2014/09/28 本日の日本経済新聞より 「日曜に考える 中国シェール 夢さめて 高コストの現実、目標下げ」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞13版の15面(日曜に考える)にある「中国シェール 夢さめて 高コストの現実、目標下げ」です。





 中国は、埋蔵量だけなら米国の約2倍とされる世界一の「シェールガス大国」だ。実際には内陸部の重慶などで国有企業による生産がようやく始まったばかり。しかも最近、中国政府は2020年の産出目標をいきなり半減した。中国はシェール開発に抱いたバラ色の夢から目覚め、厳しい現実と向き合いつつある。

国有企業によるシェールガス開発が進む重慶郊外の山村

採掘基地を示す標識が掲げられている

 重慶市の中心部から東へ車で約3時間。●(さんずいに倍のつくり)陵区では国有企業の中国石油化工集団(シノペック)がシェール開発を手掛けている。同区によると、区内の焦石鎮だけですでに29のガス井が掘られ、うち16で生産が始まった(今年2月時点)というが、詳細はベールに包まれている。

 「あんた、何を探しているんだ?」。山あいの村でガス井を探していると、1人の男性が突然、きれいな普通語(中国語の標準語)で話しかけてきた。なまりの強い「重慶語」が普通の重慶郊外で、普通語を耳にすることはめったにない。「中国石油化工の関係者か?」と問い返すと男性は答えず、「早くここから立ち去れ」と繰り返した。

 ようやくたどり着いたガス井では、井戸を掘るために高さ数十メートルのやぐらが組まれ、朱色の作業着を着たシノペックの従業員が忙しげに立ち働いていた。山の斜面にトウモロコシ畑が広がる静かな山村に、機械音が響き渡る。

 米国を中心とするシェール開発は、世界のエネルギー供給構造や、貿易、産業のあり方に変化を迫るという意味で「シェール革命」と呼ばれる。中国も資源の安定確保という自国発の「革命」を夢見てシェール開発に着手したが、現実は厳しさを増している。

 8月、中国のシェール熱に冷や水を浴びせるニュースが流れた。中国国家エネルギー局の呉新雄局長が20年の中国のシェールガスの生産量について、300億立方メートルとの見通しを示したとの内容だ。同局は12年、20年の生産量を600億~1千億立方メートルに引き上げる意欲的な目標を掲げた。ほんの2年で、目標を半分以下に引き下げた格好だ。

 最大の壁はコストだ。中国でのシェールガスの採掘コストは米国の3~4倍とされる。有力な埋蔵地は山がちな地域に集中し、地形は複雑だ。さらに、中国では焦石鎮のような山間部にも農地や民家が点在し、米国のように開発規模を一気に広げることが難しい。ガスの層も米国に比べ深く、生産コストがかさむ。

 慢性的な水不足に悩む中国にとって、シェールガスを取り出す際に大量の水を使うことも頭痛の種だ。シェール先進国である米国の技術を持ち込んでも、地質や地形が異なるため、すぐにすべての課題が解決するわけでもない。

 もっとも、こうした問題点は、2年前に夢のような生産目標を掲げたときからすでに分かっていたことだ。中国のエネルギー事情に詳しい石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の竹原美佳氏は「実際に生産を始めたことで、より現実的で、地に足の着いた目標に下方修正したのだろう」と分析する。

 国際エネルギー機関(IEA)によると、中国の天然ガス消費量は今後5年で倍増し、世界最大になる。13年に2億立方メートルだった国内のシェール生産を300億立方メートルまで増やすことができたとしても、賄えるのは消費量の10分の1に満たない。

 大気汚染を招きやすい石炭や、中東など海外に6割を頼る石油に代えて、天然ガスの確保を急ぐ中国。その輸入量を抑える切り札の一つが国内のシェール開発だが、重慶の現場から「革命」の足音はまだ聞こえてこない。

(重慶=大越匡洋)

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