2014/09/20 本日の日本経済新聞より 「強いドルにマネー集中 実効レートが4年ぶり高値 世界経済、米頼み」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞14版の3面(総合2)にある「強いドルにマネー集中 実効レートが4年ぶり高値 世界経済、米頼み」です。





 円相場はこの1カ月、対ドルで7円近く急落した。米連邦準備理事会(FRB)の利上げが意識され、世界の投資マネーが「強いドル」を目当てに米国に集まっているためだ。潤沢なマネーは米市場の安定をもたらし、緩和策の出口に向けた視界も良好にみえる。だが「カネ余り」は、米国を除く世界経済に停滞感が根強いことの裏返しでもある。

 ドルは4年ぶりの高値水準にある。幅広い通貨に対するドルの強さを示す名目実効為替レート(日経通貨インデックス)は18日、2010年6月以来の高値を記録した。ここ1カ月の上昇率は1.9%で主要通貨で最大だ。対照的に円は4.5%下落し、下げが最もきつかった。

 利上げを視野に入れ始めた米国と、消費増税後の景気がもたつき追加緩和も意識される日本。そしてデフレの危機を前に、大胆な金融緩和の検討を迫られるユーロ圏。ドル、円、ユーロの3極通貨で、ドルの「独り勝ち」が鮮明だ。

「良いとこ取り」

 月ごとの振れはあるものの「米国に資金が流入する流れは続いている」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)。利上げを控え、安全資産の代表である米国債に運用利回りの向上期待が高まっているためだ。

 欧州や中東のマネーが、マイナス金利が定着したユーロ圏から米国に移っている。日本の機関投資家も日米金利差の拡大を意識し、米国債投資を増やしている。今年前半には、中国政府の外貨準備の運用とみられる米国債購入も目立った。

 こうした資金流入は米国債相場を下支えする。結果的に利上げ観測を背景にした米長期金利の上昇もゆっくりになり、米市場の安定に役立つ。このことが米株価を押し上げている面もある。

 カネ余りを象徴したのが、17日まで開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)後の市場の反応だ。公表文では緩和の終了後も「相当な期間」にわたり事実上のゼロ金利を続けるとの表現を据え置き、米株式市場には「緩和はまだ続く」との安心感が広がった。

 外国為替市場は会合参加者の金利見通しの上方修正から「利上げが近づいた」と読み、ドル買いが膨らんだ。各市場が材料を都合よく解釈する「良いとこ取り」。こうした米国発の楽観ムードが米国外にも波及し、世界的な株価の堅調をもたらしているともいえる。

 今回は新興国市場も安定している。昨年は米緩和の出口を巡る思惑が強まった場面で新興国の通貨や株価が大きく下げた。足元でも新興国通貨の多くは対ドルで軟調だが、資本流出が懸念されるほどではない。FRBのイエレン議長は米景気指標をにらみつつ、じっくりと金融政策の正常化に取り組める。一見、理想的な環境にも思える。

原油・金は下落

 良い話ばかりではない。今回のドルへの資金集中は、世界経済が米国頼みであることをも示している。日欧だけでなく新興国経済も、もたつきが目立つ。結局、世界の大半の地域で実体経済が停滞ぎみになっているからこそ、カネ余りが強まっている面も否めない。

 国際商品市場では原油や金の下落傾向が続く。ドル高によってドル建ての相場に割高感が強まったためだが、原油については欧州や中国経済の先行き不透明感から、需要鈍化も意識されている。

 日本でも株価と実体経済のズレが目立つ。背景には収益が拡大するグローバル企業と、停滞する内需型や下請け型の中小企業という明暗がある。収益を上げたグローバル企業が、国内での設備投資や賃上げをためらっていることを意味する。

 頼みの米国はどうか。「量的緩和から抜け出した後の米国経済が本当に大丈夫か、答えは出ていない」(国際通貨研究所の佐久間浩司経済調査部長)。足元で景気が回復していても、米国の「長期停滞説」への懸念が消えたわけではない。

 金融市場が実体経済に先行すると、資産バブルの危険も高まる。国際通貨基金(IMF)は17日の報告書で「投資家が運用リスクを過小評価しており、金融正常化に際して注意が必要」と警告した。市場安定が指し示す陰の部分にも、目配りは必要だろう。

(編集委員 大塚節雄)

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