風見鶏 押し寄せる歴史の波 2017/2/19 本日の日本経済新 聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「風見鶏 押し寄せる歴史の波」です。





 2月上旬、日本にやってきたマティス米国防長官。元将軍であり、約7000冊の蔵書をもつ超インテリだ。

 彼のすごみはぼう大な歴史への知識をただの教養にとどめず、実際の戦略づくりに生かしてきたところにある。

 彼を知る関係者によると、現役当時、ペロポネソス戦争などさまざまな戦史をひもとき、軍内で指示を出したという。

 国家は勢力争いや戦争を繰り返してきた。時代が変わっても、人間がやることには共通点がある。そんな発想から、過去を学び、次の戦略に生かそうというわけだ。

 そんな視点がいま、国際政治でも必要になっている。「米国第一主義」のトランプ政権が生まれ、戦後、世界の平和と繁栄を支えてきた米国主導の秩序が危機にひんしているからだ。

 この混乱に対応するには問題の原因がどこにあるのか、まず正確に理解しなければならない。日米の当局者や識者からは、2つの異なる現状分析が聞かれる。

 ひとつは、混乱を生んでいるのはトランプ氏なので、彼が退任すれば、国際政治は多かれ少なかれ、正常に戻るだろうという予想だ。

 もう片方の見立ては、これとは逆だ。15年以上にわたるテロとの戦争で米国は疲れ、もはや世界秩序を支える余力はない。トランプ氏の出現はその「結果」であって、「原因」ではないという分析である。

 後者の説に立てば、彼が去っても、トランプ氏以前の世界には戻らないことになる。

 残念ながら、正解はこちらに近いだろう。トランプ氏を支持した半数近くの米有権者は今後の大統領選でも、「米国第一主義」の指導者を求めるにちがいないからだ。

 米国だけではない。欧州でもこれまでの枠組みが崩れている。英国は欧州連合(EU)にさよならを告げ、年内に選挙を控えるフランス、ドイツでも反EUの右翼政党が台頭する。

 いま、米英独仏で一斉にこうした“反乱”が広がるのは、偶然ではない。著名な戦略家として知られる英国防省のブレーンはこう解説する。

 すべての発端は約25年前のソ連崩壊だ。その影響がいまになってじわりと顕在化してきた。米ソ冷戦中は天敵のソ連がいたから欧州は団結した。だが、ソ連が消えれば、もう無理に肩を寄せ合う必要はない。欧州各国はさらに我が道を行くようになるだろう――。

 だとすれば、戦後、米国主導の秩序に守られ、復興を遂げてきた日本も無傷でいられるはずはない。歴史への洞察で知られる作家、堺屋太一氏に聞いてみよう。

 「日本はほぼ75年周期で、3つの敗戦を経験してきた。1回目は黒船が来て、江戸幕府が崩壊した1860年代中ごろ。次は、第二次世界大戦に敗れた1945年。そして、3回目が戦後復興のモデルが崩れ、立ちいかなくなっている現在だ」

 堺屋氏はそのうえで「最初の2つの敗戦では、黒船と米進駐軍がやってきて、日本はいやおうなく変革できた。だが今回は初めて、日本が自分で生まれ変わらなければならない」と指摘する。

 では、どう生まれ変われば良いのか。堺屋氏は官僚主導の統治を改め、国に活力を取り戻せるかが日本の命運を左右するとみる。さらに、「米国依存型」の外交も問われるだろう。

 歴史の波に揺れる米欧。彼らの葛藤は日本にも対岸の火事ではない。

(コメンテーター 秋田浩之)



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