注目企業 投資家に語る(4) 国内事業、来期増収へ 資生堂 前田新造会長兼社長 2013/11/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資・財務面にある「注目企業 投資家に語る(4) 国内事業、来期増収へ 資生堂 前田新造会長兼社長」です。





 資生堂の収益が回復してきた。コスト削減と円安を追い風に、10月末に2014年3月期の連結営業利益を前期比54%増の400億円へと10億円上方修正した。再成長への足場を固めるために、国内と中国で事業の立て直しをどう進めていくのか。前田新造会長兼社長に聞いた。

 ――国内の収益改善は進んでいますか。

 「春からグループ全体の問題点をすべて洗い出した。各部門が提出した再生プランを経営会議で議論し、売上高など、KPI(重要な目標達成指標)を細かく定めた。定期的に評価を繰り返し、達成できなければ整理するかどうか考える」

 「大事なのは売上高を伸ばすことだ。美容部員の削減はしない。来期から国内が増収に転じるので、人件費比率を改善できる。右肩下がりだった国内市場は緩やかに回復するとみており、1桁台前半の伸びを目指す」

 ――どう国内売上高を増やしていくのですか。

 「中価格帯『マキアージュ』など主力品に投資を集中してきた効果は表れてきた。ただ国内事業は今期1%増収を見込んでいたが2%減収になりそうだ。流通在庫を削減するための出荷抑制や店頭からの商品回収が110億円の減収要因となる。来期はマキアージュを含めて3つの主力ブランドを大幅に刷新、高齢者向けの新ブランドも出して、(今期で8期連続で減収見通しの)国内事業を増収にする」

ネット通販カギ

 ――反日デモから1年が過ぎましたが中国の販売は回復しましたか。

 「主力の高級化粧品『SHISEIDO』は資生堂の名前を冠しているため、買うのをためらう女性がまだ多い。最悪期は脱したが、足元の緊張はまだ続いており、反日デモ前に戻るまでは少し時間がかかる。百貨店向け『オプレ』と専門店向け『ウララ』の2つの現地ブランドに投資を集中させる。現地生産なので採算がいい。オプレは来期に大幅刷新する」

 「周りの目を気にせずに買うことができるネット通販もカギを握る。シャンプーや低価格化粧品に加えて、今後は高級化粧品にも広げる。出荷抑制で在庫削減も進め、来期は新商品を拡販していく。今期の中国事業の営業利益率は目標の10%に届かないが、来期には10%台に戻す。中国でも人件費が上昇しているが増収で吸収したい」

配当性向40%に

 ――今期は上場来初の減配ですが来期以降の配当政策はどうですか。

 「中国や東南アジアなど成長市場の開拓に資金が必要となる。10年の米化粧品大手のベアエッセンシャル社の買収に伴い、13年9月末時点で1778億円に膨らんでいる有利子負債の削減も不可欠。配当性向が100%を超える時期が続いていたが、今後は配当性向40%を維持し、利益の伸びに応じた株主還元をしていく」

 「来期スタートする中期経営計画を策定している。過去2回の中計では連結営業利益率10%を目標にしてきたが、前期で4%と未達成のままだ。同利益率10%はグローバルで戦うために必要なライン。攻めの姿勢で近づけたい」

(聞き手は栗本優)



電機転生(下) 「シェア首位」が最善か 京セラ、下位でも個性磨く 2013/11/30 本日の日本経済新聞より

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世界大手が赤字に陥る中、黒字を続ける京セラの太陽電池(京都市の大規模太陽光発電所)

 京セラの携帯電話の年間販売台数は2012年度に約1100万台。アップルやサムスンが1カ月で売る台数と変わらない。「真っ向勝負で勝てるわけがない」(山本康行専務)。しかし事業撤退は頭の中にはない。

54年間赤字なし

 米国で昨年発売し、1年間で200万台を売ったスマートフォン(スマホ)「ハイドロ」。防水性能に優れ、騒音の中でも相手の声を聞き取りやすい製品で、アウトドア愛好家や耳が聞こえにくい高齢者などから高い支持を得ている。米携帯3位のスプリント・ネクステルに続き、米最大手のベライゾン・ワイヤレスも取り扱いを始めた。

 「何が本業なのか分からない会社」。株式市場は京セラをそう評する。スマホ、太陽電池、電子部品、セラミックを活用した家庭用品……。起業してまもなく資金繰りに苦労した創業者の稲盛和夫氏が「事業の一本足打法はリスクが大きい。何本もの足で経営を安定させる」として、主力と呼ぶ事業をあえてつくらないようにした結果だ。

 手掛ける事業は世界シェア10位前後。しかし事業部ごとに採算を管理する「アメーバ経営」の徹底で「創業54年間で一度も赤字になったことはない」(稲盛氏)。

 グローバル競争で勝ち抜く手段はシェアを高めて市場の支配力を握ること。そう信じてパナソニックやシャープはプラズマや液晶といった薄型パネルの量産に巨額資金を投じ、韓国や台湾勢に敗れた。しかも経営資源の多くをこの分野に割いたことで、その後の再建が思うように進まない。1等賞になることだけが最善の経営判断とはいえなくなってきた。

 東芝は9月、裸眼でも画像が立体的に見えるコンピューター断層撮影装置(CT)を発売した。3年前に同社が発売したものの普及せず、製造を中止した3次元(3D)テレビで培った技術を応用した製品だ。

選択・集中見直す

 「シェア上位ではない分野で画期的な製品を生み出す」。6月に就任した田中久雄社長はそう語る。半導体と原子力発電の両分野を中心に世界首位か2位を目指すとしてきたのが従来の戦略。田中社長は社内に蓄積する技術を活用した特異な新製品や新規事業の立ち上げに重点を置く。研究開発畑の技術者を社長秘書に登用した東芝でも異例の試みはその布石だ。

 「家電製品のコマーシャルを増やしたらどうか」。三菱電機の山西健一郎社長は最近こう言う。発電設備や産業機器など重電分野に経営資源を集中してきた同社。しかしニーズが刻々と変わる家電事業を縮小すると、的確なマーケティングや短期間に商品をつくる力が失われるとの危機感があるためだ。「選択と集中」にとどまらず、新たな事業の芽を育てる動きが広がってきた。

 尾島島雄、堀江耕平、多部田俊輔、平沢光彰、山田健一が担当しました。



ポジション 海外勢 円売り余力大きく? 2013/11/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「ポジション 海外勢 円売り余力大きく?」です。





 円相場が5月22日につけた年初来安値の1ドル=103円74銭を更新するか。12月の外国為替市場は円安がどこまで進むかが焦点になってきた。「冬休みに入る海外勢が円売りを11月末で手じまう」といった市場参加者の円安終局シナリオをよそに、円相場は29日も102円台後半と半年ぶりの円安水準を更新した。

 海外ヘッジファンドの多くは11月末以降、冬休みに入る。取引を手じまって、損益を確定してから休むのが通例だ。だが今年は様相が違う。

 今週シンガポールでヘッジファンドなど投資家を訪ねた野村証券の池田雄之輔氏は「冬休み中の円安進行を心配して、円安で稼げる持ち高を組んだまま休み入りしているようだ」と語る。

 円安の「11月終局説」の根拠となっていたのが、積み上がった海外投機筋の円売り。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の投機筋による円の対ドルでの売り越しは2007年7月以来の高水準に膨らんでいる。

 冬休み入り前にヘッジファンドが円売りを手じまうため、円を急速に買い戻す――。市場参加者のこんな心配は杞憂(きゆう)に終わった。

 「海外勢が円売りを続ける余地はまだ大きい」。三菱東京UFJ銀行の内田稔氏は、外国銀行の在日支店と海外本店との間の資金のやりとりを示す「本支店勘定」という指標に注目する。

 日銀が26日公表した9月のデータをみると、外銀在日支店への海外本店からの資金流入残高は10兆円程度。これは円売り・円買いどちらにも「中立的」な水準とされる。

 海外勢が低金利の円を売って高金利外債などに投資する「円キャリー取引」が盛り上がり、120円台まで円安が進んだ07年。本支店勘定の資金流入残高はマイナス約8兆円に達した。外銀の在日支店が低利で調達した円が本国の本店を経由してヘッジファンドの円売り資金に使われたためだった。当時と比べれば、海外勢の円売りはまだ本格化していないというのが実態というわけだ。

 円相場が今とほぼ同水準だった5月も、本支店勘定でみた海外勢の姿勢は円売り方向へ5兆円程度傾いていた。海外勢が5月水準まで再び円売りに傾くだけでも、単純計算で数兆円の円売り圧力が生じる。円の売り手には、心強い味方かもしれない。

(森本学)



真相深層 英語圏に「スパイ倶楽部」 盗聴疑惑、欧州などの批判の矛先 米、機密情報の扱いに苦慮 2013/11/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「真相深層 英語圏に「スパイ倶楽部」 盗聴疑惑、欧州などの批判の矛先 米、機密情報の扱いに苦慮」です。

アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、この5か国によるスパイ協定「ファイブ・アイズ」、つまり秘密結社が1946年から存在しているそうです。





 欧州や中南米、アジアが米国の情報監視活動を公然と批判し始めた。ドイツのメルケル首相への盗聴疑惑をきっかけに独連邦議会は米国への追及を開始。インドネシアやマレーシアなども米国とオーストラリアの盗聴に不信感を募らす。第2次世界大戦後、米英を中心に構築してきた情報独占体制が崩れる可能性さえある。

相次ぎ協定迫る

 「今後は盗聴しないと約束する」。10月23日の電話会談でメルケル首相にこう伝えたオバマ米大統領。インテリジェンス(情報)関係者の世界では波紋が広がった。

 外交の世界では「常識」ともされる情報監視や盗聴活動。相手に対して今後は盗聴しないとトップが公約するのは異例な対応だからだ。

 米国家安全保障局(NSA)の情報監視活動が次々と明らかになるなか、欧州各国は水面下で米国に要求を突き付け始めた。ドイツは相互にスパイ活動を禁止する協定を結ぶよう要請。各国首脳らへの盗聴疑惑が広がった10月下旬にはフランスやイタリアが同様の協定を米国に迫った。オバマ大統領による盗聴中止の公約は、米国が欧州との協議に応じざるを得ない状況に追い込まれたことを映す。

 スパイ活動の禁止協定を迫る欧州各国の念頭にあるのは、アングロサクソン系で英語圏の5カ国で構成する「秘密倶楽部(クラブ)」の存在だ。

 米英を中心とする5カ国は事実上のスパイ協定を締結している。大半の機密情報を共有したうえで、互いに盗聴活動やスパイ活動をしないことを申し合わせている。この協定の歴史は古い。第2次大戦中に米英がドイツや日本の通信傍受と暗号解読で協力したのがきっかけだ。1946年3月に米英が情報協定として締結。その後の東西冷戦をふまえ、カナダとオーストラリア、ニュージーランドに拡大した。5カ国はその存在さえ認めていなかったが、2010年の英国の情報公開で明らかになった。

5カ国が一体

 5カ国のスパイ協定の枠組みは通称「ファイブ・アイズ」。わずか7ページの協定文書は各国の情報機関が(1)通信記録の収集(2)入手した通信文書(3)暗号解読――などを例外なしに共有することを明記。情報収集の手段や技術でも協力をうたっており、5カ国の情報機関が一体となって情報収集活動を展開してきたことをうかがわせる。

 米国の情報監視・盗聴活動の実態が次々と明るみに出るなか、このファイブ・アイズの存在も垣間見えてきた。

 米中央情報局(CIA)のスノーデン元職員が米国のみならず、英国や豪州による盗聴活動の実態を暴露できた謎も解ける。スノーデン元職員がアクセスできたのはNSAの機密情報だが、そこにはファイブ・アイズの機密情報も入っていたと考えられる。インドネシアなど東南アジア各国の豪大使館が盗聴の拠点とされたのも、この枠組みを通じた米豪の連携とされる。5カ国がそれぞれ地域を分担して情報収集を進めた可能性も浮かんでいる。

 欧州や中南米、アジアはこれまで5カ国による情報収集活動の「蚊帳の外」に置かれていた。独仏伊が米国にスパイ協定を要求するのは、独占されている機密情報の入手を狙っているからだ。

 一連の盗聴疑惑をきっかけに米国はファイブ・アイズの枠組みを修正するのだろうか。「同盟国や友好国との間での情報収集活動がどうあるべきか、緊密に協議をしているところだ」。10月末の記者会見で、米国務省のハーフ副報道官は言葉を濁した。

 情報収集活動の枠組みを広げれば、当然ながら共有情報の秘密性は低くなる。それでなくてもNSAの情報収集活動が暴露されて以降、米国のインテリジェンス関係者の活動は大きく制限されている。「テロの危険性が高くなっている」と指摘されるなか、米国が国際社会の批判をどうかわすかが注目される。

(ワシントン=中山真)



注目企業 投資家に語る(1) 新興国でM&A攻勢 LIXILグループ 藤森義明社長 2013/11/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資・財務面にある「注目企業 投資家に語る(1) 新興国でM&A攻勢 LIXILグループ 藤森義明社長」です。





 企業収益の回復の足取りが力強さを増す中、株式市場は各社の次の一手に目を凝らす。潤沢な手元資金をどう使い、投資拡大やM&A(合併・買収)など、どのような経営戦略を描くのか。注目企業のトップに語ってもらう。1回目は、海外事業強化に向けて米アメリカンスタンダード(ASB)や独グローエなどの大型買収に動いたLIXILグループの藤森義明社長。

欧米市場は堅調

 ――ASBとグローエの買収は総額4000億円を超える規模です。

 「世界で展開しているブランド企業の買収は一段落した。米国はリフォーム・新築住宅市場ともに伸びており、欧州市場も持ち直し傾向にある。欧米は人口が増えており、将来も住宅市場は堅調に推移するとみている。2社の買収により、先進国の市場を攻める橋頭堡(きょうとうほ)を築けたと思う」

 「社長就任時(2011年8月)の自己資本比率は40%台で、30%程度になるまでは借入金を増やす余地があると考えてきた。実際、グローエ買収後も自己資本比率は35%程度なので、まだまだM&Aを実行できる余力はあると思っている」

 「世界のライバルに比べて遅れているモノとお金の流れを見直す。新たなシステム投資で資材調達から生産、販売、資金回収までの仕組みを改革する。これで1000億円規模のキャッシュフロー(現金収支)を捻出したい。当面持ち分法適用会社にとどまるグローエの全株式を買い取る原資として活用できる」

2ケタ成長続く

 ――今後も積極的なM&Aを続けますか。

 「次は(10月に買収したインドのサッシ会社のような)地域に根ざした中小規模の企業の買収に軸足を移していく。買収によるシナジー効果を生み出すには、アジアやアフリカなどの新興国の成長を刈り取っていく必要がある。そのための積極投資を進める」

 「日本市場は、人口減少で縮小が避けられない。混みあった業界は競争力を失ってしまうので業界再編を進めていくべきだ。ただ海外と違い、大きな成長を見込めない国内でのM&Aはコスト削減の意味合いが強く、決断が難しい。あるとすれば、海外市場を一緒に開拓していけるようなシナジー効果を生み出せる企業だろう。業務・資本提携など幅広い選択肢を視野に入れている」

 ――来年4月の消費増税で、駆け込み需要の反動減が心配されます。

 「住宅ローン減税など政府の施策のおかげで住宅着工は大きく落ち込まないとみている。ただ、リフォーム関連は反動が出るだろう。15年3月期の前半までは影響が残るかもしれない。だが、買収した海外2社が国内の落ち込みをカバーしてくれる。全体では来期以降も2ケタ増益が可能だ」

 「16年3月期に国際会計基準(IFRS)に移行するが、それを先取りする形で配当の決め方を変える。のれん償却前の利益をベースに配当性向30%メドとし、今期は年50円配当と10円増やす。配当性向30%の基準そのものも引き上げたい」

(聞き手は佐藤亜美)



経営書を読む コトラーら著「コトラーのマーケティング3.0」(2) 消費者との協働 信頼構築へ対話必須 2013/11/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のキャリアアップ面にある「経営書を読む コトラーら著「コトラーのマーケティング3.0」(2) 消費者との協働 信頼構築へ対話必須」です。





 前回紹介した価値主導のマーケティングを実現するために、コトラーは「協働マーケティング」「文化マーケティング」「スピリチュアル・マーケティング」という3つの要素が重要であると提言しています。マーケティング3.0の時代には、3つの要素が互いにシナジーを生み出していくことが求められます。

 1つ目の「協働マーケティング」とは何でしょうか。

 ソーシャルメディアの普及によって、消費者が企業のマーケティングに与える影響力は飛躍的に高まっています。コトラーはこうした消費者の変化について「マーケティングはマーケターが消費者に対して行う活動だけではない。消費者も他の消費者に対してマーケティングを行っている」と論じています。

 人々は広告より他の消費者の口コミを信頼し、納得感のある口コミはソーシャルメディア上で爆発的に波及します。企業は消費者との対話(≒協働)で信頼を築き、共感した消費者との協力(≒協働)によって大きな宣伝効果を得るのです。

 消費者は商品開発や広告のアイデアを提供し、イノベーションの源泉としても企業に協働成果をもたらします。コトラーの言葉を借りると、ユーザーが考えたコンテンツは消費者の生活により関連性があって受け入れやすく、往々にしてプロの作ったものより消費者の心に響くのです。

 さらにコトラーは、取引先企業やサプライヤーなどパートナーとの協働の重要性にも触れています。消費者は受け取るメッセージが企業単体からの発信であれ、パートナーとの協働の成果であれ、総体的なものを受け入れるからです。

 企業が単独で消費者の信頼・共感を得るのは、簡単なことではありません。

 今こそ新たなパートナーを模索して過度な自前主義から脱却し、消費者やパートナー企業との価値追求型の協働を進めましょう。

(アクセンチュア)



経営学はいま 戦略イノベーション(4) 流行を追わなくても成功 一橋大学教授 楠木建 2013/11/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済教室面にある「経営学はいま 戦略イノベーション(4) 流行を追わなくても成功 一橋大学教授 楠木建」です。





 戦略ストーリーとビジネスモデルとは似て非なるものだ。ビジネスモデルは「取引の見取り図」だが、戦略ストーリーが注目する「つながり」は因果論理にあるからだ。

 例えば、アクションXをとる。するとYができる。YができればZが可能になり、それがP(利益)をもたらす。個別のアクションを「なぜ」でつなげることで、戦略はストーリーになる。

 カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(ファストリ)は、「ZARA」ブランドのインディテックス(スペイン)と同様、SPA(製造小売り)だ。だがファストリの戦略ストーリーはインディテックスのようなファストファッションと正反対だ。そこに戦略イノベーションがある。

 ファストファッションは、どのような服が売れるのかを予想してつくるのではない。まずは少量を製造して売れ行きをみて、「売れるもの」をどんどんつくる。だから流行をはずさない。変化する流行に素早く対応する「マーケットイン」がカギになる。

 一方、ユニクロのコンセプトは「ライフウエア」だ。流行を追いかけるのでなく、万人が受け入れる高品質の「部品」としての衣料を提供する。売るものを完成度の高い商品に絞り込み、シーズンごとに改良していく。明確な強みを持った商品だけを店に出すという「プロダクトアウト」の戦略ストーリーだ。

 ユニクロの成功要因として発熱保温肌着「ヒートテック」など商品力が注目されるが、真の競争優位の源泉はその背後のストーリーにある。



多面鏡 加速する米国の原油増産 天然ガスから開発シフト 2013/11/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット商品面にある「多面鏡 加速する米国の原油増産 天然ガスから開発シフト」です。





 10年前に、米国が1世紀ぶりの石油ブームに沸く光景を想像できた市場関係者がどれほどいただろうか。2011年から急速に上向いた米国の原油生産は足元で勢いを増す。

 米エネルギー省の統計で米国の原油生産量(付随ガスは含まず)は、11月15日までの4週平均が日量792万バレルまで増加し、戦略備蓄向けを除く原油の平均輸入量(760万バレル)を逆転した。国内生産が輸入を上回るのは、1994年春以来、19年半ぶりだ。

 米国の原油生産は大恐慌に沈んだ29年に初めて10億バレルを超え、70年に記録した35億バレルまで増え続けた。だが、月間で3億1千万バレル、日量換算でちょうど1千万バレルを記録した70年10月が産油国としての米国のピークだった。

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 資源枯渇で日量500万バレルを割り込むようになった04~06年には、だれもが米国の原油生産はこのまま衰退し続けると考えた。

 しかし、その時に別な変化が進行していた。米国の住宅バブルを背景にした世界同時好況と、中国をはじめとする新興国の台頭だ。

 国際市場では急増する需要に対し、供給不安が高まる。天然ガスの急騰に続き、08年には原油も1バレル147ドル台の史上最高値を記録した。価格高騰が増産と技術開発を後押しする市場機能が働いた。それが「シェール革命」である。

 テキサス州の8月の原油生産はもっとも落ち込んだ07年2月の3倍、ノースダコタ州は94年2月の13倍に急増した。ただ、急角度で立ち上がる増産には天然ガスからの開発シフトが影響している。

 住友商事エネルギー本部長として米国でのシェール事業に取り組んだ住友商事総合研究所の高井裕之社長は「メタン成分のドライガス、エタンなどを含むウエットガスともに供給過剰で採算が悪化し、掘削リグは油田の開発に移動した」と話す。

 採算ラインは100万BTU(英熱量単位)4ドル前後のシェールガスに対し、シェールオイルは1バレル70ドルほどとされる。開発企業のヘッジ売りで長期先物の20年12月取引は80ドル台を割り込んだが、余裕はある。

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 原油生産の増え方を目の当たりにすれば天然ガスのような自給達成シナリオも頭に浮かぶものの、現状では否定的な見方が多い。

 高井社長は「資源量の豊富な天然ガスと異なり、米国でのシェールオイル開発は4~5年で頭打ちとなる」と指摘する。さらに、米国で生産が増えているのはWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油と同類の軽質で低硫黄の油種だ。

 「米国も精製設備の多くは中質油種に合わせてつくってあるため、国内生産が増えても一定量は輸入せざるをえない」(英石油情報会社、アーガス・メディアの三田真己日本代表)

 米国の原油相場は輸入や製品の輸出入を通じ国際市場とつながっている。「天然ガスと違い、米原油相場だけが急落するシナリオも考えにくい」(三田代表)。少なくとも相場が70ドル台を下回れば採算が悪化し、開発や生産は停滞する。

(編集委員 志田富雄)



一目均衡 リスクマネーはどこに 編集委員 西條都夫 2013/11/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資・財務面にある「一目均衡 リスクマネーはどこに 編集委員 西條都夫」です。





 アベノミクスの初期の成功もあって、景気は好調を持続し、企業収益も改善した。だが、表に見える数字はともかくとして、日本経済の実力は本当に上がったのか。新たな価値の創造に向けて、産業の構造転換は進むのだろうか。

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 例えば日米の企業社会をざっくり比較すると、伝統的な産業では日本が踏ん張っているが、新産業では米国に圧倒されている現実がある。前者は自動車に代表される製造業、後者の代表は新たな企業が次々に登場するIT産業である。

 米シリコンバレー在住のベンチャー投資家、伊佐山元さんによると、「フェイスブックやツイッターなど1995年以降に創業した米IT有力10社の株式時価総額は円換算で計100兆円近くに達した」という。一方トヨタ自動車やメガバンクで構成する日本の上位10社は90兆円に届かない。

 わずか20年足らずで、日本の大企業群にゆうに匹敵する新産業がゼロから立ち上がったのだ。

 日米の起業格差を生む理由は国民性から移民の多寡までいろいろあるが、大きな理由の一つはリスクマネーの厚みである。

 昨年4月に創業し、JR渋谷駅近くのアパートの一室に本社を置くベンチャー企業の「エイス」。一般の主婦や学生からネットでアイデアを募り、それを企業に橋渡しして商品開発につなげる会社だ。

 創業者の一人で、代表取締役の山田歩さん(25)は「創業資金は経済産業省からの1300万円の助成金を充てた。来年1月には2回目の調達を実施し、ベンチャー投資会社から3000万~5000万円を確保する」という。

 日本のベンチャーとしては順調な船出といえるが、米国はケタが違う。エイスにとって先行モデルでもあるクワーキーという会社がニューヨークにあり、同社は創業から4年間でおよそ90億円を調達した。「クワーキーに負けないよう頑張りたいが、おカネの面では勝負にならない」と山田さんは打ち明ける。

 日本発のマネーも外に向かいがち、という悲しい現実もある。武田薬品工業の長谷川閑史社長は「過去7~8年で武田を含めて日本の製薬大手は2兆円以上を創薬ベンチャーに投資した」というが、ほとんどは米国などの海外ベンチャーが対象だ。いい投資先がないからマネーが逃げるのか、資金がないから起業家が育たないのか、「鶏と卵」級の難問だが、現状を何とか打開する必要がある。

 「戦後の日本にはリスクマネーが潤沢にあった」という逆説がある。護送船団に守られた銀行は多少の投融資に失敗してもつぶれる心配がない。そこで思い切った産業資金の供給が可能になり、それが高度成長を支えたという見方である。

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 今さら護送船団の昔に逆戻りもできないが、リスクマネーの流れを太く大きくするには、公的年金資金の一部をベンチャー投資に振り向けるなど政府の役割や判断もカギを握るはずだ。



私鉄大手、「非鉄道」で稼ぐ 大型施設が寄与 2013/11/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の企業2面にある「私鉄大手、「非鉄道」で稼ぐ 大型施設が寄与」です。

鉄道各社の稼ぎ方が変節しています。交通網を整備し、商業施設を整え、ビジネスモデルに転換しています。





 私鉄大手の非鉄道事業の収益が好調だ。沿線の再開発で誕生した目玉施設が寄与する。東武鉄道は東京スカイツリー(東京・墨田)を巡る旅行商品を拡販し、レジャー事業の利益が17%増える。東京急行電鉄も昨春開業した渋谷ヒカリエ(東京・渋谷)のオフィス稼働率が上昇し、不動産事業が部門別で稼ぎ頭になる。堅調な内需の追い風を受け、収益源が一段と広がっている。

 東武は中堅旅行会社のトップツアー(東京・目黒)を2013年8月に買収。同社の海外の営業拠点を活用し、外国人に東京スカイツリーを巡る旅行商品の販売を拡大する。今期のレジャー事業の利益は17%増の124億円になりそうだ。

 東急の渋谷ヒカリエはオフィス稼働率が100%に上昇。同ビルの寄与で14年3月期の不動産事業の営業利益は13%増の303億円を見込む。三菱地所など不動産大手のビル事業は賃料回復が遅れ、収益は伸び悩んでいる。東急は渋谷駅前という好立地を生かし、比較的高い賃料でも高稼働を実現している。

 近畿日本鉄道は6月に傘下の百貨店「あべのハルカス近鉄本店」が一部開業。売上高は期初計画は下回るものの、前期比では流通事業の営業利益を27%増の58億円に押し上げる原動力になる。

 相鉄ホールディングスはビジネスホテル事業で開発を加速している。12年4月から1年半でホテル数を14店舗に倍増。ホテルを含む「その他事業」の今期の営業利益は約2.4倍を見込む。