2014/02/17 本日の日本経済新聞より「グローバルオピニオン 「安易な成長」は終わった 世界銀行専務理事 スリ・ムルヤニ・インドラワティ氏」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「「安易な成長」は終わった 世界銀行専務理事 スリ・ムルヤニ・インドラワティ氏」です。





 経済成長が戻って来た。米国、欧州、日本の経済が同時に拡大。世界の成長率は2014年が3.2%で、前年の2.4%を上回る見通しだ。

 先進国の景気回復は喜ばしい。だが、過去5年間の世界経済をけん引してきた新興国は、旧態依然のままで高所得国と競争できるのだろうか。

 答えは「ノー」だ。まるで苦しい練習を避け、手っ取り早く好成績をあげようとして薬物に手を出すスポーツ選手がいるように、一部の新興国は痛みを伴う経済・金融改革を先送りして短期資本を受け入れ、成長してきた。ところが、この「安易な成長」を助けてきた異例の金融緩和を米連邦準備理事会(FRB)が縮小し始めた。新興国は態度を改めないといけない。

 FRBの引き締め転換が現実的になった時点で、世界銀行は新興国を含む途上国への資本流入を予測した。それによると、途上国の国内総生産(GDP)比で13年は4.6%だったが、16年には4%前後に落ち込む。今後の状況によっては、この減少ペースが加速する可能性もある。

 その場合、改革を怠ってきた新興国の成長に急ブレーキがかかりかねない。巨額の経常赤字や対外債務を抱える新興国の経済には、金利上昇で深刻な圧力が加わるだろう。

 13年にはFRBが量的緩和第3弾(QE3)を縮小するとの推測が流れただけで、ファンダメンタルズ(経済の基礎的要因)が弱いとされる国の通貨や株式の市場は打撃を受けた。代表例は「脆弱な5カ国」と呼ばれるトルコ、ブラジル、インドネシア、インド、南アフリカである。

 さらに最近ではアルゼンチン通貨の急落、中国の成長鈍化の兆候などを材料に新興国経済の強さに対する懐疑論が市場で再び浮上してきた。

 それでも大半の途上国にとって状況はそう悪くない。多くの途上国の金融市場には大きな圧力がみられない。途上国の6割以上ではQE3の縮小観測が流れた13年の時点でも通貨が上昇した。こうした国の多くで改革が奏功、直接投資をはじめとする安定した資本流入を呼び込んでいる。

 例えばメキシコは13年、エネルギー市場を開放した。政治的に難しい判断だったが、おかげで同国は「脆弱な5カ国」に加わらずに済んだ。

 高所得国の力強い成長は新規投資の増加などを通じて途上国に成長機会をもたらす。だが、好機を生かすには企業の競争環境を整える健全な国内政策、対外的に魅力ある貿易制度、健全な金融部門――などの整備が必要だ。

 政治家にとって困難な時期の改革は容易でない。だが成長し国民の福祉を高めるには改革が必須だ。危機を乗り切ることと勝者として復活することはまったく別なのだ。

((C)Project Syndicate)

Sri Mulyani Indrawati 世銀の最高執行責任者(COO)兼務。インドネシアの国家開発企画庁長官、財務相など歴任。米イリノイ大経済学博士。51歳。

〈記者の見方〉新興国の改革不可避

 FRBの緩和縮小について、通貨が売られ始めた一部の新興国の金融当局者は米国を「身勝手だ」と非難した。その言い分は「緩和マネー」の流入が国内需要を想定以上に高め、対外債務と経常収支赤字の膨張につながったことが変調の背景にあるという不満でもある。だが、こうした不均衡を是正するための国有企業の民営化や国内生産基盤の拡充は先進国に脱皮する過程で避けられない。苦境を改革のバネにできる新興国だけが、引き締めに転じ始めた世界経済の中で生き残れる。

(編集委員 加賀谷和樹)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です