食と農 次代に伝えたい(3)魚も野菜も持続可能に 資源保護策 生み出せる 2016/05/07 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「食と農 次代に伝えたい(3)魚も野菜も持続可能に 資源保護策 生み出せる」です。





 鹿児島市のいおワールドかごしま水族館に「沈黙の海」と題した縦横1メートル強の水槽がある。魚はいない。傍らには人間の独善を戒める詩が掲げられている。展示課の久保信隆主幹(49)は「人間が自分のことしか考えていなかったら、生物はいなくなることに警鐘を鳴らしたかった」と話す。

マグロを生むサバの実用化を目指す東京海洋大の吉崎悟朗教授(右)(千葉県館山市)

マグロ8割消費

 資源の持続可能性を考える最も身近な題材は太平洋クロマグロだろう。「黒いダイヤ」と呼ばれる高級魚で日本は漁獲量の8割を消費する「世界一の消費国」としての責任を負う。

 水産庁によると、1960年に約14万トンだった親魚資源量は84年に約2万トンまで減った。中国など新興国の中間層による需要の拡大もあり、2012年時点でも2.6万トンまでしか回復していない「歴史的最低水準」(同庁)にある。

 他の魚種に比べ、クロマグロの資源管理は難しい。日本沿岸では古くから重さ30キログラムに満たない未成魚のうちからクロマグロを漁獲しているためだ。未成魚の漁獲枠にも上限を設けてきたが「資源量が目標基準まで回復した後も見据えた手法が必要」と水産研究・教育機構の中塚周哉研究員(42)は話す。

 漁獲制限以外の取り組みも進む。東京海洋大の吉崎悟朗教授(50)はサバにマグロを生ませる研究を進める。昨年、幹細胞の移植によりマグロだけ産卵させる仕組みを突き止めた。環境への負荷も完全養殖より小さい。「10~20年で事業化できれば幸運」と話す。

 海からだけではない。大地からも悲鳴が上がる。

 「白菜の生育がおかしい」。高原野菜の一大産地、長野県川上村では2年ほど前から白菜が思うように育たない畑が出始めた。根元を切ると芯の様子がおかしかったりして、出荷できないものもあった。

 川上物産農業協同組合(川上村)が調べると、ある傾向が浮かび上がってきた。白菜だけを1年に何度も植え、薬品を使って土を消毒した畑ほど病気が出やすい。一方で白菜だけでなくレタスも植え、土の殺菌をひかえた畑は病気が少なく、収量も安定していた。

 川上物産は1つの作物だけを植えるのをできるだけやめ、消毒も少なくし、土づくりに力を入れるよう農家を指導する方針だ。同農協の今井安実監事(58)は「村には後継者が大勢いる。彼らが将来も農業を続けられるようにするための取り組みだ」と話す。

新型の二毛作

 昨年11月、熊本県嘉島町の約390軒の農家が協力し、農業法人「かしま広域農場」を立ち上げた。集落単位で年ごとに農作物を細かく作り分ける。工藤健一代表理事組合長(75)は「一定周期で稲作を挟むことで畑にミネラルや有用な微生物が行き渡る」という。連作障害を防ぎ、地力を維持することで二毛作を手掛けやすくした。環境に優しく、収穫力も向上させる取り組みは着実に広がる。

 国連は50年までに世界人口が90億人を超すと推計する。食料問題の解決は一段と負荷の強まる環境との共生が最低限の前提となる。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です