2014/02/09 本日の日本経済新聞より「風見鶏 外交の意外な「ツボ」」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合・経済面にある「風見鶏 外交の意外な「ツボ」」です。





 体には不思議なところにツボがある。手のひらだったり、足裏だったり。無関係のようでいて、そこを押すと、体の疲れが癒やされる。そんな場所だ。

 日本の外交でも、一見しただけでは分からないが、さすってみると意外な「効用」が表れるツボがある。その一例がフランスや英国ではないだろうか。

 なぜか。英仏はまず、米中ロと並び、国連安保理のれっきとした常任理事国だ。たとえば、北朝鮮問題などで日米と中ロがぶつかったとき、「英仏を味方につければ、国連の議論を有利に運べる」(国連幹部)。

 さらに、日本になじみが薄い中東やアフリカに英仏はパイプを持ち、仏は一部に軍隊も駐留させている。2011年、コートジボワールで争乱となり、日本大使公邸が襲われた。「そのとき、大使らを危機一髪で救出したのもフランス軍だった」(外務省幹部)

 そうしたなか、日仏にとって先月上旬、大きなできごとがあった。外務・防衛担当閣僚級協議(2プラス2)が創設され、パリで初会合が開かれたのである。日本が懸念する対中武器輸出について合同委員会をつくることでも合意した。

 日本が2プラス2を設けているのは安全保障上、優先度が高いとみている米国、オーストラリア、ロシアだけ。これにフランスも加わったわけだ。

 しかし、未公表の2プラス2のやり取りを探ると、一筋縄ではいかない現実がみえてくる。

 会合は、日本から岸田文雄外相と小野寺五典防衛相が参加し、昼食を含めて約2時間半におよんだ。

 このうち、司会のファビウス外相が多くの時間を割いたのが、アフリカやソマリア沖の海賊対策、防衛品の共同開発などの協力。いずれも、フランスの関心が強いテーマだ。

 逆に、中国の軍拡や防空識別圏(ADIZ)、対中武器輸出規制については、日本が詳しく現状を説明し、危機感を示したものの、フランス側から目立った反応はなかった。

 それもそのはずである。「フランスは経済を軸に中国とも良い関係を保っている」(欧州外交筋)。しかも、今年は中仏の国交正常化50周年。習近平国家主席が3月にもパリを訪れ、祝う予定なのだという。

 フランスにかぎらず、アジアから遠く離れた欧州と日本では、対中観にそもそも大きな溝がある。

 「いちばんの脅威はテロリストからの攻撃、次がサイバー攻撃、そして大規模災害だ。あえて脅威国をあげれば、イランになる。中国の軍拡への切迫感は正直、日本ほどにはない」。英政府に近い同国の安全保障専門家もこう認める。

 それでも、欧州との絆を強める意味はある。日本の選択肢が広がるからだ。情報ひとつとっても、そうだ。昨年のアルジェリア人質事件では、英国から貴重な情報が寄せられた。

 2010年春には、韓国哨戒艦が撃沈され、朝鮮半島が緊迫した。「北朝鮮などについて、国連安保理常任理事国の中でどんな議論が交わされているのか。ときにはフランスから、他国より詳しい情報を提供してもらうこともあった」。当時、外相だった岡田克也氏はこう振り返る。

 中国が歴史問題の反日宣伝を駆使し、欧州を味方につけようとするのも、外交戦の要所だと心得ているからだろう。だとすれば、歴史対立の土俵には乗らず、淡々と日欧の協力を積み重ねていく。これが安倍政権の要諦である。

(編集委員 秋田浩之)

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