2014/05/23 本日の日本経済新聞より 「第20回 アジアの未来 国を開き広く連携 摩擦越え共存の道」

今日は、日本経済新聞12版の8~9面(特集)にある「第20回 アジアの未来 国を開き広く連携 摩擦越え共存の道」から、要点と所感を整理する。

22日に開幕した第20回国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社、日本経済研究センター共催)では、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の早期妥結などに期待する声が相次いだ。一方、南シナ海や東シナ海で高まる緊張の懸念解消へ、対話の必要性が多く聞かれた…

以下、各国代表レベルの演説要旨である。一部は意訳、一部は原文に即した引用を行う。

安倍首相

この20年、アジアは多事多難を乗り越え、成長してきた。例えば、インドネシアはこの20年で1人あたりのGDPにして3.4倍の成長を遂げ、40歳には成長の手ごたえがある。一方、唯一例外だったのが日本。日本の40歳以下には成長の興奮と縁が薄かった。日本の未来を担う世代たちに希望と躍進、誇りと力、そして夢を象徴するアジアの一員として堂々、胸を張って進んでいく力を備えてほしい。それが私たち政治家の責任。

改革は前進しており、国家戦略特区、電力自由化、農業改革、労働制度、法人税改革、コーポレートガバナンス、年金制度改革など多様だ。

日本のカギは、オープンネス、チャレンジ、イノベーションであり、6月にはアベノミクスの3本目の矢を充実させるプログラムを打ち出すが、その根底にもこの理念がある。

改革を成功させるために、新たな触媒を導入し、新しい化学反応を随所で起こす必要がある。経済の開放としてASEANとの経済連携協定(EPA)、オーストラリアとのEPA、環太平洋経済連携協定(TPP)、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)などがあり、大きく踏み出す時が来た。

日本は女性が光り輝く社会となるよう変化を始めている。子育ての楽しみと若い男女のキャリアの追求がどちらも味わえ、あるいはそのどちらも妥協しないで済むような革新である。

アジアをもっと豊かに、もっと自由で、個人の創造力がもっと尊ばれる場所とするため、日本には発揮できる力があり、果たすべき役割があり、アベノミクスはそれを実現させるためにある。

マレーシア ナジブ首相

アジアの世紀が実現し、世界の中核になりつつある。今後はバブルを起こさずに持続可能な成長を実現できるかを考えるべき。

重要なのはまず、経済統合。ASEAN共同体で統一的な市場を作ること、そしてTPPの妥結に期待する。RCEPも含め、アジアと世界の結びつきはより強固になる。

アジアで投資機会が増える一方、シャドーバンキングなどのリスクに対応すべく国内の改革、統治や信用の管理が大切。

経済格差の解消のために、高い教育、セーフティネットの構築、適切な援助、腐敗への対応で政治の意思が必要。

アジア各国の軍事費が増える中、紛争リスク回避のために競争的な軍拡に対処しなければならない。多国間で国際法に基づき外交的解決を求めることが重要。

シンガポール リー首相
20年後のアジアでの重要なプレーヤーは米国、中国、日本の3か国で変わらないだろう。だからこの3か国が今後どうなっていくのかを見ることが、アジア全体を見通すときの議論の土台になる。

米国は衰退し続けるとの予測もあるが、米国は苦境に陥るたびに立ち直ってきており、20年後も米国は世界の超大国であり続け、アジアに関与し続け、大きな投資を行うだろう。ただ、米国の現在の内向きな傾向や政治の党派争いも改善されるか不確実だ。

次の20年にアジアで起こる最大の変化は中国の影響力の拡大だろう。世界銀行は中国が今年、購買力平価ベースで世界最大の経済になると予測している。さらに多くの中国企業が世界の主要企業になり、人民解放軍も中国の経済や力に見合った軍隊になる。

しかし、中国社会は豊かになる前に老いる可能性が高い。中国が迫られる改革には見習うべきモデルがなく、手探りで道を探すしかない。

日本はバブル経済崩壊後、20年にわたって難しい時代を過ごしたが、安倍晋三首相の3本の矢により信頼を取り戻し、経済を再建するために難しい改革に取り組んでいる。だから20年後も日本は主要国であり続けるだろう。

日本も中国と同じく高齢化の問題を抱える。生産性を改善し、女性の就労を促すことで経済の改革を進める必要がある。

この3か国の傾向から、アジアの将来には良いシナリオと悪いシナリオが考えられる。

良いシナリオでは、米国がアジアに積極的に関与し、中国は国際法や国際的な規範を守りながら力を増す。日本の経済も回復し自信を取り戻す。TPPなどにより、アジア太平洋地域の自由貿易という目標に近づく。

悪いシナリオは、中国が膨張することであり、地域の秩序に収まりきらなくなることだ。東シナ海や南シナ海で領有権争いが続き、中国と周辺国の間で協力関係を築けなくなる。各国でナショナリズムが台頭、緊張が高まり、経済面でも保護主義が広がる。このシナリオではだれも利益を得られない。

カギを握るのは米中関係と、アジア各国のナショナリズムの行方だ。米国のオバマ大統領と中国の習近平国家主席は両国には摩擦や紛争もあるが、お互いに依存していることを認識している。

アジアで戦争が起きないとは言い切れない。尖閣諸島や南シナ海での領有権問題での突発的な衝突や事故が戦争につながる可能性がある。朝鮮半島情勢もリスクだ。

アジアは危機を脱却するたびに強くなってきた。リスクはあるが全体として悪いシナリオの多くは回避できると信じている。米国はアジアで大国としての地位を捨てることはない。平和と繁栄が共通の利益であるのは大国も小国も同じだ。明るい未来を得るために手をたずさえていこう。

インドネシア マヘンドラ投資調整庁長官

新興国が商品やサービスの輸出によって高成長を研げる経済モデルは、世界的な経済危機により転換を迫られており、内需や地域内向けの需要にもっと焦点を当てた新しいモデルが必要だ。

インドネシアの最近の経済成長は、こうした転換に基づいており、GDPのうち、輸出は25%で、国内消費が60%近くを占めている。内需の成長により国内外の投資を引き付けている。

輸出主導型の経済では国際競争力のある産業セクターしか成長しないが、内需主導経済ならバランスのとれた成長が可能だ。

インドネシアは最近、外国企業に開放する産業のリストを公表したが、これは国内産業を保護する経済ナショナリズムではない。我が国が導入した政策はかつて先進国も採用したものであり、移行期間が必要なことを理解してほしい。

過去3年間、インドネシアでは記録的な投資流入があったが、国内産業は十分に育たなかった。今は持続可能な成長を目指し、経常赤字の削減と、内需向けの投資促進に取り組んでいる。

ベトナム ダム副首相

アジアはダイナミックな成長を遂げる一方、地域間の不均衡、貧富の格差、環境保護と成長の不調和といった問題があり、これは各国の結束が必要。

世界金融危機とその後の経済低迷により、全ての国は持続可能な開発を目指さなければならないことを知った。それは市場の開放と自由化を進めることにより実現でき、保護主義に戻ることではない。

FTAやTPPなどを通じた経済統合でアジアと世界の関係が強化されていく。ベトナムはTPPに積極参加する。

輸送の連結も課題だ。鉄道、道路、航空輸送システムは不完全であり、各国が協力し官民パートナーシップを実現し、インフラを整備していかなければならない。

ICTにより世界のつながりができる一方、サイバーセキュリティは複雑になっており、各国間で緊密な協力を進め、犯罪と闘う必要がある。

この10年でアジアで経済の台頭が見られたのは平和と安定の時代があったからだ。今、世界の貨物の4分の1が通過する南シナ海では、海上航行が大きな脅威にさらされている。中国が露骨に石油採掘装置を打ち立て、何百隻もの船でベトナムのEEZまで近づいてきた。

ベトナムは強く平和を望む。あらゆる手を尽くして中国に対して船の撤収を求めてきた。ベトナムは常に中国との友情関係を重視し、拡充しようと努めてきた。主権の侵害には断固として抗議する。国際社会も中国の行動に懸念を示してきた。南シナ海における平和と安全保障、航行の自由を守るために指示をしてほしい。

アジア経済について(談 アジア開発銀行中尾武彦総裁、スリン前ASEAN事務局長)

(中尾)アジア経済は強固で6%の経済成長を続けている。中国は減速したとしてもシャドーバンキング問題に対処する能力もあり、中間層の消費も強い。米国の量的金融緩和の縮小などの問題があるが、アジア経済には復元力があり、全体的には順調。フィリピンが7%の成長を続けるなどASEAN経済は前よりも強くなっている。中国の労働者の賃金も上がっており、非常に良い環境。貿易面でも非関税の品目が増え、ASEANは驚くべきぺースで統合に向けた動き鵜が進んでいる。一方、投資や金融取引のルール、人の移動、これらの課題については少し遅い。ただ、2015年末までに課題を達成できなくとも失敗とは言えない。統一市場に向けて着実に進んでいるのがASEANの強さで、アジアの成長の中心になっていく。ここに日本や韓国、インドが入って機事が望ましい。

(スリン)ASEANは堅調だが、今後、世界と競争できるかという点が課題。これまでは外国からの投資や安い労働力、豊富な天然資源を成長の糧としてきたが世界のほかの地域も同様のモデルで成長している。ASEANは競争力を持つ必要があり、そのために、公平でグローバルな共同体を作り、経済統合を進めるが、これは効果的に国境を越える仕組みができるかどうかにかかっている。域内貿易の割合は25%にしか過ぎず、経済共同体を構成するには小さすぎる。各国で関税撤廃が進む一方、非関税障壁を維持したい国もある。発展度合いが異なるため、大きな経済圏の構築に気が進まない国も出てくる。解決に交渉が必要だ。製品やサービスの流通インフラも重要。本当の統一市場にするには投資が必要。雇用を生み成長に貢献する企業の育成も不可欠。

紛争解決について(談 マハティール元マレーシア首相)

米国はアジアで存在感を高めようとしているが、その民主主義をアジアが十分に受け入れられていない。なぜなら、米国が自ら関わらない東アジア共同体には反対し、自らが主導するAPECには賛成している。中国は世界2位の経済大国であるが米国に脅威を感じ、武力で備えているように見える。国際司法裁判所や直接交渉などを通じて、両国が勝者になれる解決策を目指すべきだ。現代の戦争は人的被害や、金銭負担が大きく戦争で勝っても必ずしも勝者になれない。中国とベトナムが南シナ海で衝突しているが、国民を煽り立ててはいけない。日本は世界で唯一、憲法で戦争を放棄した国だが、好戦的になろうとしているように見える。米国がこれまで脅威にさらされると戦争をほのめかすことで対応してきたように、日本も米国のこうした行動に引き込まれてしまうのではないか。日本は米国と友好関係を続けるべきだが、紛争解決については米国と同じ考えを持つのでよいのか。

アジアの安保について

(カーネギー国際平和財団アジアプログラム上級研究員ジェームズ・ショフ氏)中国は軍事費を増やすが米国には及ばない。ただし、ある国が軍事力を高めると近隣国も追随する。日本は軍事力の強化で日米韓、日米豪など様々な組合せで集団協力の下、北朝鮮に対峙すること、それから中国との対話機会を増やすことが必要だ。

(前韓国大統領外交安保首席秘書官 千英宇氏)安倍首相の歴史認識は日韓関係にマイナス、だが、日本が過去を受け入れるのが難しいのだということを韓国も理解する必要がある。日韓関係は国民の感情に左右されてはならず、竹島、排他的経済水域、海域の名称などは一括して交渉するべきで、もう無駄にする時間は残されていない。

(東大大学院教授 高原明生氏)日中両国の圧倒的多数が両国関係は重要という一方、感情的に許されないのは、それぞれの国で閉塞感が高まっているのが共通の理由。中国ではチャイニーズドリームがしぼんできている。また、中国に対して近隣国が心配するのは、増大する国力を何に使うのかという問題。中国の指導者は平和発展に用いるというが、言動にギャップがあると近隣国は受け止めている。それに気づかない大国症候群が表れているのではないか。

(清華大学現代国際関係研究院長 閻学通氏)アジアにおける軍事バランスはまだ10年ぐらい現在の状況が続く。10年で中国が米国に追いつくことはない。ただ、米国にできるのは現状維持だけだ。北朝鮮は核実験をするかもしれず、地域安保を維持できるかも分からない。日本は集団的自衛権の行使容認に取り組むが、これは地域を不安定化させる。協力が必要なのに中国はロシアと、日本は米国との二極化に向かう。地域の安定は今や米中次第で、日中などの緊張関係さえなければ世界の中心になれる潜在性はある。

やはり、一番目を引くのはリー・クアンユーの息子、リー・シェンロン首相による現状、将来分析である。そして、彼が示すシナリオのうち悪い方のもの、これが実現してしまう可能性が少なからずあるため、「明るい未来を得るために手をたずさえていこう」と呼びかけていることも見逃せない。

中国共産党による国内の他民族への弾圧は激しく、また、同一民族でも貧富の差や腐敗といった問題がある。中国は、その内憂を力や体制で封じ込めるために、外的な摩擦を余儀なくされている。

内憂のはけ口として仮想敵国は必須であり、米国や日本とはこれからも様々な摩擦や軋轢を繰り返すだろう。また、肥大化する国内市場の満足を満たすためには資源が必要であり、国外から買い付けられるだけの国力が必要である。従って、経済発展は必要不可欠であり、そのスパイラルの出口戦略などを見据えている様子はみじんも見られない。これをしても高原教授の大国症候群の定義に当てはまる現状であろう。

今後、5~10年かけて、アジアにはASEAN、中国、日本という3基軸が生まれよう。そのうち、すでに日本と中国は競争関係にある。そして、ASEANと中国は競争しなければならない運命にある。ASEANが中国に対峙できるようになるためには、ノウハウと人材が必須である。また、中所得国の罠を回避するリーダーシップも重要である。そういう意味で、ASEANには一足先に国を切り開き、今がある先進国とのつながりが重要である。日本はアジアを代表する先進国であり、豊かなアジアを実現するためにも、ASEANとの連携、連帯を深めるべきである。

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