ASEAN50年 変わる座標軸(下)高まる中国リスク重み 増す盟友ニッポン 2017/8/8 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「ASEAN50年 変わる座標軸(下)高まる中国リスク重み増す盟友ニッポン」です。





 カンボジアの首都プノンペン中心部から車で1時間足らずの経済特区。空港に近い好立地の一画に立っていた日本の大手二輪車メーカーの「進出予定」の看板が今年に入り、ひっそりと姿を消した。「進出を断念したようだ」と関係者は言う。

進出の利点薄く

 日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)は過去40年以上、蜜月関係を築いてきた。日本企業は人件費が安い東南アジアを生産・輸出拠点として活用。帝国データバンクによれば、ASEAN進出企業は昨年時点で1万1000社を超える。だが、2012年に月額61ドルだったカンボジアの最低賃金は、17年に153ドルと2.5倍に上昇。進出の利点は薄れる。

 一方、ASEANにとっても、日本だけが重要なパートナーではなくなりつつある。「吉利の力で、東南アジア市場にプロトンの事業を広げてほしい」。6月、中国の自動車大手、浙江吉利控股集団がマレーシアの自動車大手、プロトン・ホールディングスの株式の約半数の取得で最終合意した際、同国首相のナジブはこう期待を込めた。

 かつて日本企業が技術支援した国民車メーカーの株主交代は、東南アジアにおける勢力図の変化を象徴する。米ENR誌の調べでは、アジアにおけるインフラ受注の国別比率は中国が17%でトップ。日本は10%で5位に沈む。米国の存在感が低下する今、中国の経済支配力がさらに強まるのは間違いない。だが、それは「中国リスク」を抱え込むことにもつながる。

 「はやくやれ」。7月下旬、インドネシア大統領のジョコは運輸相らに活を入れた。日本案では既に建設が始まるはずだった高速鉄道計画。実際は15年秋に中国案の採用を決めたが工事はほとんど進まず、当初予定の19年開業はほぼ絶望的だ。中国側の資金提供が遅れ、「日本案の方がよかった」との声も同国政府高官からは漏れる。

直接投資20兆円

 米の不在と中国の台頭は、カウンターバランスとしての日本の重要性を照らし出す。中国にない「信頼」という資産だ。日本の東南アジアへの直接投資残高は20兆円近く。ものづくりだけでなく、人材育成や法整備など様々な基盤を残した。三菱総合研究所がASEAN6カ国に調査したところ「日本が大好き・好き」との回答は86%と中国の36%を上回った。

 日本にとっても、親日的な東南アジアは中国のように政治リスクを抱えない、安定した成長市場だ。東南アジア6カ国でシェア8割を誇る日本車の販売台数は年250万台規模に上る。欧州、インド市場を上回り、中国市場の7割弱に迫る。

 朝鮮半島情勢が緊迫し、中国の海洋進出が加速するなか、安全保障上の連携相手としての重要性も増す。

 日本とASEANの互恵関係を体現する企業がある。「日本の品質を東南アジアのコストで」。包装用フィルム大手、サイエンテックスの工場に掲げられたスローガンだ。ASEAN発足翌年にマレーシアで創業した同社はフタムラ化学など日本企業との提携をテコに、約80カ国に製品を輸出するまでに成長した。

 ASEANの域内総生産(GDP)は25年ごろに日本を追い抜く。政経両面で対等なパートナー関係を築けるか。次の50年の課題だ。

(敬称略)

 中野貴司、鈴木淳、富山篤、遠藤淳、岸本まりみが担当しました。



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