2014/12/04 本日の日本経済新聞より「アメリカどこへ 分断を超えて(2)貧困の連鎖を断つ 先端技術が資金つなぐ」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際1面にある「アメリカどこへ 分断を超えて(2)貧困の連鎖を断つ 先端技術が資金つなぐ」です。





 「顕微鏡で生徒が科学者の道を歩むきっかけにしたい(130万円)」

「ドナーズチューズ」は貧しい小学校の貴重な副収入源だ(ジョーンズさんの教室)

 「レーザーカッターでモノ作りを体験し、問題解決能力を身につけさせたい(200万円)」

時間帯狙い撃ち

 貧困地域の教師と、お金を提供するパトロンをつなぐ「ドナーズチューズ」。そのホームページには、教師の提案と希望金額がずらりと並ぶ。趣旨に賛同した人がお金を出すしくみで、これまでに全米の6万校の教師21万人が総額3億ドル(約350億円)近くを受け取った。今や貧しい学校にとって貴重な副収入源になりつつある。

 ドナーズの心臓部は、米カリフォルニア州サンフランシスコで起業したIT(情報技術)企業、セールスフォース・ドットコムの技術だ。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を駆使し、効果の高い時間帯や状況でパトロンに訴えられるようにした。そんな先端的なシステムが「集金力」の秘密だ。

 カリフォルニア州のシリコンバレーに接する東パロアルトは人口あたりの殺人率が全米最悪だった貧困街だ。地元のブレントウッド小学校で約30人の小学4年生を教えるティム・ジョーンズさんは、この7年間にドナーズで1千万円を集めて教材を買いそろえた。

 百科事典、図鑑、書籍などが教室の棚を埋め、タブレットとノートパソコンは生徒3人に1台ある。印刷機や映写機のほか、30万円はする3Dプリンターも取り合いにならないよう4台買った。「おかげで生徒の出席率は9割以上に上がったよ。ネットの力があればこそだね」とジョーンズさん。触発された同僚もドナーズを始めた。

 米公立校の主な財源は学区の住民が払う固定資産税だ。貧困街の不動産は価値が上がりにくく財源はなかなか増えない。親の貧しさが子供の教育の低さに跳ね返る貧困の連鎖をネットと技術の力で断つ実践が進む。

 「成功の道が限られるスポーツや音楽より、ITこそが貧しさから抜け出す近道なんだ」。人気ヒップホップグループ、ブラック・アイド・ピーズのリーダーで、起業家でもあるウィル・アイ・アムさんは訴える。1億円以上の私財を投じて、出身地のロサンゼルス近郊で貧困街の高校生にプログラミングを教え、進学を支援している。

サービス改善も

 アップル、マイクロソフトなどの巨大ハイテク企業も、パソコンの使い方やプログラミングを貧困街の学校で教える活動に取り組む。ITを武器にするのは人助けにとどまらない。「慈善の効果を測り、自社のサービス改善に利用するのが次世代のモデル」。スタンフォード大で教えるアリラガ・アンドリーセンさんは、シリコンバレー流の新手法と解説する。

 家の個人間の貸借をつなぐベンチャー、エアB&Bは災害時の被災者らに仮の住まいを速やかに提供できるようにした。新商品のアイデアを実現する資金を広く募るサービスのインディーゴーゴーは慈善事業の構想にもサービスを開放した。

 米ブルッキングス研究所によると、サンフランシスコは金融危機直前の2007年から12年までの5年間に、全米の主要都市で貧富の格差が最も広がった。貧困の克服や社会の再生に向けた多様な取り組みが、格差を象徴する街と周辺で着実に根付き始めている。

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