食と農 次代に伝えたい(4)食事≠栄養補給 豊かな時間に眠る商機 2016/05/08 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「食と農 次代に伝えたい(4)食事≠栄養補給 豊かな時間に眠る商機」です。





 米シリコンバレーで食の技術革新が進む。藻から抽出した油や大豆を原料とした白い液体を飲めば必要な栄養が全て取れる「ソイレント」だ。1日3食で1カ月分は232ドル(約2万5千円)。すでに売り上げは月数百万ドルといわれる。

完全栄養食をうたう「ソイレント」の飲料

「オー・ミラドー」の勝又登シェフ(神奈川県箱根町)

 1秒でも早く製品やサービスを世に出そうと働く起業家から「400ミリリットルで栄養が取れ満腹になる」と支持を集め、2013年にネットで約200万ドルを募って創業。15年には将来性を買った投資ファンドなどから2千万ドルを調達した。

くつろぎシフト

 1983年に「カロリーメイト」を発売した大塚製薬は「10秒で食べられるバランス栄養食」を提案した。50年先、100年先も「時間の短縮」と「完全な栄養」を両立した食品は1つの潮流となるだろう。だが、それだけだろうか。

 NHK放送文化研究所の国民生活時間調査(15年)によると、日曜に日本人が食事にかける時間は平均1時間44分。実は高度経済成長を謳歌した70年から少しずつ伸びている。

 東京都心から約100キロメートル。フレンチの料理人、勝又登シェフ(69)の店「オー・ミラドー」(神奈川県箱根町)は芦ノ湖を見下ろす高台にある。30年前に日本初の「オーベルジュ」として開いた店だ。

 オーベルジュとは泊まれるレストランのこと。日本オーベルジュ協会には37施設が加盟する。車を運転する人も泊まる覚悟ならお酒を楽しめる。本場フランスではミシュランガイドで三つ星を取った地方のオーベルジュへタイヤをすり減らして旅する食通も多い。

 顔なじみの地元農家が作った野菜に近くの市場で仕入れた新鮮な魚……。料理はすべて地元の食材でまかなう。「旬の食材は味に力がある」(勝又氏)。メニューはその日の食材をみて決め、その日にしか食べられない料理を作る。「食事以外の『時間』も含めて味わってもらう」ためだ。

「手料理食べる?」

 時間のかかる「手料理」に価値を見いだす流れもある。山本雅也さん(31)は手料理を振る舞いたい料理人と食べたい人をつなぐインターネットのサイト「キッチハイク」を始めた。

 「5月×日に私の料理を食べませんか」と料理人が投稿し、応じる人がいれば会食が成立。登録する約500人の料理人の家でゆったり食卓を囲む趣向だ。

 価格は料理人が決め、評価はサイトに残る。「多くの支持を集めた料理人への信頼は相当なもの」(山本氏)。立派な店を構えずに「家庭料理の達人」が高収入を得るのも夢ではない。

 食とは突き詰めれば物質を消化して生きるエネルギーに変える化学反応だ。その営みに時間を加味すれば食はもっと豊かになる。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です