風見鶏 トランプ氏のカレンダー 2018/3/11 本日の日本経 済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「風見鶏 トランプ氏のカレンダー 」です。





 実現すれば歴史上初めてとなる米朝首脳会談が注目されるなか、トランプ米大統領の最初の審判となる11月の中間選挙の予備選が始まった。就任から1年2カ月弱、閣僚や側近が相次いで辞め、後任の辞任観測も絶えない。2016年大統領選へのロシアの干渉を巡る「ロシアゲート」疑惑は深まるばかりだ。

 ワシントンに駐在して16年大統領選を取材していた立場からすると、今の迷走は当時の暴言や妄言の延長線上だ。トランプ支持者も混乱を嫌うなら、支持者になっていないだろう。トランプ氏の支持率があまり変化しないゆえんだ。

 共和党が多数を占める議会の構成が変わると話は違ってくる。共和党は当選困難を理由に下院の現職候補の出馬辞退が目立つ。訴追手続きの主戦場となる下院の過半数割れは大統領の弾劾裁判に道を開く。

 トランプ氏は当然、そうならないための手を打つ。その手を読むために頭に入れておかなければならないのが政治のカレンダーだ。古今東西、政治指導者は自らのカレンダーをつくり、それに従って戦略を練る。

 昨年10月の衆院選で勝利した安倍晋三首相は今年9月の自民党総裁選で3選すれば、21年秋に総裁と衆院議員の任期満了を迎える。首相が18年中の改憲の国会発議を目指すのはカレンダーを重視すると理にかなう。

 19年は天皇退位と参院選、20年は東京五輪がある。20年は翌年の任期もちらつき、求心力が低下しかねない。18年中の国会発議は政権に最も勢いがあるのが選挙で勝った直後という理論にも合致している。

 トランプ氏にもあてはまる。本来なら就任1年目に記憶に残る仕事をすべきだった。オバマ前大統領が「核なき世界」を掲げ、ノーベル平和賞を受賞したのが就任1年目の09年だったのは、偶然ではあるまい。

 それでもオバマ氏は翌10年の中間選挙に敗北した。中間選挙は大統領選で勝利した与党に逆バネが働きやすい。就任1年目をほとんど空費したトランプ氏はすでにかなりの重圧と焦りを感じているに違いない。

 トランプ氏の政権運営には一つの特徴がある。何か問題が起きると新たな出来事で塗り替える手法だ。在イスラエル米大使館のテルアビブからエルサレムへの移転や鉄鋼・アルミニウムの輸入制限、そして米朝首脳会談の応諾もその塗り替えの文脈でとらえられる。

 反発や衝撃が大きいほど視線を外し、局面を変えられる。トランプ氏のカレンダーは20年大統領選からの逆算だ。多岐にわたる課題での塗り替えは再選戦略にほかならない。衝撃度という点で塗り替えの最大級に位置するのが軍事行使だ。

 湾岸戦争をしたブッシュ(父)、米同時テロ後にアフガニスタンとイラクでの2つの戦争に踏みきったブッシュ(子)両大統領の支持率は一時90%に達した。トランプ氏が中間選挙で惨敗した場合、過去の軍事行使と支持率の相関関係が頭をよぎる瞬間があっても不思議ではない。

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長は4月末に韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領、5月までにトランプ氏と会談する意向だ。この四半世紀は北朝鮮にだまされた歴史と重なる。細部を詰めるうちに再び決裂するとの見方は根強い。

 中間選挙と同時期に北朝鮮は核弾頭が搭載可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を終えるとみられている。対話は時間稼ぎとの不安が的中するとトランプ氏は判断ミスの塗り替えを迫られる。歴史的な直接会談は軍事的な緊張となお隣り合わせである。(政治部次長 吉野直也)



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です