2014/02/16 本日の日本経済新聞より「中外時評 越境するメディア統制 中国の「手」が海外にも 論説委員 飯野克彦」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の日曜に考える面にある「越境するメディア統制 中国の「手」が海外にも 論説委員 飯野克彦」です。

中国史本がワシントンポストを買収してから、日本に批判的な記事が配信されるようになりました。この件も含め、メディアを手中に収め、中長期的に統制しようとする中国のしたたかな戦術が透けて見えます。





 北京に駐在していた米ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)のオースティン・ラムジー記者は先月末、ビザ更新の前提である記者証の発行が認められず、中国退去を余儀なくされた。

 中国の仕組みでは外務省が外国記者の記者証の発行に責任を負う。同省の秦剛報道局長はラムジー記者が中国の法令に違反したとして、発行拒否は「法律に基づく措置」と説明した。

 これに対し、中国駐在の外国人記者の集まりである中国外国人記者クラブ(FCCC)は声明で、秦局長の説明は納得できないとの立場を明らかにした。

 「NYTが2012年10月に当時の温家宝首相の親族の不正蓄財疑惑を報じたことに対する報復措置だろう」。外国人記者の間では、こんな受け止め方が一般的だ。この1年半で3人の同紙記者が記者証やビザの発行を拒否されている。

 やはり12年に習近平国家主席(当時は副主席)を含む複数の共産党政権高官の親族の蓄財疑惑を報じた米通信社ブルームバーグも、NYTと同じように中国当局の標的となってきた。

 昨年末には両社の記者あわせて20人以上がビザ更新手続きの遅れに悩まされた。新たに派遣しようとした記者は相次いでビザを拒否された。国内メディアへの統制を強める共産党政権は、海外メディアも露骨に締め付けようとし始めた印象だ。効果はすでにあらわれている。

 「中国を激怒させかねない記事を、ブルームバーグは封印」――。NYTがこう報じたのは昨年11月8日のことだ。

 問題となった記事の一つは、中国一の富豪とも言われる王健林・大連万達集団董事長に関するとされる。共産党政権高官の親族との関係にも触れているらしい。もう一つは高官子弟の外国銀行への就職状況に関する記事という。

 いずれも香港に駐在するブルームバーグの記者たちが、独自の取材と調査に基づいてまとめた。その公表を、ブルームバーグのマシュー・ウィンクラー編集長は差し止めた。

 NYTの報道を受けて同編集長は「記事がボツになったわけではない」と反論したが、期限を定めないで公表を控える措置をとったことは認めている。その後、王健林氏に関する記事を主導したマイケル・フォーサイス記者は休職となり、NYTに転職した。

 米リベラル誌「ニュー・リパブリック」などによると、ブルームバーグは中国大陸で販売した専用端末で特定の記事が流れないようにする仕組みを編み出していた。「コード204」と呼ばれているそうだ。

 ところが、問題になった2つの記事について同社首脳部は、この仕組みを生かして中国大陸の外で公表することも選ばなかった。いかに共産党政権に気を使ったか、うかがえよう。

 ウィンクラー編集長は差し止めの理由として、中国に記者を派遣できなくなる恐れがある、と記者たちに説明した。ナチス政権下のドイツで仕事をしていた外国記者について自ら調べたとして「中国にできる限り長くいられる」ようにする戦略が必要だ、とも述べたという。

 その一方、同編集長の説明からは収益面の心配も随分と伝わってきたらしい。ニュースや財務情報などを流す専用端末は、1台当たり年間2万ドル以上の収入につながるとされ、同社の有力な収益源となっている。

 そして一昨年の蓄財報道の後、中国当局はこの端末を購入しないよう「いくつかの中国企業に指示した」(NYT)。自己検閲とされかねない措置に同社が踏み切ったのは、経営面で切実な理由があったわけだ。

 逆からみると、共産党政権は少なくともブルームバーグには効果的に影響を及ぼすことに成功したといえよう。もちろん、報道の自由を重んじるジャーナリズムの世界では共産党政権にもブルームバーグにも批判的な声が上がっている。

 共産党政権の圧力を正面から受けている海外メディアとしては米欧勢が目立つ。だが実際には、日本のメディアにもその手は及んでいる。今月11日に南京で初の中台政策担当閣僚級会談が開かれた際には、2人の台湾の記者が現地での取材を拒否されるという事件も起きた。

 共産党政権はいつまで、どこまで反動的な政策を推し進めるのか。中国の国内総生産(GDP)が世界一になる可能性が見えてきた今、そのメディア統制は世界的な問題となってきた。

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