2014/02/16 本日の日本経済新聞より「風見鶏 見えたかネトウヨの集票力 都知事選61万票の姿」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合・政治面にある「見えたかネトウヨの集票力 都知事選61万票の姿」です。





 「小泉劇場第2幕」などと騒がれた先週の東京都知事選。もっぱら田母神俊雄氏の選挙戦をみて歩いた。今後の政治潮流を読む目安になると思ったからだ。

 欧米では極右勢力が活発だ。フランス国民戦線は2012年の大統領選で過去最多の得票率17.9%を記録。米国でも過激な保守主義を訴える草の根運動「茶会党」が政界をかき回す。

 程度の差こそあれ、日本もこうした世界の趨勢と無縁ではいられまい。

 日本では右寄り勢力の集票力はみえづらかった。左翼の消長は共産党などの得票でわかる。右翼は自民党に投票することが多く、穏健保守層と区分しにくい。

 ネット空間では右翼的な書き込みをする通称「ネトウヨ」が増殖中だ。それが「リア充」(現実社会での充実)になっているか。

 慶応大の田所昌幸教授は「いま日本で起きているのは中韓への反発的感情であって、国民全体の価値意識が大きく右寄りに変化しているわけではない」と分析する。社会学者の古市憲寿氏は「ネット社会はそれほど大きなものではない」とみる。少数の大仰な物言いがネトウヨを大きくみせているというわけだ。

 それでも11年にはネットにあおられた若者1万人がフジテレビに押しかけ、韓流ドラマの放送をやめるように迫る騒ぎがあった。在日韓国人が多い地域でヘイトスピーチが目立ちだしたのもその頃からだ。

 靖国神社にある武器などを展示した遊就館への年間入場者数は昨年、初めて35万人を突破した。昨夏の参院選東京選挙区で維新政党・新風の候補が7万を超す票を得た。よくも悪くもネトウヨは無視できない存在になりつつある。

 政策重視で田母神氏に投票した都民もいたろう。陣営は「都民税減税」「防災強化」など生活重視の公約を掲げ、本人も街頭で「私は本当によい人なんです」と笑顔を振りまいた。

 とはいえ、遊説の聴衆は他陣営と明らかに異質だった。iPadなどを手に集まってくるリュックを背負った若者たち。まるでオタクのオフ会だった。

 その後も普通の選挙戦とはだいぶ違った。有名人をみかけると携帯で写真を撮ろうとするのがよくある光景だが、田母神氏の支持者は色紙持参で揮毫(きごう)を頼んだりするのだ。

 演説が始まると彼らが何を求めて来たのかがよりはっきりした。「減税」への反応はゼロに近かった。田母神氏が「東京には日本人が近寄りにくい場所があります。都知事になったら、こうした地域を一掃します」と訴えると、「そうだ」「やってしまえ」などの声があちこちで上がった。

 日本経済新聞社の世論調査によると、田母神氏の支持者は年齢が若い層ほど多く、20代では舛添要一氏に匹敵する支持を得た。落選が決まってから田母神選対の水島総・本部長に聞くと「新たな政治の流れが生まれた」と明るかった。

 61万票は小さくない数字だ。田母神氏は「新たな保守政党を誕生させたい」と語る。民放の開票速報番組でキャスターの池上彰氏は「自民党支持層の一部が田母神氏に流れた」と解説していたが、むしろこれまで自民党に居候していた右翼が自立を始めたとみる方が妥当でないだろうか。

 15年前の都知事選で純粋無所属だった舛添氏が自公候補を上回る83万票を得ると、自民党は取り込みに動いて2年後の参院選の目玉候補に据えた。田母神氏の61万票も逃がしたくないだろう。ネトウヨは自民党の支持集団になる道を選ぶのか、自主独立でいくのか。その動きが今後の政治に与える影響は小さくない。(編集委員 大石格)

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