2014/04/21 本日の日本経済新聞より 「新たな冷戦は起きない」

ここでは、日本経済新聞14版の4面(オピニオン)にある「グローバルオピニオン 新たな冷戦は起きない」を引用し、所感を整理する。

ロシアのクリミア編入、欧米による対ロシア制裁、ウクライナ情勢がさらにエスカレートする可能性など、今起こっていることは2001年の米同時多発テロ以来最も重要な地政学的出来事だ。ウクライナ問題は米ロ関係の転換点となった。さまざまな形の東西対立が避けられず、欧州の安全保障、ロシアの安定、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)の将来、そして世界のエネルギー市場に影響が及ぶことになる。

ただ、緊張が続き、悪化する公算が大きいと思われるものの、これは「新たな冷戦」にはならないだろう。

まず、ロシアは強大な友好国を持たないし、新たな友好国を獲得する力もない。国連総会がロシアのクリミア編入を無効とする決議案を採択したとき、ロシアの側についたのはわずか10カ国だった。

またロシアの昨年の経済成長率は1.3%にすぎず、資源輸出への依存度が高まっている。これは、世界的なエネルギー価格の上昇という可能性の低いシナリオが実現しない限り、成長率が改善しないことを意味する。

ロシアは核保有国だが、旧ソ連ほどの軍事力はない。現在、米国の軍事支出はロシアの約8倍にのぼる。ロシアは近隣諸国に危害を及ぼす力はあっても、冷戦規模の力を誇示することはできない。

ロシアの最大の問題は、中国が信頼できる反西側同盟国になりたがらないことだ。中国がこの対立で一方の側を支持しても得られるものはほとんどない。中国はロシアからのエネルギー輸入を増やしたいと考えているものの、モスクワに接近して最大の貿易相手(EUと米国)と敵対しようとは考えない。

実際、中国はウクライナ危機で最大の(そしておそらく唯一の)勝者だ。欧州がロシアのエネルギーへの依存度を低下させようとするなか、中国はすべての国と実務的な関係を維持し、優位な立場で価格交渉できる。米国が東アジアより東欧に注目することも中国にとって有利だ。中国は、ウクライナの分裂につながるような行為に対して慎重に行動するだろう。中国はチベット自治区や新疆ウイグル自治区のような不安定な地域で同様の自治要求を引き起こすいかなる前例にも反対しているからだ。

冷戦にはならなくても、ロシアは西側の外交計画の無効化を図ることはできる。シリアのアサド政権に対し、化学兵器廃棄や引き渡しの要求を無視するよう働きかけることができるし、さらに金融・軍事支援を提供することもできる。しかし、ロシアがこの壊れた国を立て直すためできることはほとんどない。

ロシアはまたイランの核協議に打撃を与えようと画策することもできる。しかし、核合意をテコに国内経済を再建したいと考えているイランに合意破棄を説得するのは容易でないだろう。

新たな冷戦は起きないが、それは朗報とばかりも言えない。かつての東西冷戦時代は西側と旧ソ連の対立によっていや応なしに国際秩序が生まれ、国際政治は比較的予測が容易だった。過去6年間、米国の深刻な金融危機、ユーロ圏の動揺、北アフリカと中東の動乱、新興国国民の不満の高まり、そしてウクライナをめぐる東西の危険な対立と、予測できないことを次々に経験してきた世界では、予測の可能性が少しでも高まることは歓迎されるかもしれない。

イアン・ブレマー(Ian Bremmer)世界の政治リスク分析に定評。ユーラシア・グループは米調査会社。著書に主導国のない時代を論じた「『Gゼロ』後の世界」など。44歳。

ブレマー氏は中ロの立ち位置や現在の状況から、「新たな冷戦は起きない」と思料している。ただし、予測可能性が冷戦時代ほど高くないことはリスクとしている。

これらの考察は非常に含蓄に富んでおり、大いに参考になる。

実際、筆者も決定的な冷戦は起こらないと考えている。ロシアを除き、どの国も経済への影響を恐れているからである。だが、中ロとの政治的な対立は収まるとは考えられない。

中国について言えば、政治的リスクだけでなく、バブル経済へのリスクも懸念されることから、この国のカントリーリスクは昔と比べ、相対的に高い。このリスクをヘッジする手段は、投資の多様化、多角化であり、結局、パッシング・チャイナに行きついてしまう。

中国としては国内政情安定のためにも継続的な経済発展が必要であり、パッシング・チャイナを回避したいはずである。そのため、革新的利益を微妙に変化させながら、そして、対峙する相手を変えながら、経済安定策が叶う政治スタンスをとってくるものと思われる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です