2014/12/02 本日の日本経済新聞より「大機小機 通貨マフィア黒田氏の政治感覚」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「大機小機 通貨マフィア黒田氏の政治感覚」です。





 イラクのクウェート侵攻に端を発した1991年の湾岸戦争に際してのことだ。米ブッシュ政権のチェイニー国防長官は、開戦という極秘情報をグリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長にはこっそり伝えた。

 金融市場が混乱しないようにするための配慮だった。87年のブラックマンデーを果敢な金融緩和で切り抜けた同議長は既にカリスマ的存在になりつつあった。

 常にではないが、中央銀行トップは時に最高権力者と通じる政治的動物になる。黒田東彦日銀総裁はどうだろう。

 10月末の追加緩和は消費増税を先送りしても日銀が国債を買い支えるとのメッセージとなり、結果的に安倍晋三首相が解散に踏み切る素地をつくった。増税先送りではあるが2017年4月には上げるとの約束を取り付けたと考えることもできる。財務省で主税畑も長い黒田総裁の政治感覚がにじみ出たように映る。

 黒田氏のもう一つの特徴は、財務官時代の電撃的な為替介入を思い起こさせることだ。兜町の古株は「10月の追加緩和で短期筋はみんな踏み上げられちゃった」と言う。「踏み上げ」とは先物や信用で売っていた投資家が買い材料に慌て、損失覚悟で買い戻し、相場が上昇することを指す。介入に驚いた外為投資家が慌てて円売り・ドル買いに走るのに似ている。

 円安株高を演出する黒田氏の手法は「通貨マフィア流」なのだ。批判をよそに「円安はトータルで見てプラス」と言い切ることができるのも、財務官の経験、人脈、信念があるからだろう。FRBは「いち抜けた」の感があるが、欧州中央銀行(ECB)などはマネーの大量供給を伴う「通貨安競争」の渦中にあり、日銀も逃れられない。

 一方で98年施行の改正日銀法で為替介入は政府の権限と位置づけられた。建前上は為替を目標にできない。そんな日銀の「円安誘導」に政府が寛容なのは黒田氏の存在があってこそだ。日銀プロパーの総裁なら政府は横やりを入れるだろう。

 一時的に神格化された人も歴史が評価を逆転させることはある。グリーンスパン氏もリーマン・ショックを生んだ住宅バブルを放置したとして後に批判された。今はまだ黒田氏を称賛する声が優勢だが、当初のような「手放し」の空気が少しずつ薄れているように感じられる。

(三剣)

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