AIと世界 見えてきた現実(4) 消費電力1万2000 人分 弱点克服できるか 2017/7/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「AIと世界 見えてきた現実(4) 消費電力1万2000人分 弱点克服できるか」です。





 「完璧すぎた」。5月27日、米グーグルの人工知能(AI)「アルファ碁」に3連敗した中国の棋士、柯潔(か・けつ)九段はこう漏らした。圧倒的な力を見せつけたAIにも弱点があった。膨大な消費エネルギーだ。

医師はAIの判断をもとに、患者(右)に治療法を説明する(仁川市の嘉泉大学ギル病院)

 人間の脳の消費エネルギーは思考時で21ワット。一方のアルファ碁の消費電力は25万ワットとされてきた。約1万2千人分だ。

 「消費電力の少ない半導体が必要になる」。トヨタ自動車のAI研究子会社、トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)のギル・プラット最高経営責任者(CEO)は指摘する。

 従来型の半導体で高度な自動運転を実現するには、住宅を上回りかねないほどの電力が必要になる。従来の延長線上にない技術革新が不可欠だ。

大量の計算必要

 AIが高度化し、普及すればするほど大量の計算が必要になり消費電力も膨らむ。電力問題が永遠に手が届かない逃げ水となる可能性もある。

 AIの研究が始まって60年余り。「これからリアルでシリアスな領域にAIが使われる」(経営共創基盤の冨山和彦CEO)。その分、消費電力のような現実的な課題が浮かび上がる。

 韓国の仁川市にある嘉泉大学ギル病院は昨年秋、肺がんなどの診断にAIを導入した。米IBMの「ワトソン」を使い論文や診療データから最適な治療法を導き出す試みだ。

 医師不足が深刻な韓国では特に地方でワトソン待望論が広がるが、費用の高さが立ちはだかる。 ワトソンを導入した病院は最低でも年間10億ウォン(約1億円)をクラウド利用料などとしてIBMに支払っているといわれる。韓国では医師の平均年収は1億6500万ウォン。医師約6人分の人件費に当たる。世界で最も導入が進むワトソンですら韓国の大手病院から「費用ほどの利点はない」との声が出る。

データに不純物

 AIを賢く育てるはずのビッグデータにも「現実の壁」がある。

 「オオカミ人間の遺伝子情報を基に診断しそうになった」。経済産業省で遺伝子検査ビジネスの研究会を開いていた商務・サービス政策統括調整官の江崎禎英氏は事業者の発言に耳を疑った。人間の遺伝病リスクの分析事業者に愛犬の細胞を送る顧客が相次いだためだ。現在は顧客に「ペット禁止」を念押しするが、データに「不純物」が混入しAIの予測精度が落ちる危険はつきまとう。

 時に虚偽が真実を超えて支持される「ポスト・トゥルース(真実)」の時代。昨年の米大統領選ではドナルド・トランプ氏に有利となる虚偽のニュースが拡散した。ビッグデータの中に故意に不純物を混ぜるサイバー攻撃があれば、AIは路頭に迷うことになる。

 AIは放っておけばバラ色の未来をもたらすわけではない。課題を乗り越えAIを社会に根付かせられるかどうか。成否は人間にかかっている。

(この項おわり)

佐藤昌和、熊野信一郎、進藤英樹、松田省吾、瀬川奈都子、小山隆史、多部田俊輔、森園泰寛、小沢一郎、戸田健太郎、岩崎貴行、林英樹、生川暁、八十島綾平、深尾幸生、佐藤浩実、川上梓、花田幸典、斉藤美保、花田亮輔、矢野摂士が担当しました。



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