2014/02/10 本日の日本経済新聞より「グローバルオピニオン 米経済、「日本病」克服を 米エール大学シニアフェロー スティーブン・ローチ氏」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「グローバルオピニオン 米経済、「日本病」克服を 米エール大学シニアフェロー スティーブン・ローチ氏」です。





 金融市場などは米国が古典的な景気回復に近づいているとみる。本当にそうなのか。

 実質成長率は2013年後半に平均4%に近づいて過去4年間のほぼ2倍に達し、失業率は7%を下回った。米連邦準備理事会(FRB)も量的緩和の縮小に乗り出し、楽観的な見通しを裏づける。

 それでも祝杯をあげるのはまだ早い。実質成長率は10年4~9月に年率平均3.4%、11年10月~12年3月には同4.3%を記録したが、いずれも勢いは長続きしなかった。

 またも同様な事態が起きるかもしれない。成長率が加速した主因は在庫の大幅な積み増しだからだ。在庫への投資を除く最終需要の伸びは、13年1~9月で平均1.6%にすぎない。在庫投資が高水準を維持する可能性は低く、成長率は最終需要のさえないペースに収束するとみられる。

 深刻なのは(債務返済優先の)バランスシート不況だ。米経済の7割を占める消費需要は、リーマン・ショック後の景気低迷の大きな要因といえる。実質個人消費の伸びは危機前の水準に届かない。

 過去には自動車、旅行などへの支出が抑えられると、その後に「鬱積された需要」が大きく伸びた。だが、今回はそうなっていない。それも当然だ。米消費者は危機の震源だった。不動産バブルに賭け、含み益で気前よく消費した。足りなければ借金をした。

 住宅、信用のバブルが相次ぎ崩壊すると、米消費者は「日本病」の米国版に直面した。エコノミストのリチャード・クー氏は日本のバブル経済崩壊後、企業部門を中心にバランスシート不況が長引くと指摘した。この分析は米国にも当てはまる。過剰な借り入れを支えた担保の価値が大幅に下がると、クー氏のいう「債務の最小化」動機が生まれ、支出よりも債務返済が優先される。

 類似点はほかにもある。日本では本来なら倒産していた“ゾンビ企業”が経済の健全性を脅かした。米国のバランスシート修復に関する指標には、力強い回復の兆候がほとんどない。家計の所得債務比率は109%で、00年までの30年間の平均を35ポイント上回る。

 個人貯蓄率は13年後半が4.9%で1970~99年平均より4.4ポイント低い。家計のバランスシート修復は途上だ。

 一方、楽観論者は家計の債務返済コストと失業率の大幅低下を材料に、長い悪夢は終わったと主張する。これは希望的観測だ。返済コストが低下したのはFRBのゼロ金利政策のおかげである。家計はなお巨額の債務残高を抱えている。求職意欲を失う人の増加が失業率を下げた。労働参加率の上昇は遅れている。

 米経済はいくらか前進しているが、本格的に回復するにはさらに数年かかるだろう。

((C)Project Syndicate)

Stephen Roach 米連邦準備理事会(FRB)調査スタッフ、香港駐在のモルガン・スタンレー・アジア会長など歴任。著書に「The Next Asia」。68歳。

〈記者の見方〉緩和の幕引き慎重に

 米経済は足元で寒波の影響が懸念されるが、基本的には回復軌道に乗ったという見方が多い。2013年10~12月期の成長率は前期比年率3.2%。FRBは量的緩和第3弾(QE3)の縮小に着手した。それでも金融危機で家計が負った傷はなお癒えていないとローチ氏は指摘する。見方は様々だが、同氏の主張通り、労働参加率が低く、失業率は実勢より低めに出ているとみられる。こうした点にFRBは留意すべきだ。前例のない金融緩和の幕引きを成功させるには慎重さも必要だ。

(編集委員 清水功哉)

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