2014/08/13 本日の日本経済新聞より「エルドアン大統領のトルコ(上)高成長の裏にひずみ 「縁故企業」に偏る富」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際1面にある「エルドアン大統領のトルコ(上)高成長の裏にひずみ 「縁故企業」に偏る富」です。





 トルコ次期大統領にエルドアン首相の就任が固まった。強権的との批判がつきまとう同氏の政権運営に国内外の注目が集まる。ひずみを抱えながら高成長を続ける経済と、地域大国としての盟主の座がかすむ外交の行方を占う。

ボスポラス海峡では3本目の大型つり橋の建設工事が進んでいる(イスタンブール)

 中央銀行は利下げして景気を浮揚させるべきだ――。エルドアン氏は5月以降、1月に大幅利上げしたトルコ中銀に露骨な圧力をかけ続けている。中銀は3カ月で3回にわたって合計1.75%利下げした。インフレ率が物価目標を上回るなかでの利下げに首をひねる市場関係者は多い。

 中銀への利下げ圧力には、住宅販売の低迷に直面する取り巻きの建設関連企業を助ける狙いもあったとされる。

 トルコでは「全県に空港」「全国に高速道路網」との掛け声のもとにインフラ整備が続く。イスタンブール―首都アンカラ間の約530キロメートルの高速鉄道が7月末、大統領選直前に全線開通した。

巨額の経常赤字

 インフラ整備計画は高成長の原動力となり、政権に近い建設会社に大きな利益をもたらした。

 イスタンブールでは滑走路6本の世界最大規模の新空港の建設が進む。トルコの欧州とアジアの部分を隔てるボスポラス海峡では、船舶の混雑を解消する巨大運河の建設構想が持ち上がる。「需要よりも建設自体が目的化している」との懸念が高まる。

 与党・公正発展党(AKP)が2002年に政権獲得後、首相府の集合住宅局は全国で中・低所得者向けに約63万戸を建設した。主要な受注先となる「親エルドアン」の建設会社や財閥は、傘下のメディアで「エルドアン礼賛」を繰り返す。イスタンブールの新空港建設を担うカルヨンは大手紙サバハを13年に買収し、政権寄りの報道を続ける。

 このように内需主導で景気が拡大しても輸出産業の振興は途上で、巨額の経常赤字を解消する道筋は見えてこない。米モルガン・スタンレーはトルコを南アフリカ、インドなどの4カ国と共に危機にもろい新興国「F5」に挙げる。

 10年間でトルコの1人当たり国内総生産(GDP)は約3倍になったが、伸びたのは03~08年。近年は1万ドル前後で横ばいを続ける。成長が停滞する「中進国のわな」に陥りかねないとの声もあがっている。

遅れる産業育成

 大型インフラ整備計画の恩恵を受ける建設業はGDPの6%弱の価値しか生まない。関連産業も含めると労働人口の15%が従事する労働集約型の産業だ。

 トルコ中銀のギュベン・サック元審議委員は「付加価値の高い産業の育成を急ぐ必要がある」と指摘する。不動産の税制改革や理系人材を育成する教育改革が急務だと訴える。

 エルドアン氏は「敵」をつくり出し、支持率を高める政治手法を経済政策でも使うようになった。昨夏に反政府デモが発生した際、デモ隊が最大財閥コチ系のホテルに逃げ込むと同氏はコチを敵視。コチ系企業から予定していた軍艦の調達計画を白紙に戻した。

 政権と対立するイスラム教団体「ギュレン運動」に近い経済団体TUSKONの加盟企業には、政府関係者から脱退するよう圧力がかけられているという。TUSKONのルザヌル・メラル会長は「ビジネスでも政権と同じ価値観を共有しないと敵にされる」と批判する。

 経済評論家のムスタファ・ソンメズ氏は「企業が政権を恐れて縁故主義がまん延すれば、投資に悪影響が及ぶ」と指摘する。エルドアン氏は「建国100周年の23年までに世界経済のトップ10入り」を目指すが、自らの強権的な政治手法がその芽をつみかねない。

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