2014/04/09 本日の日本経済新聞より 「法人減税 展望と課題(上)」

今日は、日本経済新聞13版の5面(経済)にある「法人減税 展望と課題(上)」から、要点と所感を整理する。

ここでは2者の識者見解が掲載されているが、このうち、在日米国商工会議所税制委員会共同委員長のマーク・リム氏のものを取り上げてみる。

マーク・リム氏によると次のとおりだ。

  1. 日本の法人実効税率は海外と比べて相対的に高い。そのため、米国の多くの企業がアジアに来る場合、税率が低いシンガポールや香港にアジアの拠点を設立している。よって、国際競争の観点から日本は税率を下げ、競争力を高める必要がある。
  2. 日本は法人税以外の税制、例えば役員報酬が損金不算入となる点、つまり企業の正当な費用が損金にできない面があり、法人に対して相対的に厳しい。
  3. 税率以外では、労働市場の流動性改善も競争力向上に必要だ。
  4. 新しい事業に先行投資し、成長過程にある企業にとって、欠損金の繰り越しは不可欠な制度。これを縮小すると、どこに負荷がかかるか、こういう視点が必要。

以上について、筆者の気づきを整理した。

  1. 日本の企業が国内で本社を設置する場合、東京が圧倒的な支持を集めている。社会制度が均一である国内では、社会基盤が最も整っている東京が有利だからである。一方、アジアの各都市との比較では、社会基盤だけでなく、法人を取り巻く諸制度も材料となる。東京と各都市の間でこれらに相対的な差があり、それが今日の結果を招いているものと思われる。過去10年以上に渡り、米国企業における都市選択においてこのような結果が続いているが、日本では各都市に対して比較劣位となる部分の底上げが進んでいない。米国企業の意思決定において、社会基盤以上に法人を取り巻く諸制度を重視している現実があるにもかかわらず、日本は政治主導でそれを克服しようとせずに、古来からある比較優位となる自国の強みだけで戦ってきた。今となっては、アベノミクスの第三の矢に期待したいが、この矢は、矢のように瞬時に放たれるものではない。安倍総理は、矢と異なるものを矢と称してしまった印象面でのハンデを覆す必要があるが、そのためには既得権益に対して大鉈を振るわなければならない。
  2. 役員報酬の損金不算入は、国家税制の徴収先として法人を主なターゲットにして構築され、そこから生じた副産物である。日本は、法人からいかに多くの税を徴収するかという税制を長らく続けてきた。途中で消費税が導入されたが、これを目的税化しないことには世論が納得しなかった事情があり、ゆえに法人からの徴税強化の名残があちこちに残っている。筆者は、長期的な国家財政安定のためには、稼ぐ力を持つ法人の諸環境を改善する必要があると考えている。ただし、その改善メニューの中には、個人への所得移転スキームは必須である。そして、個人の損金対象を現状よりも大幅に広げ、個人消費に関する税の控除対象を増やす一方、ストックされる所得に対しては課税強化を行う必要があると考えている。
  3. 労働市場の流動性に関してはゾンビ企業の延命、これによる劣悪な雇用環境への労働者の封じ込め、彼らの景況感に対するネガティブなイメージによる不行動が問題視されていた。現在は2012年冬以降の市場の好転により、労働移動が活発化してきており、労働者サイドの問題点はひとまず収束しつつある。企業サイド、例えば、雇用調整助成金などの保護策を見直す方向、及び破産処理などでの再チャレンジをより行いやすい諸制度の整備で動きがみられる。しかし、脈々と受け継がれてきている「破産=社会からの抹殺」というネガティブイメージを払しょくしない限り、効果を期待しにくい。そのためには金融窓口から企業へのアプローチの在り方がカギとなってくる。金融機関が冷たい限り、破産に怯える経営者の恐怖心は増長したままだ。
  4. 欠損金の繰り越し制度は、企業における新事業の認定制度を創出し、それに付帯する特典として見直す。育成すべき事業にはこの認定制度で補助金も獲得可能なスキームとするのが望ましいと考える。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です