風見鶏 金融庁 20年目の自問 2017/4/23 本日の日本 経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「風見鶏 金融庁 20年目の自問」です。





 お堅い気質で予定調和の人事が当たり前のメガバンクに異変が起きた。相次ぎ世間を騒がせたのは三井住友銀行とみずほ銀行。三井住友の高島誠頭取も藤原弘治みずほ頭取も、今春の就任は多くの行員や取引先にとって予想外だった。

 「2人の人事には共通点がある」と業界他社の幹部が話す。経営のグローバル化を映し、ともに米国経験が長い国際派。持ち株会社社長に何歳も年上の先輩経営者を頂いて、頭取は主に営業現場の統率役を担う色彩も両行似ている。

 銀行組織でなく持ち株会社がリードする経営の形は、国際化と並んで金融庁が旗を振ってきた。その呼びかけに応えたのが2行の新たな布陣という解説だ。「両頭取とも金融庁首脳の信頼があつい」。異例の人事を読み解く業界人の念頭には必ずと言っていいほど金融庁の意向がある。

 経営不安の大手行が公的資金の助けを求めた時代ならともかく、役所が民間の人事に介入するとは考えにくいと皆知っている。それでも今、金融庁と絡めて語るとメガ銀のサプライズ人事が説得力を帯びる。業界の空気は、金融庁が大きく見えている裏返しだ。

 大きく見える訳はある。「財務省は反省すべきだ」。金融庁幹部の発言が波紋を広げたのは昨年夏。三菱東京UFJ銀行が国債市場を支える「プライマリー・ディーラー」という特別な入札資格を返上したときのことだ。財務省は「裏切られた」と憤ったが、金融庁は素っ気なかった。それどころか「国債市場を真剣に考えてきた三菱UFJの行動の意味を考えないと」と財務省の怠慢を批判した。

 アベノミクスをけん引する日銀に政府内から異論を唱えるのは難しい。金融庁は例外だ。日銀が昨年導入したマイナス金利政策に「当初の目的を果たせていない。マイナス金利の幅を大きくしても副作用が増すだけ」と反対意見をぶつけた。市場で噂されたマイナス金利の深掘り論はすっかり鳴りを潜めている。

 金融庁の強さを印象づける事件の数々は関係者の脳裏に刻まれる。「今の金融庁は史上最強」とある経営トップ。1998年、旧大蔵省(現財務省)から分離した金融監督庁に始まる金融庁。存在感と共に創設の精神への自問も強まる。

 「金融不祥事の末に誕生した新組織はまず何より業界とのなれ合い排除を求められた」(50代の官僚)。よく使われた例えがコーチ(指導者)からアンパイア(審判)へ。コーチのように金融機関と接するから癒着が起きた。経営判断というプレーを事後に判定するアンパイアに徹すべきだという論法だった。

 金融機関に立ち入り、強権的に調べる検査局はまさにアンパイア。日ごろ金融機関と会話する監督局と別建てだから客観的とされた。危機と不祥事への反省は監督と検査という2つの似通う仕事の分離を促した。しかし、不良債権処理から金融業の発展へ行政の軸足が移った近年は、監督と検査が分かれる縦割りの弊害も指摘されていた。

 「諸外国のように検査・監督を一体で運営しよう」とカジを切ったのは2011~14年の畑中龍太郎元長官。当時の検査局長だった森信親長官は、先月公表した報告書に組織や手法の見直しをうたった。今年夏にも具体的な見直し策を示す準備が進んでいる。

 アンパイアからコーチに戻る、という例えを金融庁はきっと使わない。でも、そんなふうに受け取る人もいて、賛成も反対も出るだろう。20年目の金融庁が業界人だけでなく普通の人々からどれだけ信頼を得てきたかが試される夏になる。

(編集委員 上杉素直)



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