食品M&A、規模より質 ネスレ「コーヒーのアップル」買収 ブランド+αで 知恵比べ 2017/9/16 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の企業面にある「食品M&A、規模より質 ネスレ「コーヒーのアップル」買収 ブランド+αで 知恵比べ」です。





 食品世界大手のM&A(合併・買収)が量から質へと変わりつつある。ネスレ(スイス)はコーヒーの新興ブランドと注目される米ブルーボトルコーヒーを買収。ビール最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)もクラフトビール会社を相次ぎ傘下に入れる。定番商品だけでは満足しない舌の肥えた消費者が世界的に増え、個性的なブランドが成長に欠かせなくなったためだ。

 「違いがわかる愛好家にとって象徴的なブランドを持ち、急成長する超高級コーヒー店に参入できる」。ネスレのウルフ・シュナイダー最高経営責任者(CEO)は14日、ブルーボトル買収の意義をこう説明した。

 ブルーボトルは2002年創業で、豆の仕入れやコーヒーを1杯ずつ作ることへのこだわりを打ち出す「サードウエーブ(第3の波)コーヒー」の先駆者。欧米メディアによると、4億2500万ドル(約470億円)で株式の68%を取得した。

 ブルーボトルは日本にも15年進出し、現在は東京都内で6店舗を運営。「豆の産地が異なるだけで、味や香りが大きく違うのが面白い」(東京・目黒の店を訪れた50歳代の男性客)。店員が客の好みを聞き、注文を受けてから丁寧に入れ、他店との違いを醸し出す。

 コーヒーで世界的ブランド「ネスカフェ」を擁するネスレだが、16年12月期は売上高が3.2%増(既存事業ベース)にとどまった。かつて掲げた年率5~6%成長の目標に届かない年が続く。6月には「物言う株主」の米サード・ポイントが株式取得を表明し、利益率の引き上げなどを求める事態を招いた。

 売上高が10兆円を超すネスレにとって、ブルーボトルは小粒な買収だ。しかし、豊かになり、時にはぜいたくを楽しむ世界の消費者を取り込むには、個性派の買収が欠かせないと考えた。

 食品大手の悩みはインベブをみればわかる。世界2位の英SABミラーを買収してビールの世界シェアは3割に迫り、「バドワイザー」「コロナ」など強力なブランドを持つ。しかし、株価はその後、逆に伸び悩む。

 多くの地域で、製法などで個性を出すクラフトビールが難敵として立ちはだかっていたためだ。このため16年にイタリアやカナダ、中国など世界各地で10社ものクラフトビール会社を買収した。

 新たな市場も模索する。7月には栄養ドリンクを製造する米ハイボールを買収すると発表。過去に多くの巨額買収を手掛けた経緯から、米コカ・コーラ買収に動くとの観測も広がっていたインベブだが、ハイボールは従業員20人の中小企業だ。

 日本勢も事情は同じだ。キリンビールは14年に国内クラフト最大手ヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)と資本・業務提携。アサヒグループホールディングスは伊ペローニなどインベブが手放した欧州ブランドを買収し、高級ビールとして売る戦略をとる。

 とはいえ、個性派ブランドも大手の傘下に入れば新鮮味が薄れ、消費者に飽きられかねない矛盾をはらむ。「定番+個性」という食品大手の新戦略は賞味期限が長くないのかもしれない。

(ジュネーブ=原克彦、新沼大、小田浩靖)



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