2014/12/01 本日の日本経済新聞より「グローバルオピニオン 「成長」こそ日本に必要 米シカゴ大教授 アニル・カシャップ氏」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「「成長」こそ日本に必要 米シカゴ大教授 アニル・カシャップ氏」です。





 安倍晋三政権は、消費税率の再引き上げの先送りを決めた。私は引き上げの方式がそもそも適切でなかったと考える。5年にわたり毎年1%ずつ上げるなどの手があったはずだ。今回のこれだけの騒ぎも、2つの大きな増税のこぶをつくった結果だ。

 将来、日本は10%どころかそれ以上の消費税率が必要なのは間違いない。ただ、これは中期的な課題で、来年、税率を10%にする必要は必ずしもない。だから最終的に必要な水準まで税率を上げるなら多少の延期に問題はない。景気もやや弱っているので配慮するのは理解できる。

 増税先送りでアベノミクスの第3の矢である成長戦略をより磨く余裕が生じれば、先送りはなおのこと有意義だ。なぜなら、私は第3の矢が実は放たれておらず、今後も放たれないのではと懸念している。これこそ日本が直面する最大の問題だと考えている。

 安倍首相は第3の矢に含めた政策のうち本当に重要な10項目を選び注力すべきだ。例えば農業政策の転換は大きな対立を生む割に成長への寄与は小さい。むしろ女性の活躍や移民受け入れ、企業の活動や投資を促す制度の見直しは成長に資する。規制の壁を取り除き、雇用ルールを刷新し、貿易協定にも力を入れたい。日本経済の潜在成長力を引き上げるという目的に沿って優先順位を付けたらいい。

 日本で財政危機が起きるかどうかは、経済の成長力がカギになる。増税だけでは危機は回避できない。経済を成長させ、少しずつ税収を増やすしかない。今のところ安倍首相は、中長期の成長見通しを引き上げる有効な手立てを十分に講じたとは言いがたい。

 構造改革の果実はすぐ出ないので、目先、消費者の心理や雇用、賃金の下支えに財政政策を使うのは分かる。だが景気対策をずっと続けられない以上、財政による中長期の成長への寄与は乏しい。

 金融政策も、目先は消費などを刺激して多少は経済を支えるし、物価の押し上げにも役立つが、万能ではない。黒田東彦・日銀総裁による果敢な金融緩和は称賛に値するが、20年先の日本経済の見通しを根本的に変えはしない。デフレは日本経済の多くの問題が合わさって引き起こした症状であり、金融政策で対処しても効果は長続きしない。

 日本に必要なのは中期の成長見通しを大きく変える対策だ。過去10年以上も成長を妨げた要因を変えてゆく必要があり、それは政府の仕事だ。

 債務危機は間近でないにしても今のペースで公的債務の国内総生産(GDP)比率が上昇し続ければ不可避だ。安倍首相が直面する課題は10年前に小泉純一郎首相が口にしていたものと変わらない。何をすべきかは明らか。問題はその意思があるかだ。

(談)

Anil Kashyap 米マサチューセッツ工科大(MIT)博士。専門はマクロ経済や金融政策。日本経済に関する共著書もある。54歳。

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