2014/04/11 本日の日本経済新聞より 「米、牛肉関税を容認」

TPP交渉 数%への下げ条件

環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を巡り、甘利明経済財政・再生相と米通商代表部(USTR)のフロマン代表は10日、2日目の協議をした。焦点の牛肉関税で日本は大幅引き下げに、米国は全廃にこだわらない姿勢に転じた模様。だが、条件面での隔たりはなお大きく、合意には至らなかった。

今日は、日本経済新聞14版の3面(総合2)にある「米、牛肉関税を容認」から、交渉の行く末を推察する。

これまでの日米のTPP交渉では、農産品と自動車という利害が異なる部分での対立が顕著であった。TPP交渉の初期から双方が真っ向からぶつかる展開が長く続き、この推移をみた市場関係者がアベノミクスの第3の矢の成果を疑問視するなど、マイナスの影響が出ている。

しかし、今月に入り、2005年からオーストラリアと交渉を続けていた経済連携協定(EPA)が大筋合意を見ることとなり、豪州とは冷凍牛肉で現38.5%の関税から18年目には19.5%に、冷蔵牛肉も15年目に23.5%になるよう、段階的に下げていく内容で合意した。

国内市場では米豪の牛肉が市場に広く流通しており、両国は牛肉に関して競合相手である。今回、豪州が先行して日本と妥結した結果を受け、それに準じた形を米国に求める日本が主導権を握る格好となった。

グローバリゼーションやダイバーシティにより、世界経済が多極化するにつれ、欧米諸国と政治理念の異なる中国やロシアなどが独自の主張や行動を強め、米国の覇権が弱含んでいる今般、オバマ米国としては、アジア重視の政策結果を残したい状況にある。4月の日本から始まるアジア歴訪に備え、米国にとって、TPPでの日本との交渉妥結は最も望ましい結果であるが、TPPの理念から遠くかけ離れた条件で妥結することはTPPそのものの実効性を損なうため、回避したい状況にある。

その難しい局面を迎えている米国にとって、今回、豪州との交渉結果を引っ提げて強気で交渉に臨んだ日本に、交渉の主導権を握られたことは非常に苦しい状況であると考えられる。今後、米国が交渉のイニシアチブを持つことが可能だが、筆者の見解では、米国にとって極めて選択の難しい二者択一を迫られている状況と思われる。

仮に、米国が交渉条件を切り下げず、日本と対峙したまま4月の日本訪問を迎えた場合、国賓であるオバマ大統領が日本の地で世界に放つメッセージは次のものと予測される。

  • 日米同盟の再確認
  • 日米韓の連携

上記は、バイデン副大統領でも十分にこなせる役割である。何ら歴訪成果が残らない。歴訪により、レームダック大統領であることの証明だけでなく、覇権国家としての威信が更に失墜してしまう恐れがある。

一方、日米間のTPP交渉が妥結した場合は、理念を異にする中国やロシア、理念を共有する国々、それぞれに価値と重みを届けるメッセージとなる。ただし、日本が交渉権を握っている以上、米国は相当な妥協により妥結したものとなるはずであり、これによりTPPの理念が著しく後退することは、TPPを静観してきた中国の嘲笑を買うことになると思われる。

二者いずれによっても、日本の消費者はすぐに恩恵を享受できるものではない。既に製造業などモノづくりにおいてグローバル化が進み、競争の結果、商品の付加価値が上がり、調達コストが下がり、最終消費者は様々な恩恵を受けてきた。しかし、TPPが日本国内の市場開放で妥結しない限り、農産品に関しては今後も大きな恩恵を受けられず、また、日本の強みである自動車産業で優位性を獲得できず、国民一人当たりの平均的な便益は上がらないものと考えられる。

日本という国家は、時代の流れの前に立ちすくんだままであり、立ち行かなくなっている。政治家は、思想や原理にこだわるのではなく、時代の流れの先、つまり未来像を見据え、しっかりしたロードマップを描き、回り道することなくまっすぐ突き進んでいく必要がある。そして、その過程を検証し、選挙によって正していくのが国民の役割である。両者とも目先の事象にとらわれ過ぎ、大局観というものを全く感じないことを大変憂いている。

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