2014/09/02 本日の日本経済新聞より「(無人けいざい)(4)勝率99.9%? 自動取引、強みと危うさ」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「(無人けいざい)(4)勝率99.9%? 自動取引、強みと危うさ」です。





 個人投資家の市川武史氏は皇居ランナーだ。7月下旬のある日も、夜から皇居へ繰り出した。その後は友人と合流。軽く酒を酌み交わし、家に戻って床に就いた。翌朝、スマートフォンのメールを確認すると、数十万円の利益が出ていた。

深夜も無人で日経225先物取引の注文を行う(東京都世田谷区)

 すべては市川氏が開発した日経225先物を自動売買するプログラムのおかげだ。市川氏がマラソンで汗を流す間も、事務所に置かれた4台のパソコンは暗闇の中で静かにうなり、取引を実行していた。さながら無人マネーだ。

判断に感情なし

 長期低迷から抜け出した金融市場。個人投資家の間で投資判断を人に頼らない自動取引が広がっている。岡三オンライン証券では、株式の自動売買システム「岡三RSS」の利用者が3年で6割増えた。「もう一度上がるはずといった感情に左右されず損切りができるのが強み」(同社)という。

 バラ色の世界とは限らない。通貨を売り買いする外国為替証拠金(FX)取引大手のインヴァスト証券では9000種類の自動取引プログラムを用意する。「相場の流れに応じて、プログラムを入れ替えることが必要」(鶴見豪取締役)なためだ。無人マネーは、金融市場の進化や投資家心理の急変に弱い。プログラムの組み合わせや入れ替えの判断を誤れば損失が膨らむ。

競争の公平性は

 自動取引の進化形ともいえる超高速取引(HFT)。証券取引所のコンピューターの隣に大型サーバーを置き1ミリ(ミリは千分の1)秒単位で先回りして発注するが、公平な競争をゆがめるとの見方がくすぶる。

 「勝率は99.9%」。HFT大手の米金融会社が3月に開示した資料がウォール街で話題をさらった。この会社が過去5年で取引をした1238日のうち、損失が出たのは1日だけという驚異的な実績だ。

 にわかに信じがたい取引の裏側には、ニューヨーク証券取引所、NASDAQなど全米の取引所での決済時間のズレを利用して一般投資家より先回りして取引を自動発注する手法があった。

 金融のプロだけが可能な市場の死角をつく取引。シュナイダーマン米ニューヨーク州司法長官は、一般の投資家に比べて優位な立場で取引している疑いで株式などの超高速取引を手掛ける業者に召喚状を送った。

 国内でも自動取引の進化の影響が広がる。東京証券取引所がさばく発注は1日約2000万件。このうち6割を先回り注文が占める。

 「画面を見ても市場の実態がわからなくなった」。西脇証券(兵庫県西脇市)の徳岡洋一社長はため息をつく。大手の機関投資家を中心に自動取引が進んで、買い注文や売り注文の価格が激しく動く。「50年の取引のキャリアが役に立たない」(徳岡社長)。西脇証券は1日、単独の生き残りを断念し中堅のいちよし証券の傘下に入った。

 危うさをはらみながら増殖する無人マネー。うまく使いこなせば強い味方になるが、使い方を誤れば損失は膨らみ社会の批判も招く。背を向ければ世界の進歩から取り残されてしまうことも言うまでもない。

(おわり)

 杉原淳一、山崎純、渡辺淳、飛田臨太郎、杉本耕太郎、平野麻理子、谷翔太朗、宮崎真が担当しました。

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