からないが、おかげで稼働率が落ち始めた」と漏らす。

 京都市は来秋から宿泊税を導入する。日本人も対象にし1人1泊200~1000円を宿泊代に上乗せする。新税導入でヤミ民泊のあぶり出しや取り締まり強化の効果も狙うが、客足が伸びる中での負担増が観光需要に響きかねない。とかく「税をとって、使い道をどうする」という要の視点が見えにくい。

出国税で負担増

 日本から出国する人に課す新税「観光促進税」(出国税)の早期導入に傾く国も、スタンスは同じだ。

 19年度にも導入し、訪日客だけでなく日本人も対象とし、1人1000円を求めることで固まってきた。ではその先は。400億円ほど税収が増えた分を「地域の文化をいかした観光政策」や「出入国管理の強化」などに振り向けるというが、今のところ、これまでの関係省庁の予算の拡充にしか映らない。

 観光庁の17年度予算は200億円ほど。国全体の観光関連予算は15年度時点で3千億円を超えており、法務省、文化庁、農林水産省などがそれぞれ観光庁と似通った事業を抱える。

 例えば法務省はすでに出入国審査の充実に向けた予算がある。新税が観光を名目にした負担増やバラマキにつながりかねない。14日の自民党の観光立国調査会でも「野放図な歳出(拡大)につなげてはいけない」とクギを刺す声が出た。

予算配分明確に

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの塚田裕昭氏は「20年の旅客目標は射程圏内でも8兆円目標は厳しい」と話し、少なくとも政府は「いろいろな国の人が長く滞在できるような環境整備に予算を回すべきだ」と続ける。厳しい財政事情に考慮しつつ、いまある3千億円ほどのお金に新税の分を加え、目標達成に向けた「最適な配分」の絵を示す必要がある。

 観光業は人口減に直面する日本にあって、数少ない成長産業といえる。国際観光収入が世界で最も多い米国は年間20兆円を稼ぎ、日本の目標の約3倍を手にした。フランスも体験を楽しむ「コト消費」のメニューを充実させ、年8千万人を超える観光客が訪れる。5合目の今、明快で具体的な戦略をもう一度練り上げる時期が来た。

 馬場燃が担当しました。



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