2014/08/31 本日の日本経済新聞より 「がん社会を診る 発症リスク下げるには」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞14版の17面(健康)にある「がん社会を診る 発症リスク下げるには」です。





 今回は、これまで述べてきた発がんリスクを下げるコツを整理してみます。一番大事な禁煙ですが、受動喫煙にも注意が必要です。お酒が「百薬の長」なのは日本酒換算で1合までで、顔が赤くなる人はとくに要注意。飲みながらの喫煙は自殺行為といえます。

 子宮頸(けい)がんの原因は性交渉に伴うヒトパピローマウイルスの感染です。このウイルスに対するワクチンが開発されており、接種することで発がんリスクを3割近くまで下げることができます。

  胃がんはヘリコバクター・ピロリ菌に感染していなければ、発症確率はほとんどありません。肝炎ウイルスの感染がなければ肝臓がんができる確率は約2割に下がります。

 なお、ピロリ菌には日本人の約半数、高齢者に限ると8割近くが感染していますが、胃がんの年間発症数は約13万人です。ヒトパピローマウイルスも女性の約7割が感染経験を持ちますが、年間の発症数は1万人にもなりません。

 ピロリ菌やヒトパピローマウイルスに感染している人が、塩分過多になったり、喫煙したりする場合にまれにがんができるのですが、感染がなければ、まずがんは発症しません。各自が感染の有無を知っておくことが大切で、たとえば、ピロリ菌感染がない人が毎年、内視鏡検査を受ける必要はないわけです。

 がんを防ぐ食事のポイントはバランス良く食べることです。とくに、ブロッコリーなどアブラナ科の野菜、大豆、青魚などはがん予防に有効です。しかし、日本人の摂取量は減り続けている一方、肉の摂取量が過去50年で10倍近く増えており、乳がん、前立腺がんの急増に象徴される「がんの欧米化」が進んでいます。

 運動はがん予防の決め手で、その量が多いほど発がんリスクを減らします。反対に、糖尿病はがんを2割も増やしますから、太りすぎないことが大事です。しかし、過度なダイエットによるやせすぎもがんを増やしますから問題です。なお、授乳は乳がん予防に非常に有効です。サプリメントはお薦めできませんが、コーヒーや緑茶はがんの予防に有効です。

 ただ、生活習慣を改善しても発がんリスクは3分の1程度までしか下がりません。早期発見のためのがん検診は欠かせません。

(東京大学病院准教授)

2014/08/22 本日の日本経済新聞より「大機小機 中国の不動産バブル」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「中国の不動産バブル」です。





 中国・上海では「不動産を持たない男性は女性が見向きもせず結婚できない」とまで言われ、一族が資金を出して適齢期の男子に高価な不動産を購入するのが一般化していた。こうした習慣もあり、平均所得に対する中国大都市圏の不動産価格は、1980年代末の日本のバブル経済期と比較しても大幅に高い。

 こうした中で中国の不動産市況が悪化に転じる可能性が強まっている。中国社会の安定は、不動産を手に入れた相対的に富裕な層が満足することで維持されてきた面がある。不動産バブルの崩壊は、中国の政治や経済情勢を不安定にする要因となり得る。

 日本のバブル崩壊の過程を改めて検証することで、中国の不動産市況の行く末を占ってみよう。

 日本の戦後から80年代半ばまでの経験では、名目経済成長率は長期の市場金利を恒常的に上回っていた。不動産の賃貸収入はおおむね名目成長率に比例する傾向にある。土地神話が健在だった80年代までは、無理をしてでも借り入れた資金で不動産を購入するのが有利になる計算だった。

 たとえ利払い費用が賃貸収入を上回る赤字であっても、将来、不動産を高値で転売できれば利益を得られる。期間損益が赤字だったワンルームマンション投資が人気を集めたのは、こうした背景がある。しかし、バブルの崩壊で、バブルのピークで不動産を転売できた一握りの投資家以外は、巨額の含み損を抱える結果になった。

 日本で不動産バブルが崩壊したのは、名目成長率が金利を上回る状況が過ぎ去ったからだ。預金金利規制が廃止され、海外からの技術導入や人口ボーナスによる高度成長が終わりに近づき、不動産価格は賃貸収入に見合う水準まで低下した。

 中国経済の現状も日本のバブル崩壊期に似てきている。金利規制が弱まり、人為的な低金利政策が転換されつつあると同時に、中国の高度成長期も終焉(しゅうえん)に近づいている。しばらくは、技術のキャッチアップによる中成長が可能ではあろうが、「どんなに無理をして借金をしても不動産を購入すれば必ずもうかる」という状況は終わりつつある。

 日本の経験と照らし合わせれば、中国の不動産価格は、賃貸収入の見通しと市場金利で計算される合理的な水準に近づくと予想される。

(山河)

2014/08/16 本日の日本経済新聞より「大機小機 すべては労働市場改革から」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「すべては労働市場改革から」です。





 人手不足を背景にサービス業などでは、パートの時給引き上げや非正規社員の正社員への転換の動きが広がっている。企業が人手不足を恒常的なものとみなし、人材確保に走り始めたことの表れである。デフレ脱却の展望が開け始めた日本で、「人手不足経済」への構造変化が進行している。

 この構造変化の下で、いかにして経済を活性化させ、好循環を持続するかが今後の課題である。課題の克服にあたっては、特に3つの視点が重要になろう。

 第1は、人手不足が成長のボトルネックとならないよう、成熟産業から成長産業への労働移動を円滑化するなど労働市場の非効率性やゆがみを是正すること。第2は女性、若者、高齢者の労働市場へのさらなる参画を促し、彼らが十分に力を発揮できる環境を整備すること。そして第3に、労働力人口の減少による成長力の低下をカバーするため、労働生産性の上昇を促す社会構造をつくることである。

 加えて、日本は少子化対策への取り組みも重要な政策課題である。

 これらの政策課題について具体的に考えてみよう。まず労働市場のゆがみを是正するためには、企業内失業の解消に取り組む一方、正社員への道を閉ざされたフリーターや元気で働く意欲を持っているシニア層に円滑な雇用機会を提供する必要がある。

 また生産性を引き上げるためには、労働時間の長さで成果を測る仕組みを変える必要がある。女性の就業率引き上げと出生率引き上げを両立させるためには、政府・企業の子育て層への支援を強化するとともに、正社員である男性の働き方も変えなければならない。ワークライフバランスの実現には、長時間労働の是正や休暇取得の促進が不可欠である。

 これらを進めていくには、従来型の終身雇用・年功型の賃金体系を見直し、就社型の雇用形態を転換するなど、雇用慣行も含めて労働市場全体を見渡す改革の中に位置付けていく必要がある。これまでの労働市場改革は解雇規制の緩和など部分的な改革議論が先行したため、労使の対立を招き、なかなか進展しなかった面もある。

 「人手不足経済」への構造変化に直面する今こそ、労働市場改革を進めるチャンスであることを労使双方が認識すべきである。

(追分)

2014/08/14 本日の日本経済新聞より「エルドアン大統領のトルコ(下) 遠のく「地域の盟主」 外交迷走で関係悪化」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際1面にある「エルドアン大統領のトルコ(下) 遠のく「地域の盟主」 外交迷走で関係悪化」です。





 欧州と中東の間の要衝に位置するトルコの外交が迷走している。中東各国の混迷が続くなか「中東で唯一の民主的なイスラム国家」を自負し、全方位外交で「地域の盟主」を目指す。だが、情勢の読み違えなどで周辺国との関係は悪化。エルドアン首相は大統領就任後、積極外交を強めるとみられるが、外交立て直しの道筋は見えない。

 トルコは一段の発展に向けた歴史的な好機を手にしている――。オバマ米大統領は12日、大統領選で勝利したエルドアン氏に電話で祝意を伝えた。北大西洋条約機構(NATO)の同盟国として、内戦状態にあるイラクやシリア情勢での協力を確認した。

 ただ、中東専門家のジョナサン・シャンツァー氏は「オバマ氏はエルドアン氏にもはや頼っていない」とみる。シリアとイラクで抑止役として機能せず、過激派の台頭に手を貸す形になってしまったからだ。

過激派が出入り

 シリア反体制派を支援するトルコのシリア難民キャンプから反体制派の戦闘員がシリア側に自由に出入りし、シリアに無秩序に武器や戦闘員が流入。これがイスラム過激派の急拡大を招いた。米政府はシリア反体制派内の過激派の伸長を早くから問題にし、2012年に「ヌスラ戦線」をテロ組織に認定した。

 一方、トルコ政府による認定は今年6月と遅れた。その間、シリアからイラクに勢力圏を広げて混乱をもたらす「イスラム国」など複数の過激派が台頭した。

 イラク北部モスルでは6月、トルコの外交官ら約50人が過激派に拉致された。対シリア政策はトルコ外交の迷走の象徴だ。

 エジプトではイスラム組織ムスリム同胞団系のモルシ前大統領が昨夏、クーデターで失脚した。同胞団を支援してきたトルコは、エジプト軍出身のシシ新大統領を選出した5月の大統領選後もクーデターへの激しい批判を続ける。

巨額投資逃す

 米欧がシシ氏との関係修復を探るのと対照的に、トルコとエジプトは互いに大使を追放。トルコはシリア、イスラエルを含む周辺の3カ国に大使がいない異常事態に陥っている。

 その代償は小さくない。エジプトを支援するペルシャ湾岸産油国とも関係が冷え込んだ。アラブ首長国連邦(UAE)の政府系エネルギー開発会社はトルコ南東部の石炭火力発電所への約120億ドルの投資を見送った。トルコ政府のカルン外交上級顧問は「苦しんでいるシリアやエジプトの市民を、トルコは無視できない」と話す。

 トルコの外交評論家、ソリ・オゼル氏は「トルコ外交の能力と願望の間に差がありすぎた。現実主義がおろそかになっている」と批判する。

 エルドアン氏は国外に「敵」をつくり出すことで国内の支持固めに利用したとの指摘もある。対象は中東諸国にとどまらない。批判的な欧米メディアを敵視し、6月には米CNNのリポーターを「スパイ」と言及した。

 政治評論家のムラット・イェトキン氏はトルコ外交が「もっと冒険主義的になる」と予想する。クリントン前米国務長官は回顧録で「トルコが中東と欧州で重要な役割を果たすことは間違いない」としながら「その未来がどうなるかは分からない」と記した。

 メディア統制もいとわないエルドアン氏の手法に、欧米では「独裁者の誕生か」(独シュピーゲル誌)との声もあがる。6月末にテレビとのインタビューで「中国とロシアをモデルにした大統領制を導入したい」と語ったことで、その懸念はいっそう強まった。

 イスタンブール=花房良祐、シナン・タウシャンが担当しました。

2014/08/14 本日の日本経済新聞より「真相深層 オバマ氏動かした5分間 イラク空爆決断」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「オバマ氏動かした5分間 イラク空爆決断」です。





 オバマ米大統領がイラク空爆に踏み切った。米軍のイラク撤退を掲げて大統領の座を射止めたオバマ氏にとって根本的な政策転換となる。いったん表明して取り下げたシリアへの対応に象徴されるようにオバマ氏は軍事介入に一貫して慎重だった。「一丁目一番地」の政策を変えてまで決断した背景には何があったのか。

■情勢悪化を説明

 「歴史的な会合だった」。6日夕のワシントン。50カ国のアフリカ首脳を招いて初めて開いた会議を終えたオバマ氏は高揚していた。米国務省の玄関口につけたリムジンに乗ろうとすると、1人の男が後部座席に同乗してきた。米軍制服組トップのデンプシー統合参謀本部議長だ。ホワイトハウスに到着するまで5分間。デンプシー氏はイラク情勢がいかに悪化しているかを説いた。

 オバマ氏はデンプシー氏の行動からイラクが容易ならざる状況であると察知した。米軍事顧問団をイラクに派遣したのは6月末。1カ月余りしかたっていなかった。ホワイトハウスに着くとオバマ氏はデンプシー氏とともに執務室に入り、ライス大統領補佐官(国家安全保障担当)、マクドノー大統領首席補佐官を呼んだ。

 翌7日も朝から米国家安全保障会議(NSC)を招集。会議は90分間に及んだ。軍事介入に否定的なオバマ氏の心境はデンプシー氏の説明を受けてから変化した。動かしたのは「大量殺りく」という言葉だった。イラク北部でイスラム過激派に追い込まれたクルド人ら少数派住民約4万人が山頂付近で孤立。住民は飲まず食わずの状態で、子供40人が死亡、過激派が女性を虐待しているとの情報もあった。

 人権重視をうたうオバマ氏が現状を放置したまま、大量殺りくが現実になれば、米国の「傍観」批判は免れない。さらに過激派が迫るイラク北部のアルビルは米軍事顧問団が駐在、米石油メジャーも進出している。顧問団に死傷者が出れば、今なお追及される2012年9月の駐リビア大使らが殺害された米領事館襲撃事件の再現ともなりかねない。

 折しも前日の5日にはアフガニスタンの首都カブール近郊にある陸軍士官学校で、アフガン兵士が国際治安支援部隊(ISAF)に銃を乱射し、米軍の少将1人が死亡した。米軍が01年にアフガンに駐留して以来、戦死した最も高位の米軍人で、米メディアはこの事件をトップ級で報じた。過激派が軍事顧問団を襲えば、被害も米メディアの扱いもこの比ではない。

2014/08/13 本日の日本経済新聞より「大機小機 ドイツに敗れた日本」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「大機小機 ドイツに敗れた日本」です。

ドイツはユーロ圏で財政黒字を達成した唯一の先進国です。日本との対比で、何が違うのか、日本には何が求められているのか、そういう焦点で記載された記事です。





 サッカーの話ではない。経済でも外交でも日本はドイツに大差をつけられている。戦後69年、同じ敗戦国として廃虚と混乱の中から立ち上がった。ほぼ同じ道を歩んできたはずなのに、なぜこうも違ってしまったか。

 日独の戦後の歩みには共通項が多い。冷戦下で、日本経済再生のためのドッジ・ラインとマーシャル・プラン(欧州復興計画)に支えられ復興した。ともに軽武装で経済優先の路線を堅持し「経済の奇跡」が実現した。

 違いが鮮明になったのは近隣諸国との関係である。ドイツが独仏融和を軸に欧州連合(EU)を築き、深化・拡大させたのに対し日本は中国、韓国という重要な隣国との関係でつまずいている。

 国際政治の舞台でもドイツは存在感を高めている。イランの核問題では国連安保理常任理事国とともに交渉にあたる。ウクライナ危機打開でカギを握るのもドイツ。メルケル首相はどの主要国首脳にもすぐに会える。

 安倍晋三首相の地球儀を俯瞰(ふかん)する外交には、中韓という隣国が抜け落ちている。歴史認識の食い違いは大きい。日米は中国の海洋進出に強い懸念を共有しているが、オバマ政権は中韓と対話できない安倍政権に不安を抱いている。

 経済でも差は広がっている。ハイパー・インフレを経験したドイツが財政規律、強い通貨、物価安定を優先したのに対し、1ドル=360円に安住した日本は円高恐怖症が根付いた。過剰流動性からバブルを発生させ、それを退治するためデフレを招いた。安易な財政出動を繰り返し財政規律は今も緩んだままだ。

 ドイツは財政黒字を達成し借金なしの予算が組めるのに、日本は2020年度の基礎的財政収支の黒字化さえ望めない。長期債務残高の国内総生産(GDP)比は2倍超と先進国最悪である。

 ともに経常収支の黒字国だったのに、ドイツは中国を上回る最大の経常黒字国になり日本は経常赤字国に転落しかねない。双子の赤字国になれば優等生との差は開く。

 経済と外交は絡み合っている。ドイツの成長はEUの深化・拡大によるところが大きい。一方で、中韓との関係冷却で日本は世界の成長センターの恩恵を十分に享受できない。戦後69年、なぜ日本はドイツに敗れたかを検証するしかない。ドイツに何を学ぶかで日本の針路は決まる。

(無垢)

2014/08/13 本日の日本経済新聞より「エルドアン大統領のトルコ(上)高成長の裏にひずみ 「縁故企業」に偏る富」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際1面にある「エルドアン大統領のトルコ(上)高成長の裏にひずみ 「縁故企業」に偏る富」です。





 トルコ次期大統領にエルドアン首相の就任が固まった。強権的との批判がつきまとう同氏の政権運営に国内外の注目が集まる。ひずみを抱えながら高成長を続ける経済と、地域大国としての盟主の座がかすむ外交の行方を占う。

ボスポラス海峡では3本目の大型つり橋の建設工事が進んでいる(イスタンブール)

 中央銀行は利下げして景気を浮揚させるべきだ――。エルドアン氏は5月以降、1月に大幅利上げしたトルコ中銀に露骨な圧力をかけ続けている。中銀は3カ月で3回にわたって合計1.75%利下げした。インフレ率が物価目標を上回るなかでの利下げに首をひねる市場関係者は多い。

 中銀への利下げ圧力には、住宅販売の低迷に直面する取り巻きの建設関連企業を助ける狙いもあったとされる。

 トルコでは「全県に空港」「全国に高速道路網」との掛け声のもとにインフラ整備が続く。イスタンブール―首都アンカラ間の約530キロメートルの高速鉄道が7月末、大統領選直前に全線開通した。

巨額の経常赤字

 インフラ整備計画は高成長の原動力となり、政権に近い建設会社に大きな利益をもたらした。

 イスタンブールでは滑走路6本の世界最大規模の新空港の建設が進む。トルコの欧州とアジアの部分を隔てるボスポラス海峡では、船舶の混雑を解消する巨大運河の建設構想が持ち上がる。「需要よりも建設自体が目的化している」との懸念が高まる。

 与党・公正発展党(AKP)が2002年に政権獲得後、首相府の集合住宅局は全国で中・低所得者向けに約63万戸を建設した。主要な受注先となる「親エルドアン」の建設会社や財閥は、傘下のメディアで「エルドアン礼賛」を繰り返す。イスタンブールの新空港建設を担うカルヨンは大手紙サバハを13年に買収し、政権寄りの報道を続ける。

 このように内需主導で景気が拡大しても輸出産業の振興は途上で、巨額の経常赤字を解消する道筋は見えてこない。米モルガン・スタンレーはトルコを南アフリカ、インドなどの4カ国と共に危機にもろい新興国「F5」に挙げる。

 10年間でトルコの1人当たり国内総生産(GDP)は約3倍になったが、伸びたのは03~08年。近年は1万ドル前後で横ばいを続ける。成長が停滞する「中進国のわな」に陥りかねないとの声もあがっている。

遅れる産業育成

 大型インフラ整備計画の恩恵を受ける建設業はGDPの6%弱の価値しか生まない。関連産業も含めると労働人口の15%が従事する労働集約型の産業だ。

 トルコ中銀のギュベン・サック元審議委員は「付加価値の高い産業の育成を急ぐ必要がある」と指摘する。不動産の税制改革や理系人材を育成する教育改革が急務だと訴える。

 エルドアン氏は「敵」をつくり出し、支持率を高める政治手法を経済政策でも使うようになった。昨夏に反政府デモが発生した際、デモ隊が最大財閥コチ系のホテルに逃げ込むと同氏はコチを敵視。コチ系企業から予定していた軍艦の調達計画を白紙に戻した。

 政権と対立するイスラム教団体「ギュレン運動」に近い経済団体TUSKONの加盟企業には、政府関係者から脱退するよう圧力がかけられているという。TUSKONのルザヌル・メラル会長は「ビジネスでも政権と同じ価値観を共有しないと敵にされる」と批判する。

 経済評論家のムスタファ・ソンメズ氏は「企業が政権を恐れて縁故主義がまん延すれば、投資に悪影響が及ぶ」と指摘する。エルドアン氏は「建国100周年の23年までに世界経済のトップ10入り」を目指すが、自らの強権的な政治手法がその芽をつみかねない。

2014/08/13 本日の日本経済新聞より「真相深層 デフレにおびえる韓国 輸出主導経済に限界」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「デフレにおびえる韓国 輸出主導経済に限界」です。





 韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権が総額41兆ウォン(約4兆1000億円)の経済対策を打ち出した。韓国銀行(中央銀行)による週内の利下げも取り沙汰される。景気情勢を「緩やかな回復」としながら、大がかりな対策を打つのはなぜか。

閣議に臨む朴槿恵大統領(左)と崔経済副首相兼企画財政相=韓国大統領府提供

 チョイノミクス――。韓国政府が7月下旬に公表した経済政策は、とりまとめを主導した崔炅煥(チェ・ギョンファン)経済副首相兼企画財政相の英語名「Choi」をとってこう呼ばれている。崔氏は朴氏に近い当選3回の国会議員だ。

「日本に似てる」

 6月発表の内閣改造で抜てきされた崔氏は就任前から「韓国経済は、日本の失われた20年の当時に似た状況だ」と繰り返し強調。経済政策運営でどんなかじ取りをするのか関心を集めていた。

 実際、いまの韓国経済は1990~2000年代にかけての日本とよく似ている。

 第1は日本を追いかける形で進む少子高齢化だ。日本は90年代に15歳以上65歳未満の生産年齢人口が減少に転じた。韓国でも17年に減り始める見通しだ。韓国の出生率は日本より低く、高齢化のペースは早い。

 3%台後半とされる潜在成長率は今後、2%台に下がるといわれる。影響はすでに表れており、90年代に6%台だった年平均成長率は00年代に4%台に低下。12~13年は2.6%だった。政府は14年の見通しを3.7%と見込むが、達成できるか不安視する声は根強い。

 低成長を映し、物価上昇率も鈍っている。デフレというほどではないにせよ、消費者物価上昇率で1%台の低インフレが続く。韓銀の目標値は2.5~3.5%だ。韓銀は段階的に政策金利を引き下げているが、物価上昇率を差し引いた実質金利はそれほど下がらない。

 KDB大宇証券の尹汝三(ユン・ヨサム)投資分析部債券パート長は「低インフレ→実質金利高→通貨高という日本が苦しんだ構図に陥りつつある」と指摘する。内需不振で拍車がかかる経常黒字の拡大とともに、長い目でみたウォン高要因になっている。

 不動産市況の長期低迷も日本と似ている。00年代に入って盛り上がった「不動産神話」は08年のリーマン・ショックを機に崩壊。それ以降、不動産取引は冷え込み、本格回復のきっかけをつかめない。

 不動産ブームと並行して膨らんだ住宅ローンなど家計の負債は総額で約1000兆ウォン(約100兆円)を超す。名目国内総生産(GDP)の7割に相当する規模だ。雇用や老後の不安に借金の重荷が加わり、個人消費が盛り上がらない。

 崔氏がまとめた経済対策はA4判で約30ページだ。賃金を増やした企業への税制支援、内部留保を過大に積み増した企業への課税、不動産購入時の借り入れ規制緩和……。家計所得の増加と資産デフレの回避を狙った政策がならぶ。

 内需拡大が叫ばれるのは、財閥系の大企業を中心に輸出でもうける成長モデルの限界を感じているからだ。財閥企業はウォン安を志向した前政権時に世界市場で飛躍したが、国内の所得や雇用を期待ほど潤さなかった。ウォン高の持続が予想される今後は、製造業の空洞化は避けられない。

クネノミクスも

 韓国には「クネノミクス」という言葉もある。朴氏自ら2月にまとめた「経済革新3カ年計画」だ。規制緩和などを通じ医療、観光、金融などのサービス業や中小企業を育成するのが柱だ。チョイノミクスと重ねれば「財閥依存を脱し、デフレを回避しながら雇用創出効果の大きい新産業を育てる」という、朴政権が目指す新しい成長モデルが見えてくる。

 「90年代の日本は大胆で抜本的な対応に失敗した。失われた20年を反面教師にすれば、むしろ飛躍のチャンスになる」。経済対策の解説資料にはこんな記述がある。

 韓国らしい発想だが、それは、政策を間違えればデフレに沈みかねない危うい現状を示してもいる。新産業育成や不動産対策は、歴代政権も取り組みながら成果を出せなかった分野なのだ。

(ソウル=内山清行)

経営書を読む ゲマワット著「コークの味は国ごとに違うべきか」(2) 国ごとの差異を超える 「違い」の理解が成功の一歩 2014/08/12 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のキャリアアップ面にある「経営書を読む ゲマワット著「コークの味は国ごとに違うべきか」(2) 国ごとの差異を超える 「違い」の理解が成功の一歩」です。





 国際貿易を考える際のモデルに「重力モデル」と呼ばれるものがあります。ニュートンの万有引力の法則をアナロジー(類比)としています。重力モデルとは、二国間の貿易額がそれぞれの国の経済規模に比例し、二国間の距離の2乗に反比例するというものです。

 同モデルは経済モデルとしては優秀です。二国間の貿易額の変動の半分から3分の2を説明できるそうです。これは国際的な経済活動に地理的な隔たりが厳然と存在することを示しています。

 地理的な隔たりは、企業活動にも大きな影響を与えます。重力モデルを企業業績に当てはめるとどうなるでしょうか。

 例えば、ウォルマート・ストアーズでは次のようなことがわかりました。海外展開国の首都と同社の本社(アーカンソー州)の距離が遠いほど利益率が低くなるという相関があったのです。カナダやメキシコでの利益率は高く、韓国やドイツでは赤字でした(両国からは既に撤退済みです)。

 距離以外の重要な隔たりも見えてきます。利益率が高かったのは英語圏の国であることや英国の旧植民地であることもわかりました。所得水準が低い国の業績は総じてよくありませんでした。ここから、単純な重力モデルには補正が必要なことがわかります。

 著者のゲマワットは、国ごとの隔たりで重要となる要素を4つに集約しました。地理的な要素に加えて、文化的、制度的、経済的な隔たりを合わせた4つです。これらの要素に照らし合わせて国ごとの差異を理解することで、企業の海外進出の優先度が見えてくると著者は主張します。

 隔たりを意識するということは、画一的な世界で画一的に成功するという妄想の解毒剤にもなります。他国では企業はどこまでも外来種で、競争上の不利は自明です。他国のことを自国以上に理解できるというのは幻想にすぎません。自他の違いを理解することが成功の第一歩なのです。

プーチン氏訪日「賢明な決定を」日本に慎重判断促す 元米国務副長官アーミテージ氏「集団安保」参加は期待せず 2014/08/12 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「プーチン氏訪日「賢明な決定を」日本に慎重判断促す 元米国務副長官アーミテージ氏「集団安保」参加は期待せず」です。

北方領土の問題を解決するにあたり、日ロの2国間だけでなく、同盟国の米国との距離感を考える必要があります。機会がどれぐらいあるか定量的な見地からしますと、日ロの2国間の距離感だけでなく、米ロの距離感、そしてロシアの政治的リーダーシップの背景となる国内情勢を考えないといけませんので、チャンスはとてつもなく制限されます。

帝国主義下にあった日本とは言え、ロシアが侵略する大義名分は無いわけです。先日もロシアはウクライナの領土であるクリミアを侵略しました。これも大義名分が無いという点で一致しています。

そのような国に対して、日本がどのような出方をするのでしょうか。日本の安全保障や世界秩序にも大きな影響があります。引き続き、注視が必要です。





 知日派として知られるアーミテージ元米国務副長官は日本経済新聞とのインタビューで、ウクライナ情勢がこのまま悪化を続けるなら、今秋と見込まれているロシアのプーチン大統領の日本訪問について安倍晋三政権に「賢明な決定」を期待すると表明した。訪日を巡り日本側に慎重な判断を促す発言だ。

 ウクライナ情勢に絡み欧米とロシアの制裁の応酬が激しくなる一方で、ロシアは農産物の輸入を禁止するリストから日本を外した。ロシア側には日本との関係を維持し、主要7カ国(G7)を分断する思惑も浮かぶ。

 アーミテージ氏は安倍首相の対ロ外交に関して「ロシアのエネルギーを巡りプーチン氏との間で上手な外交を展開しているのは理解している。日本のエネルギーの安定は米国にも恩恵をもたらす」と語った。そのうえで「首相はウクライナ情勢を巡る国際的な合意から外れないようロシアに慎重な立場で接している。日本はまだプーチン氏の訪日を決めていない」と述べ、欧米の追加制裁の効果を見極める必要があるとの認識を示した。

 プーチン氏にはウクライナ情勢の安定への取り組みを促すとともに「プーチン氏がウクライナ情勢の悪化を放置するなら、日本に賢明な決定を望みたい」と訴えた。

 プーチン氏の訪日が延期になった場合に北方領土問題が行き詰まるとの懸念に対しては「1945年から行き詰まったままだ。プーチン氏が訪日しても妥協したいかどうかは分からない」と主張した。他国の首脳と比べ安倍首相とプーチン氏の相性が合うとの見方について尋ねると「首相から聞いたことはない。日米関係は、ほかのいかなる関係より良好で、重要だ」と力説した。

 安倍政権の安全保障法制の見直しに関して米側が国連決議に基づく多国籍軍など集団安全保障への参加を期待しているとの観測に対しては「その期待はない」と否定的な考えを示した。そのうえで「例えば海で米艦船や航空機が攻撃を受けた時に日本が助けに来ることができるなら、それは期待したい」と語った。

 アーミテージ氏は拉致被害者ら日本人の安否を巡る再調査に北朝鮮が応じたことを受け「首相は長年、人権問題として取り組んでおり、進展を望んでいる」と述べた。米政府が拉致問題が先行し、核やミサイルの問題が置き去りになるのを懸念しているとの見方を一蹴。「日米で十分、意思疎通をしており、米側は日朝で何が話し合われているかも理解している」と強調した。

(ワシントン=吉野直也)

 1967年、米海軍兵学校を卒業。レーガン政権の国防次官補やブッシュ政権の国務副長官などを歴任。共和党系ながらオバマ政権の対日政策にも影響力を持つ。69歳。