2014/12/08 本日の日本経済新聞より「グローバルオピニオン 格差拡大に歯止めを 独アリアンツ チーフ・エコノミック・アドバイザー モハメド・エラリアン氏」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「格差拡大に歯止めを 独アリアンツ チーフ・エコノミック・アドバイザー モハメド・エラリアン氏」です。





 10月にワシントンで開かれた国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会では、意見の不一致が多々見られた。中でも驚いたのは、経済的な不平等を巡る議論で、出席者の間にかなりの温度差があったこと、この問題に政府として取り組む行動計画をどの国も持っていないことである。

 国家間の格差は縮んでいるが、国内格差は先進国でも発展途上国でも拡大している。この傾向を助長してきたのは技術の進歩の質的変容、投資における「勝者総取り」傾向、富裕層に有利な政治システムなどであり、これに景気循環要因が拍車をかけている。

 先進国では、この問題は政治の二極化現象と深い関係がある。政治による包括的な対応ができないため、中央銀行に過剰な政策的負担がかかっているのだ。しかし中銀は、国としての課題に効果的に取り組む手段には乏しい。

 本来なら財政政策が再分配などを通じて金融政策を支えるべきだが、現在は政治が膠着して適切な財政政策を講じることができない。中銀は人為的なテコ入れを強いられ、景気を刺激し雇用を創出するために、事実上のゼロ金利と量的緩和など非伝統的な金融緩和策に頼っている。

 こうしたアプローチは富裕層に間接的に有利に働く。金融資産の多くは富裕層に集中しているためだ。一方、企業は次第に過激な節税対策に走るようになっている。

 この結果、多くの国が不平等の三重苦、すなわち所得、資産、機会の不平等に直面している。放置すれば相乗作用で重大な結果を招く。不平等は経済の活力、投資、雇用、繁栄の重荷となり始めた。

 富裕層は所得や資産のごく一部しか支出に回さないため、不平等が拡大すると、総需要の縮小に苦しむ経済の回復を遅らせる。甚だしい不平等は、生産性の向上に必要な構造改革にも、過剰債務の削減にも妨げとなる。

 不平等の拡大を食い止めるためにやれることは多い。たとえば米国では、強固な政治的意志さえあれば、遺産相続の抜け道を塞ぐことも、富裕層に不当に有利な所得税や法人税の是正もできるだろう。ヘッジファンドなどの「成功報酬」に優遇税率を適用する時代遅れの慣習は廃止すべきだし、住宅購入への課税や助成金にも見直しの余地がある。さらに、最低賃金はもっと引き上げるべきだ。

 より効果を高めるには、構造改革の推進、総需要の拡大、過剰債務の縮小といった明確な目標を掲げた包括的なマクロ経済政策が必要になる。こうしたアプローチにより、中銀に現在かかっている重い政策的負担を軽減できよう。いまこそ不平等に対する世界の関心を喚起し、協調行動に移さなければならない。

((C)Project Syndicate)

Mohamed A. El-Erian 英オックスフォード大経済学博士。米債券運用大手ピムコの最高経営責任者を経て現職。著書「市場の変相」で金融危機を予測。56歳。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です