2014/09/19 本日の日本経済新聞より 「日の丸戦闘機 復活の野心 政府、来年度から本格検討 米の壁「まずエンジン」で挑む」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞13版の2面(総合1)にある「日の丸戦闘機 復活の野心 政府、来年度から本格検討 米の壁「まずエンジン」で挑む」です。

 戦後初の純国産戦闘機の開発に政府が本格的に乗り出す。三菱重工業やIHIなど防衛産業大手と組み、2015年度からエンジン本体の試作やステルス機能の性能評価を始める。戦後、日米間で政治問題になってきた「日の丸戦闘機」復活の日は来るのか。

防衛省技術研究本部が開発した「先進技術実証機」=同省提供

 来年1月、試験用エンジンを載せた「先進技術実証機」が試験飛行する。防衛省が三菱重工と協力して開発したもので試作する戦闘機エンジンのモデルになる。別々に研究してきた高圧タービンや燃料装置などの基幹部品を組み合わせ、軽量で推進力の高いエンジンに仕上げるのが目標だ。

 エンジンに携わるIHIはタービン部品に航空機エンジン業界で初となるセラミック複合材の採用を狙う。従来のニッケル合金より軽く1400度の熱さに耐えられる。次世代旅客機エンジンにも導入する計画だ。

開発断念を迫る

 純国産戦闘機の開発で、防衛省が「まずエンジン」にこだわるのには理由がある。かつて目指した純国産戦闘機の開発で、エンジンを理由に米国に待ったをかけられた苦い記憶があるからだ。

 「日本が独自に開発するには技術力が足りない。米国製のF16戦闘機をもとに日米で共同開発すべきだ」。日本がF1戦闘機の後継に純国産機を検討していた1987年、米空軍の関係者は当時の防衛庁の担当者に「開発断念」を迫った。

 開発しようとしていたのは対ソ連(現ロシア)を念頭に、海面すれすれに飛んでレーダーを避け、敵の艦船にミサイルを撃ち込む戦闘機。三菱重工など日本の防衛産業は最先端のレーダーや機体、ミサイルを開発・生産する力を備えていた。

 唯一、自前で造れなかったのがエンジンだ。エンジンは米国製の調達を考えており、米側の言葉は「独自開発をあきらめないならエンジンは提供しない」との意思表示だった。結局、純国産はあきらめ、日米共同開発の形に落ち着く。

 「米国は純粋に技術力の低さから純国産機はあきらめろと言っていたと思っていた。しかし、後になって日本の技術を懸念していたのだと気づいた」。日米協議に携わった元防衛省技術研究本部長の安江正宏・川崎重工業顧問はこう振り返る。

 当時は中曽根康弘首相とレーガン米大統領の日米蜜月の時代。にもかかわらず、同盟国の日本に純国産機の開発を認めなかったのは、先端技術の固まりである戦闘機で覇権を握り続けることへのこだわりがある。日米同盟が日本の軍事大国化を防ぐとした「瓶のふた」論もちらついた。

 2000年代のF4戦闘機の後継機選びでも米国の意向が重くのしかかった。日本はステルス性能が極めて高い米国製F22戦闘機の供与を求めたが、最先端技術の流出を危惧した米国は拒否した。日本は性能面で劣るF35戦闘機への変更を余儀なくされた。

 度重なる米国の圧力は防衛関係者に純国産戦闘機への思いを募らせる。斉藤治和航空幕僚長は「国産なら何か起きたとき外国製より素早く対応でき、円滑に運用できる」と期待を隠さない。

技術を民間転用

 航空自衛隊は純国産機を念頭に置くF2戦闘機の後継機について、要求性能を検討するチームをこのほど立ち上げた。ステルス性能などで最先端のF22戦闘機には及ばないものの、空自が導入を始めたF35戦闘機を上回る性能をめざす。

 ステルス性能は相手が発する電波を吸収したりして探知されにくくするもので、機体の形状や塗料の技術が重要になる。国産機で技術力を磨けば装備品の輸出や共同開発でも日本の防衛産業の技術力をアピールできる。

 技術力は民間転用でビジネスにもつながる。日米が共同開発したF2戦闘機からは、レーダーが自動車の衝突防止装置や高速道路の自動料金収受システムに、機体の炭素繊維複合材はボーイング787に応用された。

 「米国の壁」のほかにもハードルはある。一つは自前で開発すれば1兆円を超えるといわれる巨額の開発費だ。軍事戦略としても無人機の広がりで「もはや有人戦闘機を重視する時代ではない」との声がある。

 「単独開発は現実的ではない。日本が主導権を握る形の国際共同開発をめざすべきだ」。防衛産業に詳しいグローバルインサイトの長瀬正人社長はこう話す。防衛関係者の野心はどんな形で実を結ぶのだろうか。

(田島如生、上阪欣史)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です