バンコクポスト 中国、南シナ海巡り米に警告 リーダーの資質欠く 2014/07/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のアジアBiz面にある「バンコクポスト 中国、南シナ海巡り米に警告 リーダーの資質欠く」です。

タイ紙とは言え、中国の資質に真っ向から異を唱える記事として、非常に興味深いものがあります。





 中国は先週、南シナ海での対立に干渉しないよう米国に警告した。最近では類をみない事態だ。中国政府は声明で「特定の国がここ数年、非合法的に存在感を高め、軍備増強を進めているのは遺憾」と述べた。中国が世界で最も強力な国に警告する大胆さを示したこと自体に違和感がある。アジアでの力を誇示しようとしていることの表れだ。

 アジア各国は中国に地域のリーダーになる資格を与えたかを自問しなくてはならない。インフラ構築でもほかの投資でも、中国が手掛けてきたのは自国の利益になる案件や、ひも付きの支援だった。

 米国は欠点も多いが、アジア各国に大きな恩恵をもたらしてきた。米国は地域を安定させて経済成長や繁栄を実現させただけでなく、ノウハウも提供した。韓国、日本、タイ、フィリピン、シンガポールは軒並み米国がもたらした安定や技術の恩恵を受けている。

 中国の行動や政策はアジアにほとんど恩恵を与えていない。東南アジアに安定と調和をもたらすどころか、不和や分裂を生み、中小国を脅してもいる。

 中国ほど地域のリーダーとしての資質に欠ける国はない。中国は自国の利益しか念頭になく、すべての行動は自国政府と国民を利するのが目的だからだ。

 東南アジア各国に必要なのは、米国に混乱収拾を期待するのをやめることだ。フィリピンなど中国に反発している一部の国は、米国が10年前に撤退して以来、防衛費への投資を怠ってきた。米国が恒常的な財政難にあえいでいることを考えれば、米国の支援は望めず、現実的でもない。

 東南アジア各国はほかの国の支援に頼るのをやめ、勢力争いでアジアの支配者にのし上がった国に対し、結束して声を上げなくてはならない。

(2014年7月21日付 タイ・バンコクポスト紙)

グローバルオピニオン ナショナリズム克服を 元中国人民日報論説委員 馬立誠氏 2014/07/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「グローバルオピニオン ナショナリズム克服を 元中国人民日報論説委員 馬立誠氏」です。





 日本政府は歴史問題についてこれまで何度も謝罪してきた。日本の平和主義は評価すべきで、日本の軍国主義が復活することはない。中国は日本に対して冷静で理性的な態度で接しなければならない。憎しみに未来はない。

 中国にもハト派とタカ派がいる。ハト派は改革開放の鄧小平路線を継承している。タカ派はメディアで日本との戦争を唱えている。鄧小平路線がなお主流だが、ナショナリズムとポピュリズムが強まっている。中国の指導者には愛国的な考えを高めたい気持ちがある。

 国内総生産(GDP)で中国が日本を抜いたことで、中国人の一部は『自分たちは強くなった。もう日本を恐れる必要はない』と思うようになった。中国のテレビでは多くの反日ドラマが放映され、憎悪の連鎖につながっている。

 中国メディアの一部の記事は日本を刺激しており、よくない。ナショナリズムは団結力を高める良い面もあるが、理性的ではないナショナリズムは中国の国益にならないだけでなく、国際的な孤立につながってしまう。

 中国のナショナリズムに刺激され、日本でもナショナリズムが台頭している。中国たたきをすると売れる雑誌があると聞いている。中国と日本は競争し、刺激し合っている。戦えば共倒れになる。日中は互いに自制し、ナショナリズムを克服すべきだ。

 中国でも、このような考えを持つ人は多い。私の提唱した「対日新思考」を受け入れる人は多くなっている。交流を通じて摩擦を減らすべきだ。若い世代が古い世代の憎しみを超え、未来に向かって良い日中関係を築いてほしい。

 日中関係は長期的に見るべきだ。今の困難は一時的なもの。習近平政権の対日政策は良くなると思う。しかし懸案の解決は難しく、日中両国の努力が必要だ。1年から3年の長い時間が必要だろう。

 日本側には釣魚島(日本名・尖閣諸島)をめぐって係争があるという事実を認めてほしい。そのうえで問題を棚上げすべきだ。

 お互いに言い分を主張するだけではだめで、よい解決策を考えるべきだ。一触即発の状況にあり、衝突が生じてはいけない。まずは危機管理が必要で、協議していく必要がある。ともにメンツを保つ形で妥協はできないだろうか。

 安倍晋三首相が再び靖国神社を参拝しないよう望んでいる。日本の首相の靖国神社参拝には賛成しない。参拝すると問題はさらに深刻になってしまう。中国を刺激せず、互いに誤解を招かないようにしてほしい。

 日本の政治家が従軍慰安婦問題などでほかの国を刺激する発言をするのは残念だ。政治家が中国の国民感情を逆なでしており、発言を控えめにしてもらいたい。

(談)

Ma Li Cheng 中国青年報や人民日報の評論員(論説委員)を歴任。香港フェニックステレビを経て現在は北京で研究を続ける。専門は中国の社会変革。67歳。

岐路の大国インドネシア(下) ASEANの要、責任重く 統合・連携 逆風も 2014/07/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際1面にある「岐路の大国インドネシア(下) ASEANの要、責任重く 統合・連携 逆風も」です。





 さながら映画「十戒」のワンシーンのようだった。昨秋、ブルネイで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議。ユドヨノ大統領を先頭にインドネシア代表団が到着すると、談笑していた他国の参加者が我先に脇により、ロビーには通り道が大きく開いた。

 人口と国内総生産でASEANの4割を占めるインドネシアは、地域の盟主として一目も二目も置かれる要の存在だ。「庶民派」のジョコ・ウィドド氏は、ASEANのリーダーという大役も担う。国政経験ゼロで手腕が未知数なだけに不安はくすぶる。

領有権争い静観

 ASEANは今、求心力の維持に2つの課題を抱える。一つは経済統合。ASEAN経済共同体の発足は2015年末に迫るが、関税削減以外の分野の歩みは遅い。

 分業を通じてモノのネットワークをつくり上げ、成長の原動力としてきたASEAN。規制緩和でサービスや金融の垣根を取り払い、ヒトとカネの流れを融合するのが次のステップになる。ジョコ氏は「銀行への外資規制強化」という公約を掲げる。大国が統合深化にブレーキをかければ、後発国に「開国」を避ける口実を与えてしまう。

 もう一つの課題は、中国と加盟国の南シナ海を巡る領有権紛争だ。

 「外国同士の問題だ。深く関与すべきではない」。6月下旬の討論会で、南シナ海問題について問われたジョコ氏はベトナム・フィリピンと中国の争いから距離を置く姿勢をみせた。ASEANは5月の首脳会議で「深刻な懸念」を表明する共同声明をまとめたばかり。盟主が日和見に逆戻りすれば、中国の覇権主義をけん制する連携が揺らぎかねない。

 中国は早くも動いている。ジョコ氏の当選から日も浅い24日。インドネシア国防省の一室では、プルノモ国防相と中国軍制服組トップの范長竜・共産党中央軍事委員会副主席が向かい合っていた。「南・東シナ海問題で中国の立場に理解を求められた」とプルノモ氏は明かす。

宗教対立各地で

 域内外から働く遠心力にどう抗していくか。今回の大統領選では、インドネシア一国でみても、分断の火種がくすぶっていることがほの見えた。

 「ジョコ氏はイスラム教徒ではなく、中華系のキリスト教信者だ」。対立陣営は終盤戦、ジョコ氏の支持層切り崩しを狙い、こんな事実無根の情報を流した。インドネシアは国民の約9割が信仰するイスラム教を国教とはしていない。宗教、種族、言語を超えた「多様性の中の統一」を国是とする。宗教や民族の違いに着目したネガティブキャンペーンが追い上げに一役買ってしまったことに、戸惑いが広がる。

 一歩引いてみれば、隣国マレーシアではイスラム教徒を優遇する政策が強まり、ミャンマーでも多数派の仏教徒と少数派のイスラム教徒の対立が再燃している。

 激戦となった大統領選が残した対立の傷を癒やし、国内をまとめ上げるのがジョコ氏の最初の仕事になる。その先には、排他主義を乗り越え、ASEANという6億人の巨大なモザイクをまとめ上げる責務が待つ。

(シンガポール=吉田渉)

真相深層 日本、木材大国への道 成長戦略に「循環利用」、供給増で世界一安い 2014/07/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「真相深層 日本、木材大国への道 成長戦略に「循環利用」、供給増で世界一安い」です。





 政府の成長戦略の「日本再興戦略」改訂版では、目玉政策の陰に埋もれながらも「豊富な森林資源の循環利用」が打ち出された。戦後の植林材が伐採期を迎え、国産材の供給圧力が高まっている。外国材が中国の買いなどで値上がりし、国産材が世界一安くなる追い風も吹いている。木材業界は相次ぎ国産材の大型工場を建設。“眠れる資源”の活用に動き始めた。

すてきナイスは約15億円かけ徳島製材工場を建設(徳島県小松島市)

 徳島県松茂町の徳島阿波おどり空港から車で南へ1時間。小松島港近くに来るとヒノキの香りが漂ってきた。窓の外には巨大な倉庫のような工場があり奥に丸太がうずたかく積まれていた。すてきナイスグループが約15億円かけて建設したナイスグループ徳島製材工場(徳島県小松島市)だ。5月半ばに操業を始め今年度は柱やハリなど2万5200立方メートル(丸太換算)の生産を見込む。

 ナイスの鈴木淳常務執行役員は「当社は住宅資材の卸中心だったが製造分野に進出した。徳島には社有林もあり植林も行っている。循環型林業を目指したい」と話す。

 中国木材(広島県呉市)は宮崎県日向市に約40億円を投じ製材工場を建設中だ。8月に試験運転を始め1年で20万立方メートル生産する。同社は米国産丸太の製材最大手だが今後は国産材を強化する。

 合板でもホクヨープライウッド(東京・文京)などグループ4社が岩手県北上市に工場を建設する。投資額は約68億円で来年2月に稼働の予定だ。ノダも来年初めの稼働を目指し静岡県富士市に約55億円を投じ工場を建設している。行政の補助金を活用し国産材を使う点で共通する。

■半世紀で2.6倍に

 今なぜ国産材なのか。戦後の植林材が伐採期に入り森林蓄積量(2012年)は49億立方メートルと半世紀で2.6倍に急増した。政府は木材自給率(13年は28.6%)を20年に50%にする目標だ。成長戦略の具体策でも板材を直交するように張り合わせたパネルなどの普及を促した。

 価格面での魅力も高まっている。中国の買い付けや円安・ドル高で外国産丸太価格が上昇し国産に割安感が強まっている。農林水産統計によると、製材用の6月の全国価格は米ツガ丸太で1立方メートル2万5100円だ。国産の杉丸太は1万4000円と44%安い。市場では国産材は「世界一安い」といわれている。

 外国材はロシア産や東南アジア産で輸出規制が強まるなど供給不安が起きやすい難点もある。

 ただ、価格が安すぎると弊害も出てくる。森林所有者で組織する全国森林組合連合会の肱黒直次代表理事専務は「丸太価格が上昇しないと間伐、林道整備など造林コストが賄えない」と訴える。売る側と買う側の双方が納得する価格形成への取り組みも欠かせない。

 今後の課題は需要の開拓だ。日本は人口減で住宅着工の減少が確実視されているだけに、需要を創出しないと製品がさばけない。合板業界は輸入品のシェアが高いコンクリート型枠用やフローリング台板用の販売を強化し始めた。しかし、輸入品の牙城を切り崩すには時間がかかる。

 需要創出で最大のカギを握るのが輸出だ。すでに丸太輸出は昨年、前年比2.3倍の26万4700立方メートルと過去最高に達した。しかし、産業育成や雇用確保の観点から製材品の輸出をどう増やすかがポイントになる。

■韓国で住宅販売

 すてきナイスグループは昨年末から韓国で日本の伝統工法で建てる木造住宅の販売を開始し4棟を契約した。住宅に使う製材品を日本から輸出する。アジアを中心に住宅を拡販し製材品輸出につなげる考え。合板でもホクヨープライウッドなどの新工場が輸出を視野に入れている。

 中国木材も「やがて来る国産製材品の輸出時代はコスト競争力の差が勝敗を決める。世界と競争していく覚悟が必要」(堀川保幸社長)という。

 日本は国土の7割弱が森林。競争力を強化できれば、資源小国の日本が木材資源大国に生まれ変わる日も夢ではない。(編集委員 浜部貴司)

岐路の大国インドネシア(中) インフラ整備、財源が壁 各種補助金削減、問われる指導力 2014/07/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際2面にある「岐路の大国インドネシア(中) インフラ整備、財源が壁 各種補助金削減、問われる指導力」です。





 「今でも港から工場までの約50キロに2時間半かかる。5年後には片道9時間まで渋滞が悪化しかねない」。インドネシアの首都ジャカルタの東方に工場を構えるトヨタ自動車。同工場の幹部は、インフラ不足で将来、操業に支障が出かねないと危機感を募らせる。

激しく渋滞するジャカルタの市街地(6月)

慢性的な渋滞

 インドネシアの新車販売台数はこの10年で3倍に膨らみ、首都を走る車は毎年1割ほど増えているが、「道路容量はほぼ横ばい」(交通当局)。慢性的な渋滞で中心部では平均時速が10キロメートルを切る。世界銀行の物流効率調査でインドネシアは世界53位。タイは35位、マレーシアは25位だ。

 2004年発足のユドヨノ政権のもと、実質国内総生産は10年で1.8倍に膨らんだ。成長に見合ったインフラ整備が急務で、次期大統領のジョコ・ウィドド氏は2000キロメートルの道路や港湾・空港の整備に向け、「土地収用や予算消化を加速させる」と意気込む。

 インフラ不足を解消できるかは政府の体質改善にかかる。財源確保には歳出の約2割を占める燃料補助金など各種補助金の削減は不可欠だ。インフラ関連事業では汚職も後を絶たない。既得権者を抑え込むリーダーシップも求められる。

外資導入に暗雲

 成長のもう一つのカギとなる「開国」には暗雲が漂う。

 6月中旬にジャカルタで開かれた大統領選の候補者討論会。テーマが15年末予定の東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体発足に及ぶと、ジョコ氏は「外資への参入障壁は当然」「認可は国内企業を優先」と保護主義的発言を連発した。現政権が導入した未加工のニッケル鉱石などの禁輸も継承する見通しだ。

 内向き志向は国内産業の競争力への不安が背景にある。「インドネシア製品の69%はASEAN市場で競争力を持たない」。産業省は最近、約4000の品目の輸出実績などを点検してこんな調査をまとめた。産業省高官は「素材や燃料の輸入依存が高く、コスト効率が悪い」と嘆く。

 輸出額に占める鉱物・油脂資源の割合は足元で約5割。02年の約3割から拡大の一途だ。競争力のある製造業の育成が遅れ、豊富な天然資源への依存が強まる構図だ。

 12年から、財政・経常両面の「双子の赤字」が続く。補助金頼みで内需が背伸びをし、輸出が振興できなければ、海外マネー頼みの構造は続く。通貨が投機筋の標的になるリスクはくすぶる。

 ASEAN最大の2億5千万人の人口の約半数が30歳未満で、働き手となる生産年齢人口が多数を占める「人口ボーナス期」が30年ごろまで続く。13年の国際協力銀行(JBIC)のアンケートでは製造業の有望な投資先でインドネシアは初めて首位に立った。

 インフラを整え、規制緩和と外資導入を進める――。人口大国の潜在力を生かす処方箋は明確だ。痛みを伴う改革を進められるかは、ジョコ氏の双肩にかかる。

(ジャカルタ=渡辺禎央)

岐路の大国インドネシア(上) 脱エリート支配に期待感 「ジョコ流」改革 ばらまき懸念 2014/07/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際1面にある「岐路の大国インドネシア(上) 脱エリート支配に期待感 「ジョコ流」改革 ばらまき懸念」です。

インドネシアの未来を占う記事です。





 インドネシアで10年ぶりに大統領が交代する。地方自治体トップから躍り出るのは「ジョコウィ」の愛称で親しまれるジョコ・ウィドド氏。異例の庶民派には汚職や「ばらまき」の削減と経済成長加速の期待がかかる。2億5000万人を束ねて改革を実行できるか。東南アジア諸国連合(ASEAN)の大国の行方はアジアの未来も左右する。

 「ありがとう。勝利は民衆との連携のたまものだ」。当選決定から一夜明けた23日。都心の公園で開かれた祝勝集会に姿をみせたジョコ氏を、支持者らがもみくちゃにした。肉声を聞こうと足を運んだデウィさん(35)は「ジョコウィなら庶民の生活をよくしてくれる」と興奮気味に話す。終盤戦でプラボウォ・スビアント氏に追い上げられたものの、大衆からの人気はなお抜群だ。

 株式市場でもこの日、ジャカルタ総合指数が一時、年初来高値を突破。投資家の支持の高さも印象付けた。

清廉さに支持

 1945年の独立以来、インドネシアでは、スカルノ氏やスハルト氏に代表される軍や良家出身者のエリート支配が続いてきた。ユドヨノ現大統領やプラボウォ氏も元軍高官。家業の家具販売を手がけていたジョコ氏は、全く新しいタイプのリーダーになる。国民が新指導者に求めたのはクリーンさだ。

 非政府組織(NGO)トランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数でインドネシアは177カ国・地域の中で114位とASEAN主要国では最悪。経済安定で人気の高かった現ユドヨノ政権も、幹部の相次ぐ汚職の発覚で支持を失っている。汚職は外資誘致にもマイナスだ。

 地方自治体トップ時代の実績から改革の担い手として期待が集まる点は、インドのモディ首相とも重なる。ジョコ氏は4月の総選挙のころから「党利で閣僚の席をわけることはしない」と、一貫して実務型の政権作りを宣言している。

 だが、国政の経験のないジョコ氏の実行力は未知数。大統領選が残したしこりや、少数政党の寄り合い所帯となる新体制も懸念材料だ。「脱・エリート支配」の看板を疑問視する声もある。

 「ジョコ氏を当選させることに成功した」。当選が決まった22日夕。第一声を求めて詰めかけたメディアの前で「勝利宣言」に涙声を震わせたのは、ジョコ氏が属する闘争民主党の党首、メガワティ前大統領だった。ジョコ氏は隣で静かに立っているだけだった。

 ジョコウィはメガワティの操り人形――。選挙戦で対立陣営が繰り返した中傷だ。メガワティ氏は自身の出馬に意欲的だったとされるが、昨年末の世論調査では支持率はわずか6%。人気者のジョコ氏を担ぎ、政権奪取後はメガワティ氏が主導権を握る。こんなシナリオがささやかれる。

 ただでさえ世界4位の2億5000万人の人口と多様な宗教や部族を抱えるインドネシア社会をまとめあげるのは容易ではない。経済成長のなかでも物価高で豊かさを実感できない国民の不満もくすぶる。

 「ガソリン代も駐車料も削れるものは削る」。会社員のダニさん(36)は最近、自家用車からバス通勤に切り替えた。1200万ルピア(約10万円)の月給は裕福な部類に入る。だが、インフレが進む中で2番目の子供も生まれ「毎週末の楽しみだった外食も月1回に減らした」とこぼす。

 インドネシアは人口の大半が低所得層にとどまるうえ、近年、所得格差は一段と開いている。格差の指標の「ジニ係数」は2013年時点で0.4強とかつての0.3台から上昇。プラボウォ氏がジニ係数の引き下げを公約に掲げたほど格差是正への関心は高い。

「6%成長」へ

 物価高や格差への不満は、「ばらまき」を求める声に直結する。燃料補助金の削減を掲げるジョコ氏も、選挙対策で農村や貧困家庭への現金支給を打ち出した。財源を浪費すれば、課題のインフラ整備に割ける資金も細る。金融分野や資源、労働市場で保護主義が強まる恐れもある。

 経済政策運営の混乱で、インドネシアの成長率は5%台に低迷気味。選挙戦で分断された世論をまとめ、国内の不満を抑えながら痛みを伴う改革にも取り組み、経済を巡航速度の「6%成長」に戻す――。人気者の新大統領が歩むべき道は、細く、険しい。

(ジャカルタ=渡辺禎央)

眠りの通説 根拠に「?」 8時間睡眠で健康・90分の倍数で・肌には10時~2時… 2014/07/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の健康面にある「眠りの通説 根拠に「?」 8時間睡眠で健康・90分の倍数で・肌には10時~2時…」です。

ざっとまとめてみると、次のとおりだそうです。

睡眠時間は8時間がよい
個人差が大きいので数字にこだわらない方がよい
4時間睡眠でも仮眠などの工夫をすれば足りる
仮眠の硬化は一時的。全身疾患のリスクが上昇する
肌のゴールデンタイムは午後10時から午前2時
成長ホルモンの分泌は時刻とは関係ない
90分の倍数で起きればすっきりする
眠りの周期は同じ人でも日によってまちまち
長く寝る分には問題ない
床にいる時間が長いと、眠りの質が落ちる例もある
子供の頃よく寝れば身長が伸びる
子供の身長は親の身長に関係する例が多い
春先は眠気が取れない
日照時間が伸びてくるのでむしろ眠気は減る
昼ご飯を食べると眠くなる
食事より体内時計との関係が疑われる





 「睡眠時間は8時間がよい」「90分の倍数で起きればすっきりする」「4時間睡眠でも工夫すれば足りる」。睡眠に関する様々な言説を信じている人もいるかもしれない。これらはどれだけ科学的根拠があるのか。最近の科学研究の結果から、根拠が薄弱なケースも多いことが分かってきた。知識をもとに何が正しいかを見極めることが大切だ。

 子供の頃、親や学校の先生などに「1日8時間は寝ましょう」と言われた経験のある人も多いだろう。しかし「8時間に十分な科学的根拠はない」と国立精神・神経医療研究センターの三島和夫部長は指摘する。

 米国で実施された実験がある。多くの人を集めて睡眠時間を通常より短くすると、日を重ねるごとに作業ミスが増えた。例えば、4時間睡眠を2週間続けると極端に作業効率が落ちた。

週末の時間に着目

 専門家の間では「適切な睡眠時間は個人差や年齢差があり、一律に8時間と決められない」というのが共通認識。日本の成人の睡眠時間は6時間以上8時間未満が多く、通常は年を重ねるごとに時間が短くなる。

 個人の適切な睡眠時間について三島部長は「週末に眠る時間がどれほど長くなったかに着目するとよい」と助言する。平日、寝不足気味だと週末の睡眠時間は長くなる傾向がある。週末も平日とほぼ同じ時間で収まっていれば、寝不足ではないと考えてよいという。

 「寝だめ」の効果も限定的だ。北里大学の田中克俊教授は「睡眠が必要にならないと深く眠れない」と話す。ただ平日の睡眠不足を、週末に長く寝ることで解消する効果は期待できる。日光を浴びないと生体のリズムを作る体内時計がずれやすくなる。「土曜日はゆっくり寝ても、日曜は朝8~9時ごろに起きて日光を浴びるのがよい」(田中教授)

 一方、仕事や勉学に打ち込むため、睡眠時間を削って対処したいと考える人も多いはずだ。入社3年目の20代のA子さんは仕事の幅を広げようと資格の勉強を始めた。勉強時間の捻出には睡眠時間を削るのが手っ取り早いと考え、寝具や食べ物を工夫。日中には適度に仮眠を取る方法で、夜中の寝る時間を4時間にとどめようと試みた。しかし、昼間に強い眠気に襲われ、長続きしなかったという。

 三島部長は「睡眠時間を削ってうまくいったという根拠ある報告はない」と話す。短時間の仮眠は一時的に眠気を取るのに役立つ。短い昼寝で頭がスッキリするというのはその一例だ。ただ1日を通じて作業効率の低下を防げるかどうか。4時間睡眠は誰にも当てはまる方法ではなさそうだ。また「睡眠不足が続くと体の負担になる。強い眠気に襲われるだけでなく高血圧や糖尿病、うつ病などになりやすくなる」(三島部長)。

 「肌のゴールデンタイム」はどうだろうか。午後10時~午前2時の間に寝ていないと、体の傷を修復する成長ホルモンが出にくくなり肌が荒れるという考え方だ。成長ホルモンは眠りはじめの2~3時間の深い眠りのときに多く出るが、「時間帯と成長ホルモン分泌を結びつけるべきではない」と内山真日本大学主任教授は指摘する。成長ホルモンが肌荒れを癒やすというのも根拠が薄いという。

 「寝る子は育つ」という言葉もある。これについても「丈夫に育つという意味で、成長ホルモンの作用で身長が高くなるという意味ではない」(内山主任教授)。

 睡眠時は「レム」と「ノンレム」と呼ぶ状態が交互にやってくるというのを聞いたことがあるだろう。レムの眠りは浅く、ノンレムでは熟睡している。周期は約90分で、レム睡眠のときの方がすっきり起きられるとの考えに基づき「睡眠時間は90分の倍数がよい」といわれるようになった。

「1日持つかは別」

 しかし、これも肯定するだけの科学的根拠はないという。内山主任教授によると眠りの周期は平均100分で、同じ人でも日によって微妙にずれる。また起きる時刻に近づけば自然と眠りが浅くなり、いつ起きても寝起きのよさはあまり変わらない。すっきり起きるのはよいことだが「その状態が1日中続くかは別」(内山主任教授)。睡眠の絶対量が足りないと、結局どこかで集中力が落ちる。

 眠りに関する様々な情報が飛び交っており、一見科学的だが根拠が不十分な言説や商品も多い。見極めが重要だ。厚生労働省は今春、11年ぶりに睡眠指針を改め最新の科学的知見を盛り込んだ。一度目を通してみてもよいだろう。(岩井淳哉)

《本》◆眠りについて詳しく知るには 「8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識」(川端裕人、三島和夫著、日経BP社)《インターネット》◆厚生労働省が今年3月に改定 「健康づくりのための睡眠指針2014」(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000042749.html)

がん社会を診る サプリ大量消費に警鐘 中川 恵一 2014/07/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の健康面にある「がん社会を診る サプリ大量消費に警鐘 中川 恵一」です。





 野菜や果物、大豆、魚などの食材はがんを防ぐ作用がありますが、食の欧米化が進む日本では、その摂取量が年々減少しています。では、サプリメント(栄養補助食品)で補えばよいのでしょうか。実際、厚生労働省が2005年にがん患者3100人を対象に実施した調査では、4割強がサプリメントを使っているという結果が出ています。

 健康志向の高まりを背景に、がん患者に限らず健康食品の利用は広がっています。サプリメントを含む健康食品の市場規模は、2兆円近くに達するとの数字もあります。日本も「サプリメント大国」の米国に匹敵する大量消費国といえるでしょう。

 昨年末、米ジョンズ・ホプキンス大学の医師らが発表した研究が話題となりました。ビタミンやミネラルなどのサプリメントに健康増進効果はなく、十分な栄養を取っている人にはむしろ害になる可能性があるという内容です。

 たとえば、野菜は食道がんなどを予防する効果があります。しかし、緑黄色野菜に多く含まれるベータカロテンをサプリメントとして摂取するとかえって肺がんが増えることが分かっています。

 ピーナツ、アーモンド、クルミなどのナッツ類を多く食べると死亡率が下がるというデータがあります。これも、ナッツ類に多く含まれるビタミンEのサプリメントを取りすぎると、逆に死亡率が上昇します。

 ミネラルの一種であるセレンでも、食事を通して十分にセレンを摂取している人がセレンのサプリメントを摂取すると、悪性度の高い前立腺がんのリスクがかえって上昇することが分かっています。

 健康食品は通常、医薬品と異なり効能や効果を表示することはできませんから、世にいう「抗がん効果」をうたったサプリメントなどナンセンスです。副作用の可能性や高い費用などの問題もあります。とりわけ、特定の成分が過剰になると健康を損なう危険性があることを理解いただきたいと思います。

 そもそも、世界中の巨大製薬会社が抗がん剤開発にしのぎを削っていますが、有効な新薬はめったに得られるものではありません。健康食品ならなおさらです。同じ食品なら、おいしい食事にお金をかけた方がずっと得だと思います。(東京大学病院准教授)

人事の経済学(4)「多様な個人」生かす組織を 竹内規彦 早稲田大学准教授 2014/08/15 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済教室面にある「経済教室 人事の経済学(4)「多様な個人」生かす組織を 竹内規彦 早稲田大学准教授」です。





 「○○さんのキャリアは成功しているよね。なぜなら○○さんは……」。こんな会話を耳にしたとする。この後のフレーズを読者の方々はどのように考えるだろうか。「同期で一番に部長に昇進したのだから」かもしれないし、「専門分野で第一人者として評価されているよね」と想像する人もいるだろう。

 少し違った見方をして「とにかく豊富なスキル(技能)や人脈を形成して活躍している」と答える人もいれば、「やりがいのある仕事を次々と見つけ、生き生きしている」と考える人もいる。

 このように人によって「キャリアの成功」の内容に差があるのは、その捉え方が個々人の価値観と密接に関わっており、おのおのが様々な形で定義していることに由来している。仕事に対する意識や価値観が多様化する今日、人の数だけ定義があるといっても過言ではないかもしれない。

 この点について、今年8月初旬に米フィラデルフィアで開催された経営学の世界的な権威である米国経営学会の国際会議にて、スイスのIMDビジネススクールの研究グループが興味深い報告をしていた。多様化する個人のキャリアに対する考え方を分類可能な形で整理すると、大きく4つに分けられるという。

 第1は「階層的キャリア(linear career)」である。ピラミッド型の組織構造のなかで自身の相対的な地位を高め、責任の範囲を拡大し、影響力を高めることを志す。この志向が強い人は、いかに着実に組織や社会の「タテ」の階段を上っていくかがキャリア成功を判断する基準となる。

 第2は「専門的キャリア(expert career)」である。自身の「天職」といえる仕事領域を見つけ出し、そのなかでより高い専門性(技術や能力)を追求する。これを重視する人は、自身の仕事の専門性をどの程度高められたかによって個人のキャリア成功を評価する傾向にある。

 第3は「スパイラル・キャリア(spiral career)」である。比較的早い段階で経験した自身の仕事の領域を核にしつつも、その後5~10年程度ごとに新たな領域に挑戦し、より幅広いスキルや知識、能力を形成する。まさに中心から周辺へと同心円状に広がっていく「らせん状」に、キャリアを形成する考え方といえる。この考えを持つ人は、歳月を経て得られるスキルや知識などの広がりと、そこから得られる自己の連続した成長感を大切にする。

 第4は「変動的キャリア(transitory career)」と呼ばれ、近年よくみられるという。自身にとって新しいことや変化とは何かを重視し、新しい経験を求め、前向きに仕事領域の変更や転職を繰り返す考え方である。前述のスパイラル・キャリアとの大きな違いは、前職や以前の職務経験とその後に、秩序だった連続性や一貫性を求めない点であるという。

 1つの仕事領域や組織に従事する期間も平均すると2~4年程度と必ずしも長くない。この考えを重視する人は、仕事を通じてどれだけ斬新で夢中になれる経験ができたかによって、キャリアの成功を捉えるという。

 以下では、こうした類型を日本の状況にあてはめて考えてみる。まず第1の階層的キャリアの考え方は、終身雇用や年功序列が一般的に受け入れられていたバブル経済崩壊ごろまでの日本の企業社会で、ある程度共有度の高いキャリア成功の見方であっただろう。

 第2の専門的キャリアは、バブル経済崩壊後の企業における組織再編時に強調された考え方であった。例えば、トヨタ自動車は1990年代後半から2000年初頭にかけて「PRO21」と呼ぶ大規模な人事改革を行ったが、この標語は人材のプロフェッショナル化を追求する人事方針を意味していた。これを機に、トヨタは原則として従業員の採用時に希望の配属先を確認し、入社後10年間は希望の配属先で部門の専門性を養う人材育成に変更した。

 多くの企業でマネジャー職とスタッフ(専門)職とのコース別人事が導入されたのもこの時期だった。20世紀の変わり目に「新しいキャリア」といえば、ここでいう専門的キャリアが中心だった。

 第3のスパイラル・キャリアも、基本的な発想は専門的キャリアとさほど遠くはない。最近でも、求められる人材像の一つとして「T字型人材(T字の縦棒に相当するコアの領域を持ちつつも、横棒に相当するスキルや知識の幅をもつ人材)」という言葉がよく使われるが、この考え方はスパイラル・キャリアと整合する部分も多い。

 第4の変動的キャリア、すなわち個人が自身のやりがいや新たな経験の追求を優先し、積極的に仕事領域の変更や転職を繰り返す考え方は、現段階では日本で浸透してはいない。しかしながら、日本でこの考え方を受け入れる心理的な基盤が必ずしもないわけではない。

 特に、長年続いた深刻な経済状況の後に訪れた最近の景況感の回復期において、若年層を中心にこのキャリア観が広まる可能性がある。

 この点について、興味深い調査結果がある。日本生産性本部と日本経済青年協議会が今年6月にまとめた新入社員の意識調査結果によると、この10年間で社内での昇進志向と専門職志向がともに低下傾向にあり、なかでも今春入社した新入社員の専門職志向は過去最低の水準だという。

 また生産性本部が昨年秋に実施した新入社員の意識調査では「1社に最低2~3年勤めれば転職してもいい」と考えている人の割合と「自分のキャリアプランに反する仕事をがまんして続けるのは無意味だ」と回答した割合はともに4割を超え、過去最高を記録した。もちろん、このデータだけで判断するのは早計だが、変動的キャリアの考え方が、近い将来「クールなキャリア」として台頭する可能性は必ずしもゼロではない。

 この状況を「モンスター社員」が増えることへの危機や憂慮として企業側がネガティブに受け止めるのは、必ずしも得策ではないと筆者は考える。むしろ、キャリアの担い手の中心が組織から個人へと移行しつつあることの表れとして冷静に捉えるべきだろう。

 では、企業はいかなる対応が求められるか。つまるところ、個人のキャリア観の多様性を尊重しつつ、組織への貢献を引き出す仕組みを考えていく必要がある。ここでは具体的に2点指摘する。

 第1に、企業は組織が進むべき方向性と求められる人材像を明確にし、社内外に積極的に発信する必要がある。これは、個人が自身のキャリアプランに合った組織の選択精度を高め、個人と組織との間に生じるキャリア上のミスフィット(不適合)を予防することにつながる。実際に、キャリアの一致度が高いと感じる従業員ほど、モチベーションや生産性が高まる点が、最近の研究で確認されている。

 第2に、新規参入者(学卒・中途含む)に対する職場レベルでの対応力強化が求められる。様々なキャリア観を持つ多様な個人が「組織の一員」となるためには、職場の内部者(上司・同僚)の役割が重要であることが最近の研究で数多く報告されている。特に、新規参入者「本人」が、サポートされていると知覚すると、会社の理念や価値観の受け入れが進むことが明らかとなっている。人心を統合するリーダーの育成が、これまで以上に求められている。

=この項おわり

<ポイント>○海外では一貫性求めないキャリア観が浸透○日本でも新入社員の意識変化に普及の芽○企業は方向性・人材像を発信し不適合防げ

 たけうち・のりひこ 72年生まれ。名大博士。専門は組織行動学、人材マネジメント論