2014/09/30 本日の日本経済新聞より 「経営書を読む ルイス・ガースナー著「巨像も踊る」(4) 成功のカギ 仮説立て賭けの戦略」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞14版の33面(キャリアアップ)にある「経営書を読む ルイス・ガースナー著「巨像も踊る」(4) 成功のカギ 仮説立て賭けの戦略」です。





 IBMの変革は2つの大きな賭けに集約できる。1つは産業の方向性に関する賭けであり、もう1つは同社の戦略に関する賭けだ。

 前者はクラウド・コンピューティングの台頭である。テレビ番組、映画、音楽、ゲームなど独自の媒体と専用のハードウエアを通じて消費されていたコンテンツが、インターネット・プロトコルにより共通のフォーマットになり、1つの端末で全てを楽しめるようになる。あるいは、あらゆる機器が端末としてネットワークにつながる時代を想定したのだ。

 後者は、サービス主導の戦略への転換だ。顧客が様々な機器やソフトを統合しなければならなくなるにつれ、ソリューションを提供できる企業を評価するようになるという予測だ。

 ネットワーク上でビジネスを展開する企業や個人が増えれば、コンピューターの負荷が増え、それをマネジメントするニーズが高まる。そこでは、ミドルウエアが戦略的に重要な戦場になる。

 こうした事業観に基づき、IBMは事業構造の再構築に取り組む。まず、自社のミドルウエアをオープン化し、他社製のハードにも対応できるよう改めた。次にロータス・デベロップメントを買収し、多数のユーザーの共同作業を支援する「ノーツ」を入手した。

 一方、アプリケーション・ソフトでは社内の反対を押し切り撤退という決断を下した。一連の施策と並行して、サービス事業を世界全体で一元化して分社した。

 優れた経営者は市場構造の変化を解明するとともに、自社がどこにポジショニングすべきか、その際、何が成功要因になり、どんな事業構造を作るべきか、具体的な仮説を立てられる。

 ガースナーはIT革命という数百年に一度の大波に直撃されながら、「市場構造」「ポジショニング」「成功要因」を具体的に特定した点が卓越した経営者と言える。

2014/09/30 本日の日本経済新聞より 「新人コンサル、徒弟制で鍛錬 ボスコンの育成術 「スライド2000枚」「世にない資料を」」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞14版の33面(キャリアアップ)にある「新人コンサル、徒弟制で鍛錬 ボスコンの育成術 「スライド2000枚」「世にない資料を」」です。





 企業の課題を見分けて改善策を提示する経営コンサルタント。財務や人事、販売戦略など幅広いテーマを手掛けるため、広い知識と高い問題解決力が求められる。新人コンサルタントをどのように育成しているのか。2、3年で独り立ちさせるというボストンコンサルティンググループ(BCG)の育成術を探った。

 「プレゼンテーションに使うスライドの作り方を教えて」――。BCGの若手、繁田健さんは、担当する顧客企業の社員からこう声を掛けられると丁寧にスライド作りのコツを教え始めた。

 繁田さんは入社後の研修で、インストラクター役の先輩社員からスライド作成の特徴はわかりやすさの追求にあると、厳しくたたき込まれた。

 BCGではまず、先輩社員が新人や若手の先生役となり、同社の世界共通のフォーマットを基に指導する。基本形を覚えたら、新人や若手は実際にスライドを書いて、先輩に赤ペンで添削してもらう。情報の盛り込み過ぎで活字だらけになったり、何が言いたいかわからない、データの裏付けがないといったダメな事例に陥らないよう指導を受ける。

 若手は「2千枚書けばBCG流のスライドが身につく」という先輩の言葉を信じながら、赤字がなくなるまで何度も書き直しを繰り返す。

 BCGでは世界で使用された過去のスライド資料をデータベース化しており、優れた“お手本”を検索して参照できるのも特徴だ。スライド作りはコンサルタントに必須のスキルの一つと位置付けているだけに、伸びる若手ほど門外不出のデータベースを活用しているという。

 多角化した企業が経営資源の最適な配分を決めるため、BCGは各事業を「金のなる木」や「負け犬」など4つのカテゴリーに分類する有名なマトリックスを独自に考案。顧客の経営課題の本質をわかりやすく説明するコンサルティング業務で、米国や日本などで実績を残してきた。

 コンサルティングではコミュニケーション能力も重要な資質となる。顧客企業の課題を発見し、優れた処方箋を書くには根気よく顧客の声に耳を傾けることが欠かせないためだ。

 高田優哉さんは入社後のアジア各国の新人が集まる合宿で、印象的な経験をした。テーマは「話し掛けても耳を貸さない顧客にどう聞き入れてもらうか」。会議室に入室すると相手はスマートフォンの画面を触り続けて目を合わせる気配がない。架空の企業の重要なポジションを務めており、コンサルタントに関心がないという設定だ。

 何を聞いても反応がなく、困り果てた高田さんがその場で助言を受けたのは「議論をさせてください」と話しに行くことだった。情報を聞き出そうと話しかけても良い反応は得られず、自らが仮説に基づいて考察を顧客にぶつけることが大事だとわかったという。

 「世の中にない資料を作れ」。柴田偉斗子さんは上司からこう指示され、困惑したという。そのミッションは、ある顧客企業が新製品を投入する際の市場規模を類推することだったが、ニッチ(隙間)商品だったことから参考になるデータが乏しかったのだ。柴田さんはBCGの世界の社員に、海外での類似商品の市場動向などを問い合わせたりして情報収集に努めた。集めたデータを基に仮説を立てて検証を繰り返し、顧客企業が納得する推定値を弾き出した。

 情報収集と分析の先には、経営課題の抽出と解決策の立案がある。その段階では「思考のクリスタライズ(結晶化)が欠かせない」(BCG)と強調する。BCG出身者は「脳が擦り切れるまで考えることで本質が浮かびあがる」といい、例えば「トヨタ生産方式」で有名な「なぜ」を5回繰り返すといった思考方法を実践することが成果につながるとしている。

 多くのスキルを身につけ独り立ちする過程で、若手は先輩から依頼された資料の作成や、そのために必要な情報収集もこなす。その対価として、若手は先輩に対し「フィードバックを下さい」と、与えられた指示をこなせていたかどうか、改善点はどこにあるかといったことを聞く権利を持つ。フィードバックは先輩社員の義務であり、BCGの人材育成術にはこうした「徒弟制度」の仕組みが残っている。

2014/09/30 本日の日本経済新聞より 「REIT、1年半ぶり高値 増資一巡、需給不安が後退 ホテル・物流施設に期待

今日の日経注目記事は、日本経済新聞12版の19面(マーケット総合2)にある「REIT、1年半ぶり高値 増資一巡、需給不安が後退 ホテル・物流施設に期待」です。





 不動産投資信託(REIT)相場が上昇している。全体の動きを示す東証REIT指数は29日、約1年半ぶりの高値を付けた。今月に入り相次いだ増資が一巡し需給面の不安が後退した。個人や地方銀行からマネーの流入が続いている。特に、ホテルや物流施設に投資するREITが買われている。安定した利回りに加え、成長期待が指数を押し上げている。

 29日の東証REIT指数は前週末比22ポイント(1.34%)高の1667.61だった。2013年4月以来の高値水準だ。需給を緩める主因だった相次ぐ公募増資が先週で一巡したことが追い風だ。9月はREITによる増資が相次ぎ、市場からの資金調達額は10カ月ぶりに1200億円を超えた。一時的に需給が緩み上値を抑えてきていた。

 地価が緩やかに上昇していることも投資家の資金を呼び込んでいる。18日発表の14年7月1日時点の基準地価は、三大都市圏(全用途)で2年連続で上昇した。REITを組み入れる投信を運用する三井住友トラスト・アセットマネジメントの太田素資チーフファンドマネジャーは「基準地価の発表以降、ファンドへの個人マネー流入が加速した」と明かす。

 機関投資家の買い意欲も強い。東証が12日発表した8月のREITの投資主体別売買状況によると、投信に加え、銀行、生保・損保、その他金融、海外投資家がそろって買い越しだった。3%台の安定した分配金利回りを求めて、運用難の地銀や信用金庫などが資金を振り向けている。

 全上場REIT銘柄の中で昨年末比の投資口価格の騰落率を見ると、上昇率の上位にはホテルや物流施設に投資するREITが並んだ。

 29日に年初来高値を付けたREIT「ジャパン・ホテル・リート」は、保有する主要ホテルの客単価が上昇傾向にある。REITの運営会社によると「増加する国内レジャー需要と外国人旅行者を取り込み、高水準の稼働率を維持できている」という。

 ホテルを組み入れるREITについては、海外からの観光客の増加などを受け、「成長を期待する投資家の資金も入っている」(SMBC日興証券の鳥井裕史シニアアナリスト)との声がある。

 物流施設に投資するREITは、ネット通販の普及で配送拠点の需要が増えていることを背景に資金が流入している。

2014/09/30 本日の日本経済新聞より 「経済観測 回復基調の米経済、今後は 来年半ば利上げの公算 米ハーバード大教授 ジェフリー・フランケル氏」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞13版の5面(経済)にある「経済観測 回復基調の米経済、今後は 来年半ば利上げの公算 米ハーバード大教授 ジェフリー・フランケル氏」です。





 リーマン・ショックから6年を経て、米経済の回復基盤が固まってきた。世界経済の先行き懸念が強まるなかでも、安定的な成長を維持できるのか。米ハーバード大のジェフリー・フランケル教授に聞いた。

雇用改善底堅い

 ――米経済の現状をどうみていますか。

 「4~6月期の実質成長率(前期比年率4.6%)は、寒波の影響を受けた1~3月期(同マイナス2.1%)から急反発した。7~9月期も底堅い数字を期待できる。失礼ながら欧州や日本よりは良い姿だ」

 「2008年9月の金融危機からの回復が完全だとはいえないが、かなりのところに来ているのは確かだろう。中長期的にみても、2~2.5%程度の潜在成長率は維持できる

 ――雇用の改善が鈍いという懸念は残ります。

 「8月の非農業部門の雇用者数(前月比14万2000人増)に失望した人は多かった。しかし今年の伸びは月平均で20万人を超えている。1990年代後半ほどの勢いはないものの、ブッシュ前政権下の01~08年よりはいい」

 ――米連邦準備理事会(FRB)は10月に量的金融緩和を終え、来年には利上げを始めそうです。

 「景気が想定通りに回復すれば、来年半ばに利上げを開始する公算が大きい。9月16~17日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明には、私の予想を変えるほどの修正がなかった。物価の上昇が加速しない限り、利上げのペースも緩やかになる」

欧州デフレ懸念

 ――米経済は堅調でも、世界経済の下振れ懸念が強まってはいませんか。

 「ユーロ圏は深刻な問題を抱えている。周縁国のいくつかはすでにデフレに突入し、主要国もそれに近い状態にある。日本の経験が物語るように、デフレのわなにはまると簡単には抜け出せない。欧州中央銀行(ECB)が金融緩和の強化に動くのは適切だ」

 「中国の成長鈍化は避けられず、金融不安が悪化する可能性もある。ウクライナやシリア、イラクといった地政学的な問題も広がる。私はそれほど心配していないが、資産価格の上昇を警戒する人もいる」

 ――日本は消費増税の駆け込み需要の反動減に苦しんでいるところです。

 「アベノミクスの3本の矢も、消費増税の必要性も理解している。ただ消費税率を2段階で5%引き上げるよりも、毎年1%ずつなだらかに引き上げた方が良かったのではないか。個人消費への打撃を和らげ、物価上昇の期待も醸成できたはずだ。来年10月の再増税に向けて、今から議論をし直しても遅くはない」

 ――米経済を底上げする努力も問われます。

 「11~13年の景気回復が鈍かったのは、需要不足を埋める財政出動の手足を縛られていたのも一因だろう。与野党の対立で政府・議会の政策対応ができず、FRBの金融緩和に多くを頼りすぎてきた」

 「心配なのは戦後平均を下回る潜在成長率だ。高齢化による労働力の伸び悩み、技術革新の一巡に伴う生産性の停滞が影響している可能性がある。教育の拡充や税制改革を通じた底上げを怠ってはならない

(聞き手はワシントン支局長 小竹洋之)

2014/09/29 本日の日本経済新聞より 「エコノ フォーカス 円安でも輸出伸びぬ謎 高級車、値下げ困難/家電、競争力低下 世界需要、盛り上がり欠く」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞13版の3面(総合・経済)にある「エコノ フォーカス 円安でも輸出伸びぬ謎 高級車、値下げ困難/家電、競争力低下 世界需要、盛り上がり欠く」です。





 円相場は1ドル=109円近辺と2008年秋のリーマン・ショック前の円安水準に戻った。円安で企業の輸出競争力は高まるが、1~8月の輸出額は約46.9兆円と、リーマン前(07年1~8月)の9割に届かない。円安の追い風でも、なぜ輸出回復の足取りは鈍いのか。背景を探った。

 リーマン後の円高基調が円安に変わったのは12年秋。それから約2年間で円は対ドルで約3割下がった。05年1月~07年6月の前回の円安局面の下落率(約2割)と比べると今回の方が円安ペースは早い。

 円が下がると企業は輸出先で外貨建て価格を下げることができ、輸出数量を伸ばせる。実際、05年4~6月期から08年1~3月期まで物価変動の影響を除いた実質輸出(季節調整値)は前期比プラスが続いた。ところが今年8月の実質輸出は前月比0.2%下がり、四半期でも4~6月期まで2期連続で低下した。

 低迷の原因は大きく2つある。ひとつは輸出を引っ張ってきた自動車や電機産業の構造変化だ。

 自動車各社はリーマン後の超円高を受け生産拠点を海外に移した。影響はてきめんで、13年の自動車の輸出数量は07年と比べ3割弱も減った。この流れは足元まで続いている。今年1~7月期は円安で自動車輸出額は前年同期比5.1%増えたものの、数量は同1.4%減った。

 海外生産に移ったのは主に大衆車で、輸出の主力が高級車に変わったことも数量が伸びにくい一因だ。トヨタ自動車の海外生産比率は08年の約44%から15年は約65%へ高まる見通し。トヨタへの聞き取りから輸出台数に占める高級車レクサスの比率を推計すると07年の15%から14年1~7月は23%に上がった。

 高級車はブランド価値を保つため円安でも現地で値下げを控えることが多い。円安・現地通貨高で輸出企業の収益は増えるが、輸出数量は伸びにくい。8月の日銀統計で、契約通貨で見た輸送用機器の輸出物価は12年12月と比べ1.7%の下落にとどまった。前回の円安のピーク07年6月の輸送用機器の輸出物価が05年1月と比べ2.7%下がったのと比べ小幅だ。

 テレビや携帯電話など電気機器の輸出額は07年から13年までに3割も減った。自動車と異なり、海外生産比率はほとんど変わっていない。日本総合研究所の山田久氏は「日本企業の競争力低下が主因だ」と指摘する。

 電気機器は部品を輸出し、製品を輸入する傾向が強まっている。テレビや携帯電話、パソコンなど「情報通信機械工業」の国内出荷量に対する輸入品比率は14年4~6月期に約50%に達した。09年の約24%から2倍に膨らんだ。携帯電話は13年の輸入超過額が1.6兆円と07年の8倍強だ。

 輸出回復が鈍いもう一つの理由は、世界の需要の盛り上がりが弱いことだ。国際通貨基金(IMF)によると、世界経済の成長率は07年の5.3%に対し、14年は3.4%にとどまる見通しだ。 米国の輸入額は12年から足元までほぼ横ばいだ。シェールガス産出に伴い製造業が米国内に戻り、輸入が増えにくくなったとの見方も一部にある。日本にとって中国と並ぶ輸出先である米国の輸入が伸びなければ、円安でも日本の輸出は増えにくくなる。

 (森本学、杉本耕太郎)

2014/09/28 本日の日本経済新聞より 「がん社会を診る 子どものうちに教育を」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞13版17面(健康)にある「がん社会を診る 子どものうちに教育を」です。





 日本は男性の3人に2人、女性も2人に1人が生涯でがんにかかる世界一の「がん大国」ですが、誤解や迷信があふれています。本来は、日本人ががんの知識を世界で最も持つべきです。しかし、これまで学校でもほとんど習う機会はありませんでした。

 私も東京大学医学部で「悪性腫瘍」の講義を受けましたが、高校までは全く教えてもらった記憶がありません。読者の皆さんも、子供の頃、がんのことを習った方はほとんどいないはずです。それどころか、病気についてほとんど習わずに大人になった日本人が大半かもしれません。

 私が子供の頃も、せいぜい、雨で体育ができない日に保健の教科書をパラパラとめくった程度でした。本来の「保健体育」が「体育体育」になっていたのが、学校教育の実情だったといえるでしょう。

 今は違うとは思いますが、かつては、保健の授業は雨の日にしか実施されないので、「雨の日保健」と揶揄(やゆ)されたものでした。香川や愛媛といった、雨の少ない瀬戸内地方で特に保健の授業が少ないという声を聞いたこともあります。

 そもそも、日本の保健体育の先生は「体育会系」が多くを占めています。少し古い2000年に公表されたデータですが、男性教師で最もたばこを吸うのは、保健体育の先生だったというデータもあります。

 一方、欧米の多くの国では、体育と保健は別の教科になっています。保健の授業では、がんの経験者を教室に呼んで体験談を聞くなど、がん教育にも力を入れています。

 がんの予防や早期発見はわずかな知識の有無が鍵になりますし、がん治療はまさに「情報戦」といえるからです。早期がんなら最初の治療でほとんど完治し、高額な分子標的薬などは不要ですから、がん教育は医療費削減にもプラスになります。

 私は7年以上も前から、学校での「がん教育」の必要性を訴えてきましたが、文部科学省も、がん教育の予算を本年度初めて計上したほか、近く改訂予定の学習指導要領にも盛り込む方針です。安倍晋三首相も国会答弁で「がん教育を全国展開する」と明言しています。がん教育が進めば、日本でもがん死亡が減ると大いに期待しています。

(東京大学病院准教授)

2014/09/28 本日の日本経済新聞より 「日曜に考える 中国シェール 夢さめて 高コストの現実、目標下げ」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞13版の15面(日曜に考える)にある「中国シェール 夢さめて 高コストの現実、目標下げ」です。





 中国は、埋蔵量だけなら米国の約2倍とされる世界一の「シェールガス大国」だ。実際には内陸部の重慶などで国有企業による生産がようやく始まったばかり。しかも最近、中国政府は2020年の産出目標をいきなり半減した。中国はシェール開発に抱いたバラ色の夢から目覚め、厳しい現実と向き合いつつある。

国有企業によるシェールガス開発が進む重慶郊外の山村

採掘基地を示す標識が掲げられている

 重慶市の中心部から東へ車で約3時間。●(さんずいに倍のつくり)陵区では国有企業の中国石油化工集団(シノペック)がシェール開発を手掛けている。同区によると、区内の焦石鎮だけですでに29のガス井が掘られ、うち16で生産が始まった(今年2月時点)というが、詳細はベールに包まれている。

 「あんた、何を探しているんだ?」。山あいの村でガス井を探していると、1人の男性が突然、きれいな普通語(中国語の標準語)で話しかけてきた。なまりの強い「重慶語」が普通の重慶郊外で、普通語を耳にすることはめったにない。「中国石油化工の関係者か?」と問い返すと男性は答えず、「早くここから立ち去れ」と繰り返した。

 ようやくたどり着いたガス井では、井戸を掘るために高さ数十メートルのやぐらが組まれ、朱色の作業着を着たシノペックの従業員が忙しげに立ち働いていた。山の斜面にトウモロコシ畑が広がる静かな山村に、機械音が響き渡る。

 米国を中心とするシェール開発は、世界のエネルギー供給構造や、貿易、産業のあり方に変化を迫るという意味で「シェール革命」と呼ばれる。中国も資源の安定確保という自国発の「革命」を夢見てシェール開発に着手したが、現実は厳しさを増している。

 8月、中国のシェール熱に冷や水を浴びせるニュースが流れた。中国国家エネルギー局の呉新雄局長が20年の中国のシェールガスの生産量について、300億立方メートルとの見通しを示したとの内容だ。同局は12年、20年の生産量を600億~1千億立方メートルに引き上げる意欲的な目標を掲げた。ほんの2年で、目標を半分以下に引き下げた格好だ。

 最大の壁はコストだ。中国でのシェールガスの採掘コストは米国の3~4倍とされる。有力な埋蔵地は山がちな地域に集中し、地形は複雑だ。さらに、中国では焦石鎮のような山間部にも農地や民家が点在し、米国のように開発規模を一気に広げることが難しい。ガスの層も米国に比べ深く、生産コストがかさむ。

 慢性的な水不足に悩む中国にとって、シェールガスを取り出す際に大量の水を使うことも頭痛の種だ。シェール先進国である米国の技術を持ち込んでも、地質や地形が異なるため、すぐにすべての課題が解決するわけでもない。

 もっとも、こうした問題点は、2年前に夢のような生産目標を掲げたときからすでに分かっていたことだ。中国のエネルギー事情に詳しい石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の竹原美佳氏は「実際に生産を始めたことで、より現実的で、地に足の着いた目標に下方修正したのだろう」と分析する。

 国際エネルギー機関(IEA)によると、中国の天然ガス消費量は今後5年で倍増し、世界最大になる。13年に2億立方メートルだった国内のシェール生産を300億立方メートルまで増やすことができたとしても、賄えるのは消費量の10分の1に満たない。

 大気汚染を招きやすい石炭や、中東など海外に6割を頼る石油に代えて、天然ガスの確保を急ぐ中国。その輸入量を抑える切り札の一つが国内のシェール開発だが、重慶の現場から「革命」の足音はまだ聞こえてこない。

(重慶=大越匡洋)

2014/09/27 本日の日本経済新聞より 「大機小機 日本は都市国家へ脱皮を」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞12版の17面(マーケット総合2)にある「大機小機 日本は都市国家へ脱皮を」です。





 2040年に896市区町村が消滅する可能性があるとの予測が大きなショックを与え、地方創生本部が設置された。しかし日本の人口が今後20年間に1400万人も減少するなかで、地方の人口減少は避けられない。その社会的コストを最小限にとどめる政策を考えるべきだ。

 過去の人口増加時代には、森林を切り開き食料を増産したが、今後の人口減少時代には、正反対の政策が必要となる。中山間地を手入れ不要な自然林に戻し、大規模農業を目指すことである。

 農業や製造業を中心とする産業構造と異なり、今後の成長分野である金融や情報サービスは、集積の利点が大きい都市型産業である。高齢者層を最大の顧客とする医療・介護サービスも同様だ。

 高度成長期には地方から都市部への人口移動が経済全体の生産性を高め成長の源泉となった。今後の高齢化社会で、人々が分散して生活していては病院や介護のネットワークが間に合わない。むしろ医療や介護サービスが充実している都市部の高層住宅に、高齢者を誘導する必要がある。

 地方の人口減少対策は広域ベースで考えて、主要地域ごとに数百万人規模の中核都市を形成し、周辺部からの人口移動を促すコンパクトシティ化しかない。そのためには、国家戦略特区などを活用し、中核都市の中心部を高層住宅化すれば、夜間人口が増え商店街も活性化する。

 人口減少を止め地方を創生するには、産業誘致やハコモノ整備よりも、過疎地から都市部への住民移動を支援する「モノを作らない公共事業」がカギとなる。

 豊かな国の大部分は、北欧やシンガポールのように、少ない人口が都市部に集中する形態である。人口減少社会で、大都市へ人口が集中することは、都市の規模の経済を活用する合理的な行動だ。これを地方の過疎化をもたらす原因と見なして抑制すれば、都市も地方も共倒れになる。/p>

 公共投資のバラマキで地方経済が復活しないことは経験済みである。中央から地方に権限と財源を大胆に移管し、地方都市ごとに地域に合った独自の政策を追求し、世界の都市との競争を活発化させるべきだ。地方の衰退を止めるために大都市への人口集中を抑制する「地方の保護主義」は、日本全体の活力を失わせるだけだ。

(吾妻橋)

2014/09/26 本日の日本経済新聞より 「首相、安保理改革へ布石 G4、支持拡大へ声明 アフリカと連携めざす」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞14版の4面(政治)にある「首相、安保理改革へ布石 G4、支持拡大へ声明 アフリカと連携めざす」です。





 来年の国連創設70周年をにらみ、安倍晋三首相が安全保障理事会改革に向けた取り組みを本格化させている。25日午後(日本時間26日未明)の一般討論演説で改革への決意を表明。日本とドイツ、ブラジル、インドの4カ国(G4)外相は、支持拡大をめざす共同声明をまとめた。過去の教訓を踏まえ、アフリカや太平洋島しょ国などの協力確保に全力を挙げる。

 「志をともにする国々の力をあわせ、積年の課題を解きたい」。首相は演説で、国連平和維持活動(PKO)への要員派遣や資金拠出などの実績に触れ、安保理改革への意気込みを示す。

 岸田文雄外相は25日朝(日本時間同日夜)にG4外相会合に出席し、安保理改革に向けた協力を確認した。来年9月までに改革の具体的な成果を得るため国連加盟国にあらゆる努力と協力を求める共同声明を発表した。

 改革案の採択には、まず193の国連加盟国の3分の2以上(129カ国)の支持が必要になる。外務省幹部は「中間派の約90カ国に加え、約50カ国の大票田であるアフリカや太平洋の島しょ国などの支持があれば採択はできる」と話す。ただ、改革案を実現するには現在の常任理事国5カ国全てを含む3分の2の国が批准する必要がある。

 首相は着々と布石を打っている。24日にアフリカの地域別でつくる経済共同体の議長国との首脳会合を開き、インフラ整備への支援を重ねて伝えた。25日午前(日本時間同日夜)には太平洋にある13の島しょ国と首脳会合を開催し、関係強化を確認した。

 米英ロなど5つの常任理事国を中心とした安保理は第2次大戦直後の1945年にできたが、70年近くを経て世界情勢は大きく変わった。戦後に急速に発展した日独に加え、近年はブラジルやインド、アフリカ諸国といった新興国が台頭する。「今の勢力図にふさわしい姿にすべきだ」(外務省幹部)というのが日本の認識だ。

 日本は国連創設60年の2005年にも安保理改革に取り組んだが、結果的に支持は広がらなかった。当時、この問題に携わった政府関係者の一人は「アフリカ諸国が賛成しなかった背景には、改革先送りを狙う中国の働きかけがあった」とみており、国連改革は日中関係も絡みながら進むことになりそうだ。

(ニューヨーク=永沢毅)

試練の中央銀行(上) 米量的緩和「出口」の先に FRB、資産持て余す 2014/09/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際2面にある「試練の中央銀行(上) 米量的緩和「出口」の先に FRB、資産持て余す」です。





 世界の中央銀行が針路を探っている。異例の金融政策からの「出口」へと踏み出す米国に対し、欧州は量的緩和が視野に入る。そのはざまで新興国は惑う。各中銀は時に劇薬にもなる金融政策のさじ加減に悩む。

 「2020年ごろまではかかるかしら」。米連邦準備理事会(FRB)の資産規模が「正常」な水準に戻るのに必要な時間を問われたイエレン議長は、17日の記者会見でさらりと答えた。

 FRBは市場から大量の証券を買い取り、ふんだんにマネーを流す量的緩和を続けてきた。08年の金融危機後3度にわたって拡充した異例の政策は10月で終わる。来年半ばごろから事実上ゼロの政策金利を徐々に引き上げる見通しだ。

 危機前に比べるとFRBの資産は約5倍に膨らみ、資産の国内総生産(GDP)比は6%から27%へと大幅に高まった。資産を圧縮するには手持ちの証券を減らさないといけない。

 FRB発でマネーの大きな波をつくる政策の行く末には何が待ち受けるのか。不安は2方向にある。一方は「インフレを招く」と恐れ、他方は「一気に資産を縮小すれば、緩和マネーに頼る米国や世界の経済が傷つく」と警戒する。

 今のところイエレン氏は後者をより危ぶむ。FRBが17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でまとめた「出口戦略」の大枠にも、その意向がにじんだ。

 ▼FRBの資産縮小が始まるのは利上げ後 ▼資産の縮小はゆっくり進める ▼住宅ローン担保証券(MBS)の売却は想定していない

 量的緩和はバーナンキ前議長と、副議長として支えたイエレン氏の2人が主導してきた。その効果は家計の純資産額に如実に表れる。株や住宅の値上がりを受け、09年初めの55兆ドルから足元は80兆ドル超と1.5倍に増え、過去最高を更新中だ。こうした「資産効果」は米経済の7割を占める個人消費を温めてきた。

 政策の支えを急に外せばマネーの逆流が起きかねない。需要不足による米経済の「長期停滞説」を唱えるサマーズ元米財務長官は多少のバブルを許しても緩めの政策を続けよと訴える。

 足元でインフレの不安は目立たない。消費者物価指数はFRBがめざす前年比2%の上昇率を下回る。銀行融資の急増などでマネーが市中にあふれ、物価全般に火をつける兆しはまだない。

 一方で高リスクの社債やローン債権、一部のバイオ、ハイテク株などには説明しにくい価格の急騰がみられる。17日のFOMCでも、フィッシャー・ダラス連銀総裁やプロッサー・フィラデルフィア連銀総裁が、過度に緩和的な政策を懸念して反対票を投じた。

 投票権のないラッカー・リッチモンド連銀総裁は出口戦略をめぐり「特にMBSを売却しない方針は支持できない」と批判する声明を出した。FRBがMBSを抱えたままだと、住宅資金の流れを不要にゆがめ続けるとの判断からだ。

 FRB内の不協和音は、景気を気遣いつつ、政策の方向を決めつけたくないイエレン流のかじ取りが招いた帰結でもある。市場の目先の関心は利上げに向きがちだが、空前の資産を持て余すFRBの難題は向こう何年も解けそうにない。

(米州総局編集委員 西村博之)