2014/06/01 本日の日本経済新聞より 「地球回覧 米が恐れる宇宙の「真珠湾」 中国の衛星攻撃警戒」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞14版の12面(日曜に考える)にある「地球回覧 米が恐れる宇宙の「真珠湾」 中国の衛星攻撃警戒」です。





 「米国の守りはあまりに脆弱だ」。オバマ政権の国防長官などを歴任したレオン・パネッタ氏は最近、中国によるサイバー攻撃に繰り返し警告を発する。「この体たらくでは第2のパールハーバー(真珠湾)攻撃にあう」――。

 原子力、鉄鋼など企業機密を標的にしていた中国のサイバー攻撃は対象を広げつつある。米連邦議会の調査によると、航空管制や全地球測位システム(GPS)をつかさどる複数の米人工衛星の制御系統などが中国からとみられる波状攻撃にさらされた。

 手をこまぬけば偵察や早期警戒など軍の中枢機能が不意打ちの攻撃でマヒしかねない。米政府が中国人民解放軍のサイバー部隊による攻撃に関与したとして、中国人5人の刑事訴追に踏み切ったのも「次なる真珠湾」への危機感が広がっている証しだ。

 中国メディアによると習近平国家主席は4月、国防と宇宙政策の統合を進め宇宙空間を含む「攻守能力の増強」を急ぐよう空軍に指示した。米が警戒するのが、弾道ミサイルで敵国の偵察衛星などを破壊するASAT(衛星攻撃兵器)だ。

 中国が宇宙空間に多数の破片をまき散らしながら衛星の撃墜実験に成功したのは2007年1月。その後、精度を大幅に向上させているとみられ、米国防関係者は「米軍にとって最大級の脅威」と話す。レーダーに捕捉されにくいステルス性の超音速新型爆撃機の開発でも、中国が米に先んじたとの見解が専門家に広がっており、米議会も焦りの色が濃い。

 中国に翻弄される宇宙・軍事分野で追い打ちをかけるのが、ウクライナ問題で米と対立が深まるロシアだ。

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 当面の目標を「小惑星」に置くオバマ政権の宇宙探査構想は、国内はおろか国際的にも不人気で孤立気味。現に欧州宇宙機関(ESA)は月探査機着陸に成功した中国や、火星探査機打ち上げに成功したインドなど新興国勢へ秋波を送っている。

 英独仏や日本の米国離れを恐れる米航空宇宙局(

 これに対し、ロシアのロゴージン副首相は5月、米国の

 米国が警戒するのは宇宙分野での中ロ連携の強化だ。実際、中ロ両国はジュネーブ軍縮会議などを舞台に、宇宙の軍事利用を巡る独自の国際ルール作りでも巧妙な連携を見せつけている。

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 米も宇宙・軍事分野でオーストラリア、カナダ、英などのつなぎ留めに必死で、日本とも関係強化を急ぐ。ただ日米は「肝心のミサイル防衛協力は手つかず」(日米関係筋)で画竜点睛(がりょうてんせい)を欠くのが実情。米国偏重を嫌う英国以外の欧州勢も、両陣営のバランスに目配りせざるを得ない。中ロ台頭で米の求心力低下は避けがたく、宇宙・軍事政策の混迷が一段と深まる恐れがある。

 1950~60年代は米国と旧ソ連が衛星破壊実験など激しい宇宙開発競争を展開。東西陣営に分かれミサイル防衛などを巡り不毛な緊張が続いた。中国の台頭とウクライナ危機という地政学上の力学変化で、宇宙空間には新たな冷戦の構図が生まれつつあるようにも見える。宇宙の平和利用に向けた国際協調は、米と中ロの果てしない相互不信の波にのみ込まれかねない。(ワシントン=矢沢俊樹)

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