風見鶏 日韓関係占う「爆弾」処理 2017/9/3 本日の日本経 済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「風見鶏 日韓関係占う「爆弾」処理」です。





 「信念」と「国家元首」が葛藤している。就任から100日を過ぎた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の対日政策に心中の揺れを感じる。歴史問題では譲らない。だが日本とは未来志向の協力関係を築く。そんな「ツートラック」路線の命運を分ける「Xデー」が刻一刻と迫っている。

安倍首相と握手する韓国の文在寅大統領(右)(7月7日、ドイツ・ハンブルク)=共同

 その1つは年末だ。2015年12月に発表した従軍慰安婦問題をめぐる日韓合意を検証する韓国外務省の作業部会が報告書をまとめる。合意の再交渉を掲げて当選した大統領の意向がある。文氏は就任後も「国民の大多数が情緒的に受け入れられない」と合意に否定的な姿勢を崩していない。

 報告書に影響するのが日韓合意に基づき韓国政府が設けた元慰安婦支援の「和解・癒やし財団」を巡る点検結果だ。財団は合意時点の生存者47人のうち7割以上にあたる36人、死亡者199人のうち65人の本人や遺族らに現金を支給した(一部手続き中を含む)。

 財団理事長が元慰安婦一人ひとりと面会するため全国を渡り歩いた。だが革新系メディアや識者から「被害者側に現金を押しつけた」と批判されている。日韓合意の柱である財団活動が否定されれば、合意全体が揺らぐ。点検作業を率いる鄭鉉栢(チョン・ヒョンベク)女性家族相は強硬な合意反対派として知られる。

 「進歩(革新)系の支持者に応えなければならない」。大統領選の文陣営の一人は年末の作業部会の報告書について厳しい検証結果を予告する。文氏は市民団体などの急進的な左派・革新系勢力から再交渉へ突きあげられる恐れがある。

 「国家間の約束が破られるようなら韓国に出向いてお祝いする気にはなれない」と日本政府関係者はけん制する。文氏がドイツで安倍晋三首相と会談し、18年2月の平昌冬季五輪に合わせて訪韓するよう招請したのは今年7月のことだ。

 平昌五輪後、文氏が来年前半に訪日する構想もある。慰安婦合意の検証を受けた韓国政府の出方次第で、文氏が提案した首脳間の「シャトル外交」に暗雲が垂れこめる。来年10月には韓国側で対日関係発展の契機にもくろむ日韓共同宣言20周年が控えている。

 文氏は学生時代から反軍事独裁・民主化運動に身を置いた筋金入りの「反日帝(日本帝国主義)」「反保守」だ。半面、首脳会談での振る舞いなど「反日」ではないと日本政府はみる。

 2度目の韓国駐在で日本人の「韓国離れ」を感じる。ソウル市内を循環するバスにプラスチック製の慰安婦少女像が乗り日本の大使館や領事館前に次々と少女像や徴用工像が設置・計画される。知韓派を自任する友人は「身内から非難めいた視線を浴び韓国に行きづらくなった」とこぼす。慰安婦合意後、翌16年の日本人観光客が25%増えた後、今年は伸びが鈍化しているのは北朝鮮情勢の緊迫だけが原因ではないだろう。

 今年11月にも想定される日本開催の日中韓首脳会談が文氏の初来日になる。安倍首相とは北朝鮮問題での連携を確認した8月25日の電話協議で「日韓間の懸案を適切に管理する」と申し合わせた。韓国では8月末にも結果を出す予定だった女性家族省による元慰安婦支援財団の点検作業が9月以降も続くことになった。文政権に迷いもみえる。

 日韓の「時限爆弾」はそれだけではない。日本植民地支配時代に労働に従事した朝鮮半島出身の元徴用工が日本企業に損害賠償を求め、文氏が理解を示した問題も韓国最高裁判所の判決が早晩下される。自らが持ち出した2つの懸案をどう扱うか。日韓関係を生かすも殺すも文氏の胸三寸だ。

(ソウル支局長 峯岸博)



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