2014/12/03 本日の日本経済新聞より「アメリカどこへ 分断を超えて(1)人種の溝 根深く 台頭する移民新世代」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際2面にある「アメリカどこへ 分断を超えて(1)人種の溝 根深く 台頭する移民新世代」です。





 11月25日夜、米ミズーリ州ファーガソン市の街頭で住民らがつくる自警団が集まった。入り口のガラスを割られた商店の前でにらみを利かす黒人青年、アンドレ・トーマスさんは「これは略奪だ。地元を守るのは我々の義務だ」と語った。

11月28日、米ミズーリ州の商業施設で抗議の意思を示す人々=AP

抗議示す人続出

 丸腰の黒人青年が白人警官に射殺された事件で州の大陪審が起訴の見送りを決め、11月24日には一部の群衆が放火や店舗の襲撃など暴徒化した。射殺されたマイケル・ブラウンさんの家族は不起訴が決まった直後、「抗議はどうか平和的に。暴力に対して暴力で応えるのは適切ではない」と訴えた。28日には州内のショッピングセンターで床に横たわり、抗議の意思を示す人が続出した。

 切迫した言動に、行政が重い腰を上げ始めた。30日、ファーガソンのノールズ市長は「警察と地域のギャップを埋める」とし、市警が黒人の採用を増やす方針を示した。ファーガソンは人口の約7割が黒人なのに警官の9割以上を白人が占める。オバマ大統領も1日、緊急会議を開き、全米の警官にカメラを装着させて活動の透明性を高めることを決めた。

 人種と民族が複雑に入り組む米国社会が分断を深めている。移民制度改革を打ち出したオバマ政権を野党・共和党が訴追したことはその象徴だ。しかし多様さを抜きに、米国の未来は見えない。

 人の思考や感情を読みとる脳波測定器をつくるベンチャー企業、エモーティブの女性創業者、タン・レイさん(37)。4歳のとき、ベトナム戦争後の混乱から逃れ、小さなボートに乗り命懸けで南シナ海を渡った。「海賊に捕まったら私と妹、母と祖母の順番で毒薬を飲むことにしていた」

 その後、難民としてオーストラリアに移住し、母は農場や自動車工場で働いて一家を養った。大学卒業後に訪れた米国にほれ込むと、サンフランシスコでビジネスの基盤を築いた。昨年、スマホで脳波を確認できる脳波測定器の開発資金をネットで募り、2億円弱もの資金を手にできた。

 米調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、米トップ企業25社のうち15社は移民やその子供が創業した。アップルの故スティーブ・ジョブズ氏はシリア系移民の2世、グーグルのセルゲイ・ブリン氏はロシア移民だ。移民の新世代を引き込む経路を太く強くすれば、第2、第3のジョブズを生む素地になる。

多様性、成長の糧

 優秀な技術者を求めるシリコンバレーは移民制度改革を掲げるオバマ政権に、短期就労・専門職ビザ「H1B」の発給拡大を迫る。議会予算局は移民改革がさらに進めば米国の成長を押し上げ、実質国内総生産(GDP)は2023年に年率3.3%増、33年には5.4%伸びるとみる。

 「多様性は米国の成長の糧になっている」とブルッキングス研究所の人口統計学者、ウィリアム・フレイ氏は指摘する。一方で米国人の4分の1を占める移民と子供をさらに増やす道を、治安悪化を懸念する共和党などの保守層が閉ざそうと画策している現実もある。6年前に融和を掲げて登場した黒人初の大統領、オバマ氏はまだ答えを探している。

 人種や民族、性別や貧富など様々な面で米国は分裂と融合を繰り返す。社会の分断を乗り越えようとする人々を追う。

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