2014/04/20 本日の日本経済新聞より2 「日米関係の未来は」

今回は、日本経済新聞13版の9面(日曜に考える)にある「日米関係の未来は」を引用し、所感を整理する。

60年以上にわたって同盟を結び、人間に例えれば熟年夫婦の域に入った日本と米国。難しい交渉が続く環太平洋経済連携協定(TPP)、中国軍の台頭に揺れるアジア太平洋、そしてウクライナの危機など課題は山積みだ。23日からのオバマ米大統領の来日を前に、知日派のマイケル・グリーン氏とアジア太平洋研究の第一人者の白石隆氏に聞いた。

マイケル・グリーン(Michael Green)氏ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で博士号。米国家安全保障会議の元アジア上級部長。52歳。

■グリーン氏「米のアジア関与は不変」

――オバマ大統領は来日で何をめざしていますか。

「アジアに関与を深めるリバランシング(再均衡)路線が変わらないと印象付けることだ。具体的な成果としては、日米韓関係の強化や環太平洋経済連携協定(TPP)の日米合意をめざしている。先月、日米韓の首脳会談が開かれた。オバマ大統領が日本と韓国に行くことで、さらに日韓の改善を勢いづけたいと考えている。これにより、日米と韓国にはくさびを打てない、と中国に思わせる狙いだ」

――TPPはいつごろ実現できるとみていますか。

「TPPを実現しようとするなら、今しかない。来年になったら、もっと難しくなってしまう。オバマ政権としてもそのことは分かっている。問題は今年秋の中間選挙をにらんだ思惑だ。(与党である)民主党は苦戦しそうなので、選挙基盤である労組などの支援を頼りにしている。だが、TPPは労組にすこぶる評判が悪い」

――昨年12月には安倍首相が靖国神社を参拝し、日米にきしみが生じました。きしみは解消されましたか。

「日米の世論調査によると、日米同盟への支持はとても強い。両政府の関係も実務レベルでは良い。それでも閣僚レベルではある種の不信感が生まれている。TPP、集団的自衛権の容認など、安倍政権の政策はいずれも米国の国益になる。ところがワシントンのメディアは歴史問題を誇張しがちで、安倍首相にも批判的だ。オバマ政権の首脳陣は、こうしたイメージに影響されやすい」

――では、日本はどうすればよいのでしょうか。

「安倍政権はまず、米国内の政治の空気を極めて注意深く、観察すべきだ。日本では、米国内の韓国や中国ロビーが歴史問題をあおっているという見方がある。だが、彼らの影響力は日本が思っているほどは大きくない。単純な見方に走らず、冷静に米世論の動きを見守る必要がある」

――尖閣諸島をめぐる日中対立では、日米の結束が試されています。

「中国は尖閣諸島で緊張を高め、日本の信用を落とそうとしている。紛争に巻き込まれかねないと思わせれば、米政権が日本を抑えにかかったり、日中を仲介したりすると踏んでいる。そうなれば戦略的に中国の大勝利だ」

■「歴史問題、戦略的な対応を」

――中国は日米の離間などを狙い、歴史問題の反日宣伝にも拍車をかけています。

「オバマ政権の首脳らが靖国参拝など歴史問題を懸念するのは、日本が正しいかどうかを問題にしているからではない。日本が民主的で自由な国であることは、誰もが十分すぎるほど分かっている。米政権が恐れるのは、歴史問題で、日本が中国の宣伝を利する言動に出てしまうことだ。日本が米国や他の国々を味方につける方法は、歴史問題で100%正しいと主張することではない。日本は歴史を政治問題化せず、戦略的に対応できる姿勢をみせることだ。安倍政権にはそうした能力があると思う」

――中国は、米中対等を原則とする「新型大国関係」を唱えています。事実上、米中でアジア秩序を仕切る構想のようにみえますが、オバマ政権は拒否していません。

「オバマ大統領は、中国が考えるような新型大国関係を受け入れることはないだろう。中国にどう対処すべきか、彼はよく分かっていると思う。オバマ政権の対中戦略は、ブッシュ前政権と同じだ。日韓、オーストラリアとの同盟を強め、アジアに関与していくというものだ。ただ、バイデン副大統領や一部閣僚らの昨年の発言が、新型大国関係に前向きのような誤解を与えた。あれは誤りだった」

――安倍政権はロシアとの関係を維持し、北方領土交渉を進めようとしています。ウクライナをめぐる米ロ対立は日米にどう影響しますか。

「日本がロシアと良い関係を持つことは、長い目で見れば米国の利益にもなる。中ロが緊密になることを、米国は望まないからだ。中国をにらみ、米ロはアジアでは協力できる余地がある。だが、トランプに例えれば、ロシアは(役立つかどうか分からない)ジョーカーのようなものだ。期待すると、失望させられることが多い。日本はロシアに強い期待を抱きすぎている気がする。ロシアがクリミアを力ずくで併合したのは、まさに中国が尖閣諸島にやろうとしていることと同じだ。中国に誤った教訓を与えるようなことがあってはならない」

■白石氏「中国への警戒感を共有」

――オバマ大統領の来日は、日本にとってどんな意味がありますか。

「オバマ政権は日米、米豪、米韓を基軸に、アジア太平洋に安全保障のネットワークを築こうとしている。東南アジアの国々、さらにはインドもこのネットワークに組み込み、中国の台頭によって地域のパワーバランスが崩れるのを防ごうとしている。日米が協力してこの路線を進めると確認することが、首脳会談のとても大切な目的になる」

白石隆(しらいし・たかし)氏コーネル大で博士号。日本貿易振興機構アジア経済研究所長。経済・安保両面からの分析が持ち味。64歳。

――日米は会談に向けてTPP交渉も急いでいます。

「日米が軸になってアジア太平洋に新しい貿易ルールをつくる。オバマ政権はその枠組みとしてTPPを位置付けている。日本は農産物5品目をあくまで優先するのか、それとも米国と大きな戦略を共有し、一緒に行動するのか。それが問われている」

――中国をにらんだ安全保障協力も大切なテーマです。

「中国が台頭するなか、南西諸島が防衛の最前線になり、沖縄はこれから戦略的にますます重要になる。その一方、沖縄に米軍基地が集中する現状を、いつまでも放置することもできない。この矛盾を解消しなければ、10年、20年先まで安定して、米軍の駐留を維持するのは難しい。沖縄県内にどうしても必要な米軍の駐留は何か。日米で突き詰め、それ以外の部隊や訓練を県外で受け入れる努力を始めなければならない」

――米政権によるアジアへのリバランス路線を息切れさせないため、日本はどう協力していくべきでしょうか。

「たとえば、フィリピンのスービック湾やベトナムのカムラン湾は、南シナ海の要所にある。両国とも中国をにらみ、米軍との交流を増やそうとしている。こうした国々の港湾整備のために、日本が政府開発援助(ODA)を使い、支援するのは一案だ。また、東南アジア諸国の沿岸警備力は弱く、中国の監視船に十分に対応できない。海上監視の能力を高める支援を提供することも検討に値する」

■「新たな秩序づくりで連携」

――尖閣諸島をめぐる緊張に対応していくうえでも、米国との連携が欠かせません。

「尖閣諸島で深刻な危機が起きたとき、米軍はどこまで直接的に介入するか。それは、危機がどう生じるかによっても変わってくる。米大統領は国内の世論や議会の動きを踏まえて、判断するからだ。日本が挑発したと見られれば、米世論から介入への支持を得るのは難しくなる。日本としては、中国を挑発していると国際的に見られるようなことは慎重のうえにも慎重を期して、やらないようにし、武力行使の口実を先方に与えないことが大切だ」

――中国は米国向けにも歴史問題の反日宣伝を加速しています。

「安倍首相は先月、(慰安婦問題に関する)河野談話や(戦争への反省と謝罪を表明した)村山談話を、見直すことはないと言明した。これで、歴史問題をめぐる日米のあつれきに歯止めがかかると期待したい。歴史問題をのぞけば、安倍首相の外交はうまくいっている。心配なのは首相の補佐官などから、しばしば、歴史問題などで不用意な発言が出ることだ。ワシントンからみれば、『側近の発言が安倍首相の本音なのではないか』と思われかねない」

――日本が米国との結束を保つには、米中の動きにも注意を払う必要があります。

「中国は歴史問題を使って日米を分断し、アジアで日本を孤立させようとしている。同時に、南シナ海で実効支配を積み重ね、東南アジアでの影響力を広げる戦略だ。すでに陸続きのラオス、カンボジア、タイなどではかなり、存在感を強めている。韓国も中国になびいている。こういう状況にどう対応するか。オバマ大統領と安倍首相でしっかり、話し合うことが大事だ」

――シリアやウクライナ危機は、「世界の警察」としての米国の衰えも映しています。米国に安全保障を頼る日本にとっても人ごとではありません。

「戦後、アジア太平洋は米主導の平和を享受してきた。パワーバランスが急速に変化するなか、それが難しくなるのではないか、と多くの国が見ている。地域の安定のためには、もっと多国間の安全保障ネットワークをアジア太平洋に築くしかない。米国もいま、同盟国や友好国とそうしたネットワークをつくり、その上で中国に関与しようとしている。日本は積極的に米国と連携し、新しい秩序づくりに加わるべきだ」

<聞き手から>米世論の「日本離れ」懸念

昨年夏、外務省が米国で実施した世論調査で、衝撃的ともいえる結果が出た。日米安保条約を維持すべきだとの答えが、前年から急減してしまったのだ。このままでは、尖閣諸島の日中紛争に巻き込まれてしまう――。こう恐れる米国人が増えたことが、条約維持論の後退につながったとみられる。

グリーン氏と白石氏がそろって指摘したのも、この危険性だ。尖閣をめぐる日中対立が深まれば、米世論の“日本離れ”が広がり、結局、中国の思うつぼになるというわけだ。両氏は似たような理由から、歴史問題についても慎重な対応を日本側に促した。

グリーン氏は今後のシナリオについて、米国は「対等な米中関係」を認めず、アジアの主導権をにぎり続けるとの見方をにじませる。これが日本にも望ましい展開に違いない。が、中国が強大になる中、どこまで実行できるかは分からない。その意味で、白石氏が唱える日米を軸とした新たな安保ネットワークも、真剣に考えるときにきている。(編集委員 秋田浩之)

中国の国家目標は世界覇権であり、国内外から中国共産党が干渉を受けない体制を構築することである。一方、日米関係は日本の安全保障だけでなく、今やアジアの安全保障に大きな影響を及ぼす関係である。この日米間の未来を見据えるためには、中国とどう対峙するかが重要である。中国という存在を前にして日米関係が揺るげば、日米関係の未来など見据えられるものではない。

中国との関係を考える際に、ロシアについて整理しておく必要がある。ロシアは衰退国家であり、中国を制御する力はない。ロシアは、中国との関係で優位なポジションを足掛かりにし、延命を図るだけにすぎない。これは、東シナ海、南シナ海でのアジアの紛争にロシアが積極的に介入してこないことからも明らかである。

中国は、日本の無力化、次に米国の相対的地位低下、そして自国のプレゼンス向上を狙っている。それを味方なく、事実上、単独で行っている。ロシアについては先に述べたとおりであるが、そのほか、中国の経済力をして既に凌駕されている国家は、中国の影響力を前にして押し黙っているだけであり、決して味方がいるわけではない。

こうした動きに対して、防衛反応を示すことは絶対に必要である。ただし、守っているだけでは攻勢はやまない。必要なのは守りと同時に攻めることである。と言っても、戦争を仕掛けるという意味ではない。戦争という暴力に訴えなくとも、中国の弱点を突くことで十分に弱体化させられる。

中国の構造的な弱点は内憂外患にある。

国民を独裁統制下においているため、不満のエネルギーがマグマとなって地下にたまっている点が内憂である。常に力で押さえ込み続けなければならない。

また、日本に挑発的な姿勢で臨み、変動相場制への移行など経済政策でも米国の干渉に真っ向から対峙した結果、米国から逆にTPPという経済封鎖を仕掛けられている。これが外患である。

さらに、中国は日本同様、資源を外部に依存しているところも弱点である。一方、米国はシェール革命で、今後10年以内にエネルギー輸入国の地位を返上する公算が高い。こうした面からも、現状のままでは戦争の道を選択することは考えにくい。南シナ海や東シナ海で領有権を主張し、資源開発を進めているとの指摘もあるが、現状のまま戦時下に入ればこれらは防衛できず、放棄せざるを得ない。

米国はアジアへのリバランシングを明言するだけでなく、防御姿勢をとる日本と歩調を合わせ、相手に見える動きを起こすべきである。尖閣は日米安保の対象ということを明言したのであれば、次は行動である。排他的経済水域に侵入した中国の艦船に対して、安全保障の観点から協働して防衛参画すべきである。このように、コミットされている危機には軍事力も行使しつつ、積極的に介入することが必要である。忍耐をもって動静を注視するのではなく、針の穴を大きくしようとする中国の試みには、きちんとしたアクションを起こす必要がある。

こうした実際の行動によって、日米関係の未来がある程度予測可能にしておく必要がある。今のままではあまりにも可視し辛い。

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