FT特約 麻薬王逮捕後のメキシコ 司法改革 待ったなし 2016/01/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際1面にある「FT特約 麻薬王逮捕後のメキシコ 司法改革 待ったなし」です。





 どんな犯罪であれ、ならず者は愛されるらしい。アル・カポネをはじめとする米禁酒法時代のギャングたちは繰り返し本や映画に取り上げられている。そして今は「エル・チャポ(小柄なヤツ)」ことホアキン・グスマン受刑者だ。自らの半生を銀幕上に見ることを思い描き、その虚栄心があだとなって8日に逮捕された。

 メキシコ政府にとって、この逮捕は重要な成果だ。シナロア・カルテルを率いるグスマン受刑者は世界で最も悪名高い麻薬王であり、最重要指名手配犯だった。

 メキシコの麻薬戦争では過去10年間に10万人以上が殺され、2万人が行方不明になっている。グスマン受刑者のようなギャングが逮捕されることは、メキシコという国全体のためになる。

 それでも、ペニャニエト大統領がグスマン受刑者の逮捕後に「任務完了」と誇ったのは愚かだった。確かに、6カ月前にグスマン受刑者が厳重警備の刑務所から脱獄し、その痛手が尾を引いていた政権にとっては面目の回復を訴えたい成果だ。しかし、グスマン受刑者の逮捕(3度目)は麻薬取引の根絶にはほとんどつながらない。また、メキシコが直面している最大の問題である治安の改善にも役に立たないだろう。

 その治安の悪さには数々の要因がある。ただ、最大の原因はメキシコの腐敗と無法性だ。これを正すことこそが、メキシコが果たさなければならない本当の任務だ。

 大統領は今、停滞したままの司法・警察改革の断行に向かうべきだ。この改革は何年も前に公約されながら、ペニャニエト政権はそれよりも目を引きやすい施策――歴史的なエネルギー産業自由化、あるいはまさにグスマン受刑者の逮捕など――を優先してきた。

 メキシコ政府は今こそ、法治の強化に対して同等のエネルギーと決意を示さなければならない。その上で初めて、大統領は「任務完了」を確言し、逃亡と逮捕が続いたグスマン受刑者の血塗られた一代記を乗り越えることができる。

(13日付)

=英フィナンシャル・タイムズ特約



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