EV大転換(中)もっと増産できないか「日の丸素材」試され る優位 2017/8/10 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「EV大転換(中)もっと増産できないか「日の丸素材」試される優位」です。





 東京・港区にある住友金属鉱山本社。材料事業本部には催促がひっきりなしに届く。「もっと増産できないか」。主な相手は車載用リチウムイオン電池で世界首位のパナソニックだ。

 住友金属鉱山は車載用電池の正極材で世界大手。世界各国で次々に電気自動車(EV)の量産計画が立ち上がるのを見すえ、国内工場の生産能力を一気に2.5倍に引き上げることを決めた。

 世界で進むEV大転換。当惑気味の日本の自動車メーカーとは裏腹に、素材産業は「EV特需」に沸いている。

需要確保へ投資

 デロイトトーマツコンサルティングによると、2015年に約450兆円だった自動車産業の総付加価値額は30年に約630兆円に拡大する。増加額の3割を占める「素材・部品」では、日本企業の強さが目立つ。EVシフトで急拡大が期待される需要を狙い、攻めの投資が活発になっている。

 「ただちに進出を決めなければ」。リチウムイオン電池の発火を防ぐセパレーター世界2位の東レ、井上治常務取締役の目線は東欧に向く。東レは20年までに1200億円を国内外に投じる方針。

 19年にも欧州初の工場を新設し、EVシフトの震源地でシェア拡大をもくろむ。セパレーター世界首位の旭化成も20年に国内外の生産能力を2倍に引き上げる計画だ。

 もっとも、わが世の春が続く保証はない。8日、NECはEV向け電極事業を手掛ける子会社の株式を売却する方針を発表した。EV市場が本格的に立ち上がるタイミングで撤退するのは、中国や韓国企業の台頭で競争が激しくなり始めているためだ。

 売却先は中国の投資ファンド。中国企業は母国のEV市場の成長を見込み貪欲に技術を取り込もうとしている。

悩む鉄鋼業界

 EVはガソリン車に比べ構造が単純だ。デジタル製品のようにものづくりの水平分業が進むとみられており、世界中の企業が新規参入を狙う。

 「困った問題だ。EV化の流れが予想を超えている」。自動車素材の主役、鉄鋼メーカーの幹部はこぼす。リチウムイオン電池を大量に搭載するEVはガソリン車と比べ重くなる。走行距離を延ばすためにも車体などに使う素材の軽量化は待ったなしの課題だ。

 自動車の主要部材を重たい鉄から軽いアルミや樹脂などに置き換える動きが加速するのは避けられない。

 米エネルギー省は自動車材料のうち、15年に重量比で7割超を占めた鉄の比率は30年に4割台に低下すると分析する。エンジンなどが不要になるEVへの大転換が進めば、鉄の比率はもっと下がる可能性がある。

 新日鉄住金やJFEスチールは軽量化に向く高強度鋼板やEV用モーターに使う電磁鋼板の拡販に力を入れるが、鋼材需要の減少を食い止められるかはまだ分からない。

 1980年代に世界を席巻した日本の半導体産業は、世界の技術トレンドを見誤り坂道を転げ落ちるような衰退に直面した。「日の丸素材」は大転換を乗り切れるか。戦いはすでに始まっている。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です